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「家父長制」ではなくなっても「長男業」というシャドーワークは残っている

『家族信託について考える』シリーズの第3回は、事例であげた「とある家族」の長男一家についてみていきたいと思います。
戦後、日本の家父長制的家制度はなくなりましたが、今でも父母の面倒をみる割合は長男が圧倒的に高いのではないでしょうか。
まだまだ、長男が「墓守」という意識は強く残っていると思います。それだけに、長男にかかる負担は、シャドーワークというだけでは済まされないと思います。

このシリーズの第1回で事例紹介した通り、長男(65歳)一家は、父母と同居しています。居住の土地家屋は、土地は祖父名義の借地権、建物は祖父名義です。長男には、子どもが男、女、男と2男1女です。長女には知的障害があり施設に入所中(成年後見人は父)で、他の子どもたちも結婚して家を出ました。
 
この長男は定年退職後、再雇用として会社員を続けています。保有財産は銀行預金に3千万円、株式に3千万円ほどあります。

そんな長男の立場に立って、相続や家族信託、成年後見について考えていることを、以下のとおりの質問にしてみました。

Ⓠ1 高齢の父母の遺産相続を考え始めたら、自分の相続問題も気になってきました。「家族信託」「成年後見制度」「遺言」を組み合わせていきたいと思いますが、どうでしょうか?

Ⓠ2 一番心配していることは、自分が亡き後の、障害のある長女のことです。「財産管理」や「身上監護」についてを、自分の子のうち長男もしくは次男に、成年後見人になるように相談してみるつもりです。
家庭裁判所は、弁護士等の士業者を成年後見人に指定すると聞いていますが、親族でお願いできるでしょうか?

Ⓠ3 「家族信託」については、家族全員の十分な理解の上で、実施することが重要だと思っています。私の父の遺産相続についても、全部わたしに譲るとなったら、弟たちから、遺留分の請求が出てくるのではないかと心配しています。いっそのこと、弟たちに、父母の面倒に関して、どのような役割を果たせるのか、その役割を担ってもらって、応分の相続を保証するという方法は取れないのかとも思っています。そんな方法があれば、自分にも障害のある子がいるので、応用できないかと考えています。最終的な相続という局面で、不満が出ないような対策はありますか?

Ⓠ4 「家族信託」や「成年後見」や「遺言」を組み合わせる考え方はどこに行って、だれに相談したらよいのでしょうか?

Ⓠ5 高齢の両親はもちろんでが、私自身が、認知症になってしまったら、どうしたらいいのでしょうか?そんなことを、誰もが考えなければならない時代になってまいりました。専門的な関係機関の協力で、それぞれのファミリーが期待する「処方箋」が提示できるような仕組みはありますか?

 以上が、「とある家族」の長男からの問いかけです。
年老いた両親を心配しつつも、自分もすでに「高齢者」といわれる年齢に達している長男の立場でつくりました。この世代の方は自分は「長男業」をしてきたけれど、自分の子どもたちにそれを期待していいのかという悩みも抱えています。
 では、この問いかけに、公益社団法人成年後見支援センター「ヒルフェ」品川支部の行政書士たちは、どう答えるのでしょうか。
 前回の祖父母の、問いかけと合わせまして、ご紹介していきたいと思います。

                         つづく   


 


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