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イノベーション創出を目指す組織・人に欠かせない「信頼」の2つの力とは?

こんにちは!シンギュレイトnote編集部です。

私たちは、イノベーションには「信頼」が必要だと考えています。信頼とは、「不安な状況でも、相手に任せようと思える気持ち・行動」のことです。

イノベーションを起こす過程には、不安がつきまといます。常に不安と隣り合わせの環境で、イノベーションまでたどり着くために大切なのは、ともにイノベーションを目指す相手を、仲間を、”信頼”することです。互いが疑心暗鬼の状態では、新しいものは生まれない。感覚的には、おわかりいただける方が多いのではないでしょうか?実は、研究を通してわかった事実からもイノベーションには信頼が必要だ、と言えるのです!

では他者を信頼することは、組織にどのようなメリット・効果をもたらしてくれるのでしょうか?また、そもそもイノベーションが生まれる組織にはどのような要素が求められているのでしょうか?

今回は、イノベーション創出を目指す組織・人に欠かせない「信頼」が持つ2つの力を解説します。


イノベーションを生み出すため新結合

イノベーションが生まれる組織に必要な要素とはなんでしょうか?

そもそもイノベーションとは、モノやサービス・組織・ビジネスモデルなどに、新たな考え方や技術を取り入れ、新たな価値を生み出し、社会に変革をもたらすことを意味します。イノベーションという概念を、生み出したのは、ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターという経済学者です。シュンペーターは、「イノベーションは、既存の知と知の新たな組み合わせ(新結合)から生まれる」と述べており、「新結合」には5つの種類があります。

シュンペーターの5つの新結合

組織に関連するのが「新しい組織の実現」です。ここでいう新しい組織を実現するためには、新しい関係・多様な関係性が必要だとされています。なぜなら組織の新結合とは、自分たちとは異なる価値観や専門性を持った外部の組織や人と、関係・関係性を築き上げていくなかで生まれるものだからです。

つまり、イノベーションが生まれる新しい組織を作り出すためには、新しい関係・多様な関係性を生み出す力が必要だといえます。

信頼とは?

信頼とは、「不安な状況でも、相手に任せようと思える気持ち・行動」のことです。

  • 新しい仕事をチームのメンバーに任せるとき

  • 新しい取引先と初めて仕事をするとき

こんなとき、みなさんの中に不安はないでしょうか?このように不安を抱く状況を「社会的不確実性が存在している」と呼びます。社会的不確実性がある状況では、新しい相手を避けて既存のつながりを活用しがちです。

ですが、不安だからといって、新しい相手を避けてはいけません。こうした心理的なハードルを飛び越え、新しい関係を作っていく姿勢を「信頼」と呼んでいます。詳しくは以下の記事をご覧ください。

研究によってわかった信頼の2つの力

この「信頼」には、社会心理学者である山岸俊男氏の研究から、2つの力があることがわかっています。それは、

  1. 新しい関係をつくる関係構築能力

  2. 高い感受性・行動予測能力

の2つの能力です。

1.  新しい関係を作る関係構築能力

相手を信頼する高信頼者は、相手を信頼しない低信頼者に比べて、新しい機会・チャンスを作り続けられることがわかっていますそれを示した研究結果が図1です。この研究では、不確実性の低い環境(図1左/低不確実性条件)と不確実性の高い環境(図1右/高不確実性条件)において、同じ相手と取引を継続する確率を、高信頼者と低信頼者で比較しています。

図1をみると、不確実性条件の違いに関わらず、高信頼者が低信頼者に比べて、同じ相手と取引を続ける確率が低いことがわかります。これを言い換えると、高信頼者は新しい相手と取引をしている確率が高いと言えます。

つまり、高信頼者は新しい相手と取引をはじめる関係構築能力が高く、イノベーションに必要な新しい関係・多様な関係性を作り出せる能力を有しているのです。

そして、その差は不確実性が高くなるほど顕著です。このことからも、高信頼者の持つ関係構築能力は、不確実性が高い環境ほど強く発揮されることがわかります。

イノベーション創出は、不確実性が非常に高い道のりです。確実なことなんて1つもないと言ってもいいかもしれません。そんな不確実性の高い環境において、イノベーションに必要な新しい関係・多様な関係性を作り出せる高信頼者の能力は、欠かせない力といえるでしょう。

2.  高い感受性・行動予測能力

不確実性が高い環境でのイノベーションに向けたチャレンジは、失敗する確率の高い取り組みです。失敗する要因はさまざまですが、信頼していた相手の予想外の行動によって、計画が変更され、最悪頓挫することも考えられます。その相手の行動に対する、有効な対策となるのが高信頼者の行動予測能力です。

図2は、高信頼者と低信頼者で、相手の行動を予測する正確さを比較した研究結果です。

研究によると、高信頼者は低信頼者に比べ相手の行動予測精度が高い、という結果が表れています。

前項でお伝えした通り、高信頼者は、相手を信頼して多くの関係を生み出す関係構築能力を持っています。そのため、低信頼者に比べて多様な人とのコミュニケーションの経験を重ねている場合が多いのです。その経験の積み重ねが、相手の振る舞いや行動を敏感に感じ取れる行動予測能力へとつながります。相手を信頼し、多くの人と関係を構築できる高信頼者だからこそ有する能力と言えるでしょう。

高信頼者は、この行動予測能力によって、相手の行動を予測・察知することで、事前の対策を行い失敗を回避できる可能性を高めることができます。

不確実性が高く、失敗への落とし穴がひしめくイノベーションへの道のりの中で、行動予測能力は成功する確率を高める武器となるのです。

信頼がイノベーションを生み出す力になる

イノベーションが生まれる新しい組織を実現するためには、新しい関係・多様な関係性を生み出す力が必要です。また、イノベーションを生み出す過程は不確実性が高く、多くの落とし穴が潜んでいます。

そこで、相手を信頼する高信頼者の持つ2つの力の出番です。

  1. 新しい関係をつくる関係構築能力

  2. 高い感受性・行動予測能力

相手を信頼する高信頼者は、関係構築能力で新しい関係・多様な関係性を生み出し、高い行動予測能力によって、相手の行動を予測し、事前に失敗を回避します。

まさしく高信頼者は、イノベーションを目指す組織に欠かせない人材といえるでしょう。そして、相手を信頼するという行為の積み重ねは、イノベーションの生まれる組織への変革を促します。単に個人が高信頼者になるだけではなく、他者を信頼する組織文化が生まれてくるでしょう。

他者を信頼する組織文化。それは、イノベーション創出に必要な新しい関係・多様な関係性を生み出す力を有したイノベーティブな組織にほかなりません。

信頼の力を得るためには、身近な相手を信頼するところからはじめましょう。同じチームの部下・上司・同僚を信頼して、仕事を任せるのです。そして徐々に、他部署、そして外部企業と信頼する相手の範囲を広げていきましょう。信頼を積み重ねていくことで、信頼の力を高めることができます。信頼によって、イノベーションを生み出しましょう。

参考文献
・山岸俊男, 信頼の構造, 東京大学出版会, 1998
・Yamagishi, T., Kikuchi, M., & Kosugi, M. 1999 Trust, gullibility and social intelligence. Asian Journal of Social Psychology, 2(1), 145-161.
・菊地雅子・渡邊席子・山岸俊男 1997「他者の信頼性判断の正確さと一般的信頼 - 実験研究 - 」 『実験社会心理学研究』 37(1), 23-36.
・清成透子・山岸俊男 1996「コミットメント形成による部外者に対する信頼の低下」 『実験社会心理学研究』 36(1), 56-67.


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