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ねむるとき

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冬の刹那、春に向けて。

冬の刹那、春に向けて。

形にしようと思えば思うほど、何かがぽろぽろとこぼれ落ちていく気がして怖かった。私がこんなに苦しんで、悲しんで、涙を流しながら、長い時間をかけてようやく身に纏ったハリボテの宝石達を、誰にも何にも傷つけれられたくなくて、形にしてしまえば、自分すらそれを手放してしまう気がして、形にするのが怖かった。

音としてただ流れていくだけの、絶対に私の心の中にしか残らない程の、他の音に飲まれてしまえば誰にも聞こえ

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四月病

四月病

去年の四月は何をしていたかな、となんとなく思ったから。
自分の書いた言葉を探って少しだけ、過去に戻ってみました。

ちょうど一年前のわたしは結構明るくて、孤独を愛そうとしたり、小さな引っ越しをしてみたり、ずいぶんと楽しそうでした。

春が連れて来たと思っていたわたしの鬱屈は、春のせいではないのかもしれない。そこまで考えて、一旦全部が嫌になりそうなのを堪えたから、わたしは真面目です。

花粉症ではな

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無色不透明

無色不透明

今まで感じたことのない感覚であろうものが、
今ここに在る気がしている。

雨粒が窓をつたって、
土砂降りの雫が地面に落ちて弾かれる。

走るタイヤが水飛沫をあげて、
波のような音が流れて、遠ざかる。

言葉の色が、見えなくなってしまった。

キャンドルの光のような暖かいクリーム色も、
深く曇っている夜空のような悲しい紺色も、
誰かが伸ばした手の色も、顔も、大丈夫も、

何も見えなくなってしまった。

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