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経営課題の解決への糸口を探る

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中産連のコンサルタントやその仲間達が、日々の活動の中で、悩み・考えた事、「お役立ち情報」になるのでは・・と思ったことをまとめていきます!
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記事一覧

VUCA的な環境に対応するための5つの経営課題とその対応策(後編)

前編、中編に続き、後編を掲載します。 後編では、5つの課題に対応する対策案を体系化し、いくつかの事例を掲載します。 (前編、中編はこちら) 4.課題と対策案の体系化前章までに述べたことを踏まえて、この章では第2章で示した5つの課題について、それぞれの取り組み例を紹介していく。 図表3を見ていただきたい。これは5つの課題に対して企業が取り組むべき活動を例示したものである。 上段の経営方針と事業目的の明確化については、自社のパーパスやミッションを定義し、それを実現するため

VUCA的な環境に対応するための5つの経営課題とその対応策(中編)

前編に続き、今回は中編を掲載します。 中編では、5つの経営課題を構造的に理解するための概念図を示し、それぞれの課題を深く検討するための手がかりを提供します。 (前編はこちら) 3.VUCA時代を乗り切る価値創造の仕組みこれら5つの課題はそれぞれを独立した課題として考えるのではなく、相互の関連性を踏まえて体系的に理解する必要がある。それを示したのが図表2である。 この図を説明すると、まず最上位にはパーパスやミッションなど、普遍的価値、社会的価値に関連した項目がある。パーパ

VUCA的な環境に対応するための5つの経営課題とその対応策(前編)

今回の記事は、筆者が所属している一般社団法人中部産業連盟の会報誌『プログレス』(2023年11月号)に掲載された記事を前編・中編・後編の3回に分けてnoteに再掲します。 タイトルにあるとおり、記事のテーマはVUCA的な経営環境における企業の取り組み課題をどう考えるべきか、というものです。『プログレス』という会報誌の性質上、いつもよりも堅い書き方になっていますが、そのまま掲載したいと思います。 今回は全3回のうち、VUCA的状況と企業の経営課題を整理した「前編」を掲載します。

戦略実行力を高めるための教育制度を構築する

人材あってこその戦略コンサルタントとして企業のお手伝いをしていると、プロジェクトの支援だけでなく人材育成のお手伝いをする機会も多くあります。プロジェクトの中でプロジェクト・メンバーに会合の事前準備の方法や関係者への案内の方法などについて助言を提供することもありますが、通常、人材育成の支援は教育(つまり、研修)という形態で行います。 企業から依頼を受けて実施するということもありますが、多くの場合、プロジェクトの進め方や関係者の反応などを見て、私から「〇〇について、階層別研修

新規事業を紡ぐ「エフェクチュエーション」という考え方

大変ご無沙汰してしまいました。中部産業連盟の岡部です。 約2ヶ月も記事を書かないと、記事をどうやって書けば良いのか、わからなくなってしまいますね。 何事も継続は力なり…立ち止まるのは良くないと反省しています。 さて、本日は「エフェクチュエーション」を題材にして、新規事業を起こすときに大切になる行動について、お伝えしていきたいと思います。 私も中部産業連盟に入職したのが6年前(2017年)になりますが、その当時は企画営業職として働いていました。そのときに、自然と活用していた

「風通しの良い組織」をつくる

「風通しの良い組織」という考え方があります。最近では「心理的安全性」という言葉が流行していますが、日本では昔から「風通しの良い組織」という言い方で心理的安全性に近い考え方をしていました。 コンプライアンス的な観点から、また社員の離職防止の観点から「風通しの良い組織」を組織目標として掲げる会社も増えています。 今回は、心理的安全性にも通じる「風通しの良い組織」について、コンサルタントとして企業のプロジェクトを支援してきた立場から解説したいと思います。 風通しの良い組織とは

心理的安全性と多様性でイノベーションを導く

イノベーション戦争、気候変動、災害疫病、デモグラフィック(人種・年齢・性別など集団属性)の変化、デジタル革新など不透明さが増す昨今、企業は既存の事業運営に安住できず、一層のイノベーションを求めています。 イノベーションは、提唱した経済学者シュンペーターによれば、新結合(これまでにない組み合わせのこと)により社会的な価値を生むことです。 1990年代から世界の産業構造を変える震源地となったのはアメリカ西海岸のシリコンバレーですが、ここでは開放的な気風の新興企業が自社の枠

