見出し画像

「舟を編む」鑑賞記録(2021/7/2)

以前から気になっていた作品ではあった。三浦しをんの小説を中学生くらいから(高校生だったか?)よく読んでいたので、タイトルや大まかな内容は知っていた。ただ、誰が出演しているかなど、具体なところまでは知らないでいた。

このたび、カンテレの火曜ドラマとして「大豆田とわ子と三人の元夫」が放送され「元夫」の一人である松田龍平がこの作品の主役を務めていると知った。また、同じく「まめ夫」に出演していたオダギリ・ジョーも出演している。あのドラマのファンとして嬉しい配役だ。

もちろん、そればかりではなく、宮﨑あおい小林薫加藤剛八千草薫といった名優たちの味わい深い演技が良かった。彼らに共通するキーワードは、松田やオダギリ含め「優しさ」と「大らかさ」である。辞書の編纂過程がいかに長い道のりであるかという点を、登場人物のひととなりをもって示すことができているように思う。恐らくは、短気でせっかちな人間には辞書づくりは向かない。「成果」を出すのに、あまりに時間がかかりすぎるからだ。

だが、辞書づくりに関わる人々やそれを支える人々というのは、そういう日常的な殺伐とした感覚とは無縁に近い。じっくりとコツコツと物事に取り組むことをよしとする。もちろんそれが楽だということではないが、うらやましいと思う。一つのことに情熱を傾けることは誰にでもできることではない。どれだけの人間にできるだろうか。そのありかたは、泥臭いが美しい。

悪くいえば、登場人物は“善意”に満ちていて悪者はほぼ存在せず、ややファンタジー感が否めないが、映画である以上、限られた時間で物語を完結させる必要があり、やむを得なかったのかもしれない。「世の中はもっと理不尽である」という世知辛い感覚を持ち出すと楽しめないので、もっと気楽に鑑賞することを勧めたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?