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美容整形や脂肪吸引、エステサロンの活況から若さを保つアンチエイジング自体は本質的に本人の気が為せる行動原理なので感心すべきものです。
こうした流れは男女問わず、健康にも意識付けされる場合もあることで有用な側面も手伝います。
ただ迎合や阿る方向はいささか微妙であり、無理していると見られるのは本意とは異なる筈です。

たまたま移動中のカーラジオから“郷ひろみ”のオールタイムベストな特集でシングル楽曲が流れてきたので、思わず注意して聴いていました。
久世光彦演出の傑作『ムー一族』をリアルタイムで観ていた四十年以上のファンとして、現在進行系の活躍はまさにアンチエイジングへの並々ならぬ取り組み努力の賜物だと理解するのですが、ここ数年のシングル楽曲でのパフォーマンスを重視した動きを激しく見せる為の消費型楽曲テイストにはある種の無理を感じてしまうのです。
そう思うには理由があります。
1970代から1980年代の楽曲群は実年齢以上の構築された世界観を時には妖しげにアーティスティックな表現の面白さ、エンターテイメントの追求がありました。

少し前のご本人のインタヴューで、大衆が自分に求める郷ひろみ像を意識して継続したい旨の記事を読んだことがあります。
元気で明るく踊れて、皆んなで歌える楽曲をとモードを特化することに舵を取って以来、20年位は同路線ではないでしょうか。確かに栄枯盛衰スピードの激しいエンターテインメントの世界の中で、驚異的な判断だと思います。

それでいて、勿体なく感じてしまうのが嘗ての名匠の手で作られた音楽好きも納得させられる楽曲群の方のウェイトがやはり大きいが故に、キャラクターとしての元気で明るく踊れての一側面のみで簡便なサウンドプロダクションで作られている現在シーンが退屈に思えるのです。キャラクターだけが活き活きとしているのみで満足できる方には不満は全く無い筈です。その点、重々理解の上で私の指摘は非常に大きなお世話に他なりません。

“郷ひろみ”は複雑性と複合的なアプローチや表現に富んだ稀代のエンターティナーである事実を世間がやや忘れかけている点があると思います。

私の好んだ郷ひろみとは…その点に於いて下記にある作品が挙げられます。ここでは私のリアルタイムを中心にご案内します。

自身のペンネーム“ヘンリー浜口”名でセルフプロデュース、全作詞と当時先鋭的であった大澤誉志幸等からの提供と全アレンジを大村雅朗が担当。エッジを効かせたクールかつシャープなサウンドプロダクションが特徴。

『LABYRINTH』は『ALLUSION』の続編のような耽美、ダンディズム、UKニューウェーブの片鱗も感じる、前作同様に大村雅朗が全アレンジを担当しています。

坂本龍一プロデュースにつき、YMOは勿論、教授関連のアーティスト多数参加の1983 年作品。コンセプチュアルかつ実験と楽曲の良さが際立つ名盤です。

全曲英詞と、作曲は全てを郷ひろみが手掛けています。ブライアン・フェリーを思わせるボーカルスタイル、海外展開を意識していた野心作です。

ここで映画も幾つか挙げてみます。

監督に村川透、音楽はフランシス・レイと特別出演に三船敏郎と、フィルムノワールとして私には非常に刻印されてます。郷ひろみの刹那的なニヒリズムが美しい作品。

監督は篠田正浩、撮影に宮川一夫という近松門左衛門の浄瑠璃原作の映画化。ベルリン国際映画祭のコンペティション作品。ここでも時代劇に於いてすら妖しいダンディズムが炸裂しています。

遠藤周作の原作をジェームス三木が脚本を手掛けて『五番街夕霧楼』の山根成之監督作品。
感情の整理が拙い屈折の青春模様を描いた秀作。ナイーブな青年を好演しています。
余談で、私自身初めて映画脚本に触れて感情移入してしまい、図書館で読み込んでしまった作品です。

今回はファンサイトのような投稿になってしまいましたが、きっかけとしてのカーラジオからの現在のアプローチについて、円熟の表現と以前放っていたアーティスティックな煌きもまた見てみたいという思いが沸々と来たのです。

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