ひろせ

モラトリアム爆発、東京に馴染めない大学生

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モラトリアム爆発、東京に馴染めない大学生

最近の記事

就活の面接で、苦手な人はいないと言ったこと

「苦手なタイプの人とはどう接しますか?」これは面接でもよく聞かれる質問だ。みんなはどう答えているんだろう。 私はこの質問に「苦手な人はいない」と答えた。これは嘘ではない、でも本当のところはちょっと違う。 学生は特に、人間をカテゴライズしたがる生き物だ。陽キャ陰キャだとか、カースト上位下位だとか、とにかく比べたがる。自分たちとは「違う」人間に対して境界線を引くことで守られている気がするのはいたって普通の感情だ。 その過程で、自分には理解できない相手を「苦手」と感じ、さらに意味

    • 『カラフル』で思い出した幼少期

      最近、Amazon Prime Videoで森絵都『カラフル』を映画化したものが公開されているのを見つけた。何度か映像化はされているみたいだが、小説しか読んだことがなかった。 そして、小説の『カラフル』に関してこんなことを思い出した。 それは中学校の夏のことだった。 部活に所属していなかった私だが、朝練と同じくらいの時間に登校して誰もいない教室で過ごす時間が大好きだった。教室に広がる優しい木の匂いを感じながら読書をする時間を、自分の特権のように感じていた。いつまでも続く時間

      • 【読書】 中村文則『掏摸』

        幼いころから私は、自分が重大な罪を犯してしまうことを恐れている。もちろん実際には至って真面目に生きている。決して貧しい家庭に育ったわけではないし、大事に育てられてきた。 一方で、自分のどこかに世界からはみ出したい欲が潜んでいると感じてならないのだ。 この作品には、スリという形で法を犯す人間たちが描かれている。主人公の西村は、幼いころから人のものを盗むことに快感を覚えていた。悪いことではあると思うが、悪人であると完全に突き放すことができない。 例えば彼は、怪しい強盗の案件を

        • 面白くないものを見限る力

          大学生にとって、悩みの種は小さいながらたくさんあるが、わたしを先週悩ませていたのは哲学のレポートだった。 その哲学の講義は、主に現代の哲学の歴史を説明するもので、「意味とは何か」とか、「目的とは何か」とかいった心の働きを難しい言葉で再定義していた。最初は、人間の心とはいかなるものかを知らずには人間として生きていけないと思ってやる気に満ち満ちていた。しかし受講しているうちに「なんだか難しい森に迷い込んでしまったな」と思っていた。 それから半年経ち、いよいよ期末レポートを書く

        就活の面接で、苦手な人はいないと言ったこと

          「特別」になりたかった。

          いま、私は何かを成せる人間になりたいと思っていた。誰よりも特別な存在でありたかった。それは負けず嫌いな性格のせいでもあったが、「愛されたい」という欲望の表れだと私は思う。 いつのころからか忘れたが、小学校のころから「弱みを見せない大人」に憧れていた。両親がどちらも強い人間だったからかもしれない。弱みを見せることが恥ずかしかった私は、誰にも甘えることなく生きていこうと決めてしまったのだ。 そんな私を揺さぶったのは、小学校三年生の時、Y君が転校してきたことだった。苗字が近かっ

          「特別」になりたかった。

          鮮やかな遊具

          私は中学校の卒業まで、大阪の治安のいい住宅地で育った。家のすぐそばには図書館を併設した大きな公園があり、鬼ごっこなどをして遊んだ。 その公園の奥には神社がたっていて、その周りの緑が住宅地に唯一残された自然な場所だった。今思えばその自然も管理されたもので、手付かずなわけはなかったのだが。 公園に設置された遊具は、どれも鮮やかな色をしていた。真っ赤に塗られたたこの滑り台、青色のジャングルジム、オレンジ色のブランコ、幼い私にはどれもが特別輝いて見えた。そこで遊ぶことが自分の義務だと

          鮮やかな遊具

          【読書】『我々は皆、孤独である』

          作品のタイトル『我々は皆、孤独である』そんなの当たり前だ。 どれだけ友達がいたって孤独でない瞬間なんてない。一番近い親友でさえ自分のことなんて2割も分かってないだろう。 だって誰とでも分かり合えるならきっと芸術も文化も生まれていないだろうから。 作品名からは想像していなかったが、これは推理小説である。しかし推理小説といっても密室もトリックも証拠すらもない、雲をつかむような推理が展開されていく。 これは依頼者の前世を調べる探偵のお話なのだ。独特で奇妙な世界観、気づいたらいつ

          【読書】『我々は皆、孤独である』

          就活とモラトリアムについて

          就活はその後の人生を大きく決める。そんな願望を強く持っていた。 なぜ短い間で偶々出会ったもので、人生を左右させられなければいけないのだろう。 向いていない方面で「無能」とされ、興味のない仕事に文句を言う。ほとんどの大人がこんな風に見えた。何も考えずに就職していく同期を憐れむ気持ちすらあった。ほんとはみんなちゃんとしてるってことを見ないように、自分を傷つけないようにしていた。 自分に自信を持てなくて、誰かに認められたかった。自分はうまく生きれると思っていたのに、思えば遠くへ

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