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白昼夢は見られない


君が起きる時、それは僕が夢を見る時で。

君が夢を見る時、それは僕が起きる時で。

いつからそうなったかはわからないけれど、いつしか僕はそうやって、君の夢に遊びに行く時間が減っていった。


カーテンの丈を間違えて買ってしまった。15cm足りなかった。

自分の誕生日を忘れてしまった。3月であることだけが確かだ。

いつもみたいに君のための分の紅茶を淹れた。

僕の飲めないダージリンティーは、それでもいい匂いがしてくるから。


でも君はいなかった。どこにも、誰も、いなかった。

1DKの小さな僕らの部屋には最初から君なんていなかった、と気づくまでにずいぶんと時間がかかったけれど、だからと言って、物哀しいなんてことはない。


白昼夢は見られない。15cm差であるはずの君の身長を僕は知らないから。

白昼夢は見られない。3月生まれの君は僕より大きかったから。

眠れないのはもう慣れた。僕はただ君を知りたいだけだ。

どんな香りがして、どんな色を纏っていて、いつまでそこにいるのか。


名前も知らない君を、遠い昔に見た白昼夢の中にいた君を想いながら、

やっぱり僕は今日も、君の夢には遊びに行けない。


外はもうすぐ君の匂いがしてくるだろう。ダージリンを淹れてカーテンを開ける。

白昼夢は見られない。それでも思い浮かべる。

見たことのない美しい君を、僕の中だけの君を、僕が僕のままでいるために。

白昼夢は見られない。それでも目を閉じる。

遠い昔の君に会うために、名前を聞くために、はじめましてを言うために。


白昼夢が見たくて、午前10時、僕は目を閉じた。




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