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TOKYOの美しい場所/新代田 Qusamura Tokyo

僕がTOKYOで素敵だなと思う場所を、今回からシリーズでご紹介していきます。第一回目は世田谷区新代田にあるQusamura Tokyo(叢 東京)です。

植物が好きな方やインテリア好きな方は、知っている人もいらっしゃると思いますが、美術品と間違えるほど個性的な造形の多肉植物を販売しているお店です。
オーナーである小田康平氏が2012年に地元広島で開業したお店に続き、東京店は2019年にオープンした2号店です。僕もアートのような多肉植物に以前から魅了されていたので、オープン当初にさっそく伺いました。

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小田急線の世田谷代田の駅から降りて、羽根木公園の方へ住宅街を歩きます。本当にこんな閑静な住宅街にお店があるのか?と疑問を抱きながら、住所のある場所へ向かいました。迷います。同じところをぐるぐると回り、ようやくそれらしき場所に到着。
ここはもともとあった庭付きの1軒家をリノベーションして作られたもの。入り口も普通の住宅と変わらないので、初めての場合は絶対に迷います。

入り口を抜けると庭のようなスペースがあって、そこに面してガラス張りになっています。きれいにレイアウトされた中の植物が全て見えるような仕組み。いきなり凄い光景に出くわして驚きました。
アートギャラリーのようなモダンな作りですが、よく見ると床や壁の一部がそのままの状態で使われていたり、歴史を感じるそのコントラストが美しいです。

内装を手掛けたのは、谷尻誠氏と吉田愛氏率いるSUPPOSE DESIGN OFFICE。テーマは「結界をつくる」。ガラスのエントランスや、スペース奥の住宅の名残りなど、一定の境界線から全く別の領域に変化しているような感覚を感じ、そのギャラリーの内部は「結界」が張られているような神聖な印象を受けます。

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結界をつくる

抽象により具象が
日常により非日常が自然と浮かび上がり
ふたつの世界がつくりだす
ハイコントラストな結界により
個性ある植物の神秘性をより際立たせ
植物というアートと
清く向き合える場を想像した

Qusamura Tokyo(叢 東京)

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結界をつくる

結界とは、神社の鳥居のように聖なる場所とその他を分ける境目をいう。単に他との間に線引きを行う境界ではなく、聖域に足を踏み入れるような感覚を持たせる結界。意識や感度を高めた状態でひとつひとつの植物と向き合ってほしいという店主の思いは、そんな緊張感の漂う結界を求めていた。

計画地は世田谷代田の住宅街に佇む、庭付きの1軒家。ここに周辺の住宅街の日常から切り離された叢のギャラリーを計画する。

周辺の環境に対して抽象化されたギャラリー要素と、日常というふたつの領域が隣り合っている状態が、そのままギャラリーとして空間化することを考えた。

それは解体された空間を白に塗装し、植物が主役となるギャラリー空間を作ることと、日常という情報が整理されていない状態が同居することによって、互いが助長し合い、個性的な植物に焦点が当たると同時に、日常の風景さえも顕在化する状態を求めた。

抽象により具象が、日常により非日常が、自然と浮かび上がり、ふたつの世界がつくりだすハイコントラストな結界により、個性ある植物の神秘性をより際立たせ、植物というアートと清く向き合える場を想像した。

関係性を設計すること、明るさをつくるために闇があり、大きさを定義するために小ささがあるように、常に対極を考えることが本質に近づいていくのではないかと考えている。関係性について思考を巡らせることが、新しい空間の可能性を作ることに繋がると信じている。

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僕が初めてQusamuraを知ったのは「銀座メゾンエルメス」で見た2016年のウィンドウディスプレイでした。「旅の途中」というテーマのもと、27種のサボテンを約2,500株使用しディスプレイを作成。エレガンスな中にアヴァンギャルドなアイデアを取り入れたもので、とても斬新で印象的でした。

洋服屋やインテリアショップでポップアップをやったりしていましたが、たくさんの種類を見ることができたのは、このお店が初めて。
Qusamura Tokyoはわかりづらい場所にありますが、本当に一見の価値ありです。お近くにお寄りの際は是非行ってみて下さい。

GINZA MAISON HERMÈS Window Display 
〜旅の途中〜

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小田康平 Kohei Oda​

1976年広島生まれ。世界中を旅していた20代の頃、旅先で訪れたパリで、フラワーアーティストがセレクトショップの空間演出を手掛ける様子に感動。帰国後、生花と観葉植物による空間デザインに取り組む。画一的な花や植物での表現に限界を感じ始めていたある日、納品の過程で傷ついた植物を見たあるアートコレクターの一言、「闘う植物は美しい」に衝撃を受け、植物選びの基準を「いい顔」をしているかどうかという点に定める。その後、植物の美しさを独自の視点で捉え、収集した一点物の植物を扱うことを決心し、2012年に植物屋「叢 - Qusamura」を始める。

Qusamura Tokyo
〒155 - 0033 東京都世田谷区代田4 - 3 - 12
Tel. 03 - 6379 - 3308
営業時間. 13:00 - 19:00
定休日. 火曜日

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