「生きてるだけで、愛。」鑑賞記録(2024/5/15)
2023年度後期のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」でヒロインを務めた趣里が主演する映画を鑑賞した。趣里演じる寧子は、恋人の津奈木(菅田将暉)と同棲しているが、過眠症を患っているため、まともな社会生活を送れない。あるきっかけでカフェでアルバイトを始めるが、過眠症のために寝坊や遅刻、欠勤が続く。彼女は社会生活に適応しようと努力するが、自らの社会との噛み合わなさを感じる。設定は極端だが、どこか自分と重ね合わせることができる点もある。
寧子は過眠症で、家事もせず、ほとんど寝たきりの生活を送っている。仕事もしていない。いつからそうなったのかは不明だが、姉からは「親も心配しているから早く働きなさい」と圧力がかかる。
過眠症ゆえに働きに出かけることも容易ではなかったが、あるきっかけで不可抗力的にアルバイトをすることになった。過眠症自体が治ったわけではないため、最初は気を張っていたものの、次第に遅刻や無断欠勤が続く。社会に適応しようという気持ちはあるが、人並みにはいかない。
寧子の恋人・津奈木は週刊誌の記者をしている。文学を好んでいたため物書きになりたかったが、上司からは「高尚な表現は不要」と貶され、他人の仕事を押し付けられる。自分が書きたい記事は書けず、これでは過眠症の寧子を気遣う余裕もない。
こんな膠着した物語に苛立つ観客もいるかもしれない。この作品の主題は、寧子がどのように成長していくかではない。医学的な助けがあれば彼女の生活は改善するかもしれないが、寧子はその助けにアクセスする手段を知らない。
主人公が奮起して逆境を乗り越え成長する物語とは言い難い。絶望が希望に変わるのは必然ではなく、絶望はそこに存在し続け、二人がその絶望のただ中で違和感を覚えている点が重要である。
社会に適応すべしとの圧力に対し、二人はそれを是認しない。そして、観客に静かに問いかける。過眠症という極端な設定は、問いを際立たせるための一つの演出である。この映画は「こうあるべきだ」という答えを観客に持ち帰らせることはしない。
ついつい正しさや常識に頼りたくなるものだが、そればかりに囚われる必要はないかもしれない。そんなことを感じた。
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