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Webメディアの終了が続く中で、いち書き手として思うこと


最近はなんだか、「リリースしました」よりも「終了のお知らせ」を聞く機会のほうが増えてしまったんじゃないか……と感じるほどに、Webメディアの終了が続いている。

「インターネットでは、従来の新聞のようにマス的な情報を扱うよりも、コミュニティ性の高いメディアが生き残る」みたいなことが散々言われてきたけれど、愛のある展覧会や読書会を企画してきたshe isや、スタートアップのピッチバトルを主催してきたTechCrunch Japanのような、コミュニティを育んできたところまでもが経営判断によって終了してしまった。ここしばらくの疫病ゆえに、然るべき営みが出来なかったところも大きいのだろうけれども。

つい先日も、noteの運営するcakesと、スマートニュースの子会社が運営しているSlow Newsという2つのメディアが更新終了を報せていた。2つを一緒くたにして語るのは少し乱暴かもしれないけれど、サブスク型で、無料では読めないような読みものを提供していく……という基本的な構造はよく似ている。漫画やレシピ、エッセイを中心としたcakesは月500円で、社会問題や経済、政治にまつわるノンフィクションを中心としたSlow Newsは月1500円。


こうしてWebメディアがなくなってしまうのは、本当に惜しい。とはいえ、時代や流行は移ろいでいくのだから、更新が止まってしまうのは致し方ない。けれどもいちど印刷・製本すれば物理的にずっと存在する紙の書籍や雑誌と違って、サーバー代やドメイン代の支払いを止めた途端に、そこにあったものは消えてしまう。魚拓をとったり、個々でローカルに保存したりすることは出来ても、これから出会うはずだった未来の読者たちにとってはもう、辿り着けない過去になっていく。


私も、過去に書いてきた沢山の記事が消えてしまった。中でも数年前に流行していたオウンドメディアや、キャンペーンサイトに書いた記事は短命だった。そして最近は、長く続くだろうと思っていたWebメディアに書いた記事も消えていく。いち書き手としては、叶うのであれば、消える前に「来月にも消えますよ」と言って欲しかった……と残念に思った出来事が何度もある。もちろん過去のハードディスクやGoogle docsを漁れば初稿や第二稿のデータなんかは出てくるんだけど、Web記事はオンライン上の編集画面で最後の手直しを加えるものが多いので、最終データはWebのみ、ということも多々。今後は、公開されたらすぐにローカル保存するようにしよう……と思わされた。

とは言っても、毎日無数に生まれ続けるWeb上の記事を、律儀にアーカイヴしていくことの合理性は少ない。そして合理性だけで言えば、Webメディアは儲からないので、経営判断によって次々と閉ざされていくことに対しても「まぁ、そうなるよな…」という乾いた感想を抱いてしまう部分もある。


そしていち書き手である私にとっては、note以上に合理的な場所もない。

noteだと、自分の信念を曲げず、好きなタイミングで、自由に書いたり加筆したりできる。クライアントに忖度して尖った表現を削られる心配もないし、今のところ記事が消えることもない(と願いたい。記事のエクスポート機能は切実につけて欲しいけれど)。

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新刊『小さな声の向こうに』を文藝春秋から4月9日に上梓します。noteには載せていない書き下ろしも沢山ありますので、ご興味があれば読んでいただけると、とても嬉しいです。