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『ちょっと思い出しただけ』から思い出したこと

松居大悟×池松壮亮×尾崎世界観・クリープハイプ

この並びだけで、思い出すことが沢山あります。
「思い出した」ことなので、極私的な思い出も書きますが、ご一読いただければ。この思い出の話は、詳細は違えど、誰しもが持つ「思い出した」あの時に通ずるものだと思うのです。

6/18(土)には松居大悟監督にお越しいただき、舞台挨拶をいただきました!



まず、思い出したのは、クリープハイプを聴きながら自転車に乗ってた中高生の時。自転車で学校に行って、部活で走って汗を流して、帰ってからクリープハイプのMVを観ながら筋トレしてた時。

中学の友達と、あんまり慣れないカラオケに行ってクリープハイプを歌ったとき、「この曲知ってる!良い声だね〜」と言われた時。

入った大学でギターを始めて、なぜか周りの皆んなクリープハイプが共通項で。
先輩が卒業する時、そして自分達が卒業する時も、友達が弾いてた「ex ダーリン」でボロボロ泣いた時。

そんなに会わなくなった今、元気かなぁと思い出した時。


まだ『ちょっと思い出しただけ』を観る前、クレジットの並びだけで、こんなに思い出があるのだというほど、色々思い出しました。

そうして観た本作。
思い出すことを描いた映画。
思い出になる物語があって、物語になりそうもないことが思い出になっていて。
そんな「仕組み」、無機質じゃない言葉で言えば人の生を伝えてくれるのは、「物語」というもので。

ジャームッシュが何をするでもなく生きている人を、醒めた目ながらもキュートに描いてきたように。

そんな『Night On Earth』を観た尾崎さんがバンドを始めたように。

やがて曲を作って、盟友たちとの映画が生まれたように。

照生と葉が『Night On Earth』を観ていたことが、思い出の一部になっていたように。

『ちょいおも』を観たきっと多くの人が、自分と大きい世界との間でフワフワしてしまった2020年から2021年、それまでが描かれていることに、否が応にも「私」と「物語」とを繋げてしまうように。


「物語」がまた物語を生んでいく、というよりも、物語なんだと気付かせてくれる。
それは生み出される過程も含めて、生まれた「物語」に触れたことも含めて。

私にとっての『ちょっと思い出しただけ』は、そんな循環を思わせてくれた映画でした。



観た人それぞれの思い出が溢れる映画なのだと思います。

思い出すことで、映画に負けないくらいの物語なのだと、感じさせてくれる映画なのだと思います。

ちょっと思い出しただけ。その歌詞とその歌詞がタイトルになったこと。この映画が生まれて良かったなぁと思います。

生み出してくださってありがとうございます。御三方にもスタッフキャストにもジャームッシュにも、もっと遡って思い当たる人にも、感謝です。


当館での上映は6月いっぱいまで。

ぜひ劇場で観賞時間を過ごしていただきたく思います。


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