「伝わりやすい話し方」について

今回は他人に話をするとき、特に自分の考えやアイデアを他人に話すときの「伝わりやすい話し方」について、私が日々コンサルタントとして心がけていることを中心に解説します。 他人同士、話が通じないのが普通仕事をしていると様々な立場の人とコミュニケーションを取ります。そして、「話が通じない」という経験をたくさんします。 なぜ、話が通じないのでしょうか? 答えは簡単で、人は自分がいつも考えていることとは違うことを言われたら、普通は理解できないものだからです。 大事な話になればなる

寺田寅彦に学ぶキャリア開発(領域限定とCross-Disciplinary Expertise)

キャリア開発と専門性リスキリングという言葉が広まり、能力開発、キャリア開発への関心が高まっています。 もちろん、リスキリングという概念が広まる以前から一定数の人々は能力開発やキャリア開発に関心を持っていましたが、最近では転職市場の活発化と相まって能力開発やキャリア開発への関心がさらに高まっているように感じます。 能力開発やキャリア開発を考えるとき「専門性」について考えないわけにはいきません。能力を開発する、あるいはキャリアを開発するということは、どのような専門性を持つか

模倣戦略と前例主義(あるいは戦略的意図なきベンチマーキング)

経営学の世界でひと頃「模倣戦略」という概念が話題になりました。 模倣戦略とは、他社の何かしら優れた点を自社の製品やサービス、あるいは事業に取り入れて、それによって収益を確保しようという戦略です。あわよくば後発者としてのメリットを享受してリーダーを出し抜こうという狙いもあります。 他人のやっていることを模倣することを侮蔑的に「猿真似」と言ったりします。英語では「Copycat」です。猿ではなく猫ですね。昔々、イギリスではCatは人を軽蔑するときに使う言葉だったようです。それ

戦略思考の3つのポイント

今回は「戦略思考の3つのポイント」について、私がコンサルティングの現場で考えていることを踏まえてお伝えしたいと思います。 戦略思考は戦略計画よりも重要かなり前から経営戦略や事業戦略(あるいは競争戦略)の有効性への疑問が投げかけられています。この戦略の否定的捉え方にはもっともな側面もあれば、やや誤解に基づく(誤解を招きやすい?)側面もあると私は思っています。 もっともだと思うのは、戦略の有効性は比較的短時間で消滅してしまうという考えです。たしかに、競争戦略は相手との関係によ

フライホイールモデルとファネルモデル:顧客獲得と成長戦略の新たな進化

こんにちは。中産連コンサルタントの岡部です。 橋本主任コンサルタントが投稿した「ユーザー体験重視のビジネス潮流においてサプライヤー企業が考えておくべきこと」について、私も大変興味深く読みました。 特にエンターテイメント精神のところは、共感するところも多く、顧客と一緒に商品・製品を創り上げるということができたら、とてもやりがいもあるのだろうな、と考えさせらました。 企業のマーケティング担当者(営業担当者が兼ねているケースが多いかもしれませんが)がユーザー体験重視を実現しようと

既存事業に浸かりきった社員を新規事業の水に慣れさせる

今回は「カイゼンの得意な企業こそ、新規事業開発ワークショップのような活動を積極的に行って新規事業に目を向けた方がいい」という話をします。 新規事業には失敗は付きもの、そして非効率経験した人はわかると思いますし、経験がない人でも容易に想像できると思いますが、新規事業というのはそう簡単に成功するものではありません。試行錯誤の連続だといえます。そして、試行錯誤の結果、事業の立ち上げを断念することもあります。 「錯誤」という言葉が含まれていることからもわかるように、試行は必然的に

シナリオ・プランニングで社会課題解決の事業化を考える【後編】

【前編】では、都市化の問題を例に「社会課題という大きなテーマを事業化の対象にできそうな(扱いやすい)大きさの課題(=サブテーマ)に切り分けるプロセス」を見てきました。 【後半】では、シナリオ・プランニングを使って社会課題解決の事業化を検討する手順を見ていきます。 シナリオ・プランニングとはシナリオ・プランニングとは、将来に起こるかもしれないシナリオ(通常は複数のシナリオ)を描いて、そのシナリオに基づいて自社の戦略や状況への対策案を考える手法のことです。 1970年代初頭