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衝撃的、でも懐かしい。生々しい恋愛模様『若さと馬鹿さ』

前回の記事【 あの時の恋を『ちょっと思い出しただけ』】に引き続き、普遍的な恋愛映画を今回もご紹介していきます。

思い出すとほんわかしてしまうような、そんな恋だけが「普遍的」ではありません。苦さや切なさ、ちょっぴり心が苦しくなるような、それでも大切な、過去の恋を抱えている人も多いのではないでしょうか。そんな人におすすめしたいのが、シネマディスカバリーズで配信中の映画『若さと馬鹿さ』(2019)です。

「だらしない」が心地良い

フリーターのたかちゃんとテレアポをしているさくらは、家賃4万円の小さなアパートにふたりで住んでいます。カレーをよく作り、時には愛し合い、幸せに暮らしていたはずでした。ある日、家賃の半分2万円を入れた封筒をたかちゃんに渡し、仕事に向かったさくら。パッとしない日々、将来への不安、そんなことを感じながらたかちゃんは2万円の入った封筒を握りしめ......。

本作は俳優としても活躍している中村祐太郎監督が手掛けています。キャストには、たかちゃん役に、大胆すぎるヌードを披露し、体当たりで表現した柴田貴哉さん。ダメ男の彼女として、さくら役を演じたのは、自然体でリアルさを表現した松竹史桜さんです。

お風呂場で、陰毛を剃り合うという衝撃的なシーンから物語はスタートします。小さいアパートに、生活感のある部屋、こういうカップル良く見かけるなぁと思えるたかちゃんとさくらというキャラクター。流れる穏やかな空気が、ふたりのだらしない関係をより一層引き立てていました。

オープニングの驚きのシーンのあと、落ち着いて進むのかと思えたのですが、またすぐに開いた口が塞がらないインパクトのある場面が登場します。自主制作映画ならではの強烈さと、ただのよくある日常で終わらせないストーリーに、最後まで目が離せません。

事情は違えど、一見なにもなく幸せそうなカップルにも、何かしらのドラマがあり、「ああ、なんかその感じ、分かるなぁ」と共感を覚える作品です。思わず考察したくなる、観る側に解釈を委ねられたラストのシーンも必見です。

ロマンチックな普遍的恋愛映画に物足りなさを感じる方や、現実の生々しい恋愛模様を求めている方、ぜひ観てみてください。

シネマ通信では、『若さと馬鹿さ』を手がけた中村祐太郎監督やさまざまな映画監督にクローズアップをした連載企画のコラムも予定しています。お楽しみにお待ちください。

▼この記事を書いた人
渡辺 / ライター、エディター
映画が好き、大好き。映画を軸に、さまざまなメディアで執筆、編集をしています。

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