見出し画像

日置桜で寿ぐ正月 #お酒のひととき

お酒には物語があり、盃には思い出がある。音楽が記憶を呼び起こすように、酌み交わしたお酒にも確かな時間が宿っている。

ぼくはお酒と言葉を愛している。だからnoteを始めたとき「日本酒を紡ぐ」というマガジンをつくった。でもなかなか書くことができなかった。大好きな日本酒を綴った言葉が届かなかったり、届いたことでむしろその人を日本酒から遠ざけてしまわないか怖かったから。

でもこの夏、大好きな日本酒について紡いだ言葉が大切な人に届く喜びを教えてもらった。お酒は人と人を繋いでくれると知った。それは、どんな美味しい日本酒よりも忘れられない味わいだった。自分の言葉だからこそ届くものもある。かけがえのない経験だった。

そしたら、また嬉しいことがあった。

仕事終わりにTwitterを開いたらこんなひとりごとが。ぼくが勝手に日本酒の盟友と思っているサラさんのお願いとあらば応えないわけにいかない。自分の記憶にあるお酒データベースに全力で検索をかけた。

スッキリ、がっつり、おせちとの相性。加えて、サラさんが別の方に向けて書かれた返信にあった「いまは地元酒を買うことが多くて」のひとこと。

岡山のお隣、鳥取の銘酒である日置桜(ひおきざくら)が浮かんだ。

日置桜 山眠る 純米しぼりたて原酒。サラさんが好きそうな力強い米の旨味(がっつり)と、潔い後口(スッキリ)を両立したお酒といったら日置桜しかない。ズバンと切れる名刀のごとき鋭いキレが、濃い味の多いおせちで疲れた舌をリセットしてくれること間違いなし。温度高めのお燗にすれば向かうところ敵なし。

日置桜は「醸は農なり」を掲げてお米作りに勤しみつつ、圧倒的な旨味とキレ味を追求する蔵元。季節ごとに山笑う(春)、山滴る(夏)、山装う(秋)、そして山眠る(冬)と季語を酒銘に添えた展開をしているのが素敵すぎて一目惚れした。どのお酒にも蔵元の理念が貫かれていて、その季節に吹く風を感じさせる味わいが細やかに表現されている。

返事を待ってくれていた全裸待機(?)のサラさんにこれを紹介したら、早速探してくれて。生憎、山眠るは売り切れだったみたいなのだけど、代わりに「福ねこ」という日置桜の別の商品をお正月向けに買ってくださった。

なんと、こっそり待機されてたふみぐらさんまで。

もうね、涙出る。嬉しすぎてぼくも今日買っちゃった。

サラさんだから猫でぴったり。と思いきや、猫って虎で、虎って来年の干支なんだった。どんな奇跡。大切な人たちと同じお酒でそろって新年を寿ぐことができるなんて幸せだなあ。

大好きだった日置桜をもっと好きになれた。日本酒を好きでよかったと改めて思った。お二人と本当の盃を酌み交わしたことはまだないけど、いつか必ずそうしたいと強く思った。

言葉を添えれば、お酒はもっともっと美味しくなる。

だからぼくは言葉を紡ごうと決めた。今まで飲んだお酒でも、これから飲むお酒でもいい。その一杯で過ごしたひとときをちゃんと言葉にしよう。大切な人との思い出を残しておこう。きっとそれが、一介の飲み手でしかないぼくにできる日本酒への唯一の恩返しだ。

さて、次は何を飲もうかな。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?