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先日、萩での撮影と撮影の合間、インターバルが4時間以上もあり、スタッフからの発案で期せずして映画館での映画鑑賞を選択することにしたのです。
当日ラインナップのスケジュール的に丁度良かった作品が話題のハリウッド映画『ゴジラ対コング』。

鑑賞後、内容やクオリティを論じる以前に考える必要を感じた観点があります。
‘構図’への捉え方です。
カメラフレームで画面を確定する事、所謂ショットとも言いますが、その構図がほぼこの映画には存在しません。

約2時間の作品中、アクションの占める割合は最低5割以上、ともすれば6割から7割だったかもしれません。
このアクションとはゴジラとコングの格闘シーン、更にその他の怪獣との格闘シーン、それにまつわるシーンの事を指します。
完全に精巧な3DCGの構築技術は前回のハリウッド版『ゴジラ キングオブモンスターズ』やその類いのタイプ作品でも凄まじいものがあります。
元々3D技術は建築図面の作成やサンプル作成の為に用いられるCADの応用発展に依ります。この立体図を360度カメラ撮影に融合させて映像背景はもとより怪獣本体も作成されます。特徴的な点は勿論背景のこだわりもよく分かるのですが、寄りのクローズアップがアクションで多用されているのは、背景との合成をスムーズにする点が考えられます。
2Dアニメーションでも背景美術の作成には時間を費やすのと同様に、CGでの背景作り込みには相当な手間を要します。引きの画が印象に無いのは至極当然です。

舞台はあるアジアの発展都市ですが、街は例によって木っ端微塵に砕かれます。
その模様はどこに視点が置かれる訳でもない怪獣たちの格闘シーンが延々流れていきます。合成処理のモーフィングアクションの応酬です。
つまり、構図以前に良く言えばドキュメントな空間演出として、カットを割る必要のない体感的映像、アミューズメント感覚の共有が目的と解釈します。

そこで、映画とは様々な方法や手段があり、タイプも様々で由とする見解があります。
観る側の目的、映画に期待するものとは何か、知名度的なバリューがあれば構造を問わなくても良いのか、バリューの原点にある創造者へのリスペクトは現在も存在しているのか…様々な思いが一斉に去来してきたのです。

少なくとも私の揺るぎない観点をはっきり述べるとするならば、映画は構図が命だということです。構図に拘り様々な技術者がその映え方、見せ方に尽力してきたのが映画の歴史に他ならないからです。構図の連続性からある人は内在していた情緒が呼び覚まされ、喜怒哀楽が沸き起こります。この喜怒哀楽こそ映画というツールが100年以上経ても朽ちない愛される理由なのです。

鑑賞後に感じた私の複雑な感情を同じ認識で他のスタッフが各々自分の好きな映画とはと、語り始める展開は不思議とコミュニケーションが一層深まっていく方向へ舵を切ったように感じました。

‘それぞれの映画’というフレーズがふと自分の中に現れてきました。

この『ゴジラ対コング』を観た日の現場は大根の撮影でした。収穫風景は日落ちの午後7時から。大根は夜収穫されるのが慣習とのことです。

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