ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 7: PRESENTATION
「ほら、今日は先方もお偉いさんが多いから、キミは会社で待機しててよ。」
部長にそう言われ、彼は何か見失ったような表情だった。しかしすぐに用意した企画書や資料のデータをすべて渡してくれ、「よろしくお願いします。」とプレゼンに向かう僕らに頭を下げた。
なぜ、彼が説明してはいけないのだろう。
この仕事では、彼がチーム内で最もたくさんデータを集めて読み込み、最も時間をかけて考え、今日の資料を作ったはずだ。大きな仕事に若いプレゼンテーターは軽く見られるだろうか。若いと同じ内容でも説得力に欠けるだろうか。
しかし、人の作った資料を代読してるオッサンも十分説得力がないように思える。
「その点はですね、」
ほら。質疑応答でボロが出る。部長、打ち合わせで彼の説明を聞いてなかったんですか。ああ、あの打ち合わせにいなかったのか。慌てて代わって説明をする。
クライアントは資料を捲り、なるほどと納得してくれたようだ。当たり前だ、この提案書、隙なく綿密に作り込まれている。
今日が勝負の日だと思っていたことを告げるアイツの見慣れないスーツ姿が、再び僕の胸に来た。
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この詩篇はフィクションです。
実在の人物・会社とは 一切関係がありません。
ローリング・サラリーマン詩篇 prologue
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 1: CONVENIENCE STORE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 2: E-MAIL
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 3: 7:00AM
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 4: TRAIN
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 5: GODZILLA
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 6: BIKINI MODELS
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 7: PRESENTATION
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 8: MASSAGE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 9: STAFF
ローリング・サラリーマン詩篇 poem: なりたいもの
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 10: TAXI DRIVER
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 11: NIGHT LIFE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 12: GHOSTS
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 13: NICKNAME
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 14: JAZZ CLUB
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 15: NURSE
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 16: LUNCH
ローリング・サラリーマン詩篇 chapter 17: FAREWELL PARTY
ローリング・サラリーマン詩篇 the last chapter: パリで一番素敵な場所は
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