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【開催レポート】ソーシャルデザインKATARI-BAR

こんにちは、山口県中小企業団体中央会です。私たち中央会は中小企業の連携を支援する団体です。
2023年2月、多くの方に「連携」について意識していただきたいという思いから連携について語り合うトークセッションを開催しました。今回は、その様子をレポートします!(一部改編しています)

イベント概要

◆テーマ:「ソーシャルデザインKATARI-BAR」~仲間を巻き込みビジネスの力で地域を面白く輝かせる~
◆日時:2023年2月2日(木)18:00~20:00
◆参加者:リアル参加(山口市Megriba)15名+オンライン(zoom)約70名
◆参加料:無料
◆主催:山口県中小企業団体中央会
◆登壇者:
株式会社hase 代表取締役 塩満 直弘氏
アウトドアスポーツやまぐち協同組合 理事長 三由 野氏
徳山コーヒーボーイ 取締役副社長 山本 統氏
やまぐちシードル 代表 原田 尚美氏
社会福祉法人岩国市社会福祉協議会 地域福祉課 課長補佐/由宇支部長 粟屋 浩氏
◆進行役:
和田 健資氏(割烹旅館寿美礼 代表取締役社長)
綿谷 孝司氏(合同会社アクト・スリー 代表)

イベントチラシなど詳細についてはこちらのnoteをご覧ください。

第一部 事例発表

はじめに、登壇者の中から代表して株式会社hase 代表取締役 塩満 直弘さんに「ruco・Agawaの取り組みとこれから」と題した事例を発表いただきました。

事例発表いただく塩満さん

山口県萩市で生まれ育った塩満さん。萩に居た当時は、対話ができたり思いを吐露し合えるような関係性を築くことができなかったそうです。しかしバックパッカーとして海外に出た際に、ふと立ち寄ったカフェで一気に壁を越えていくようなコミュニケーションを体験され、それまでの意識が変わった瞬間となったとのこと。
その原体験を経て、人々が集うための目的地を作りたい、コミュニケーションから派生して価値観を寄与し合えるような場所を作りたいという思いに至り、萩市にUターン後、2013年にゲストハウスrucoをオープンさせました。

その後2020年には、日本の原風景が広がる下関市豊北町にある無人駅・阿川にて、JR西日本と連携して飲食・物販・レンタサイクルを行う商業施設「Agawa」をオープンしました。空間デザインは、有名なTAKT PROJECTさんが担当。ここは、色々な境界線をいい意味でぼやかしながら一つの場として運営していく、公共性のある駅だからこそできる活用の仕方を塩満さんから提案し、実現した場所です。水田や街並みは何も意識に残らない場所ではあるけれど、そこに佇む理由を作れば、再び価値が生まれるのではないか。

「山口県に住んでいてよく耳にもするし自分自身感じるのは、何もないっ
ていう価値観で物事をすぐに縛ってしまい、色々な可能性みたいなものを押し殺している、そのように漂っている空気感みたいなものは僕自身すごく嫌で、そういう空気感に対して何か投げかけたいっていう思いが強くありまし た。それは今でもそうなんですけど、運営していくと難しくさもあるんですが、僕自身何かしらこういうことを社会であり自分の身の回りに対してやっ ていくってことが、自分にとって価値があることだなと思っております。」

Agawaの取り組みを経て、2022年には角島大橋から歩いて5分のところにある大正15年の牛舎を改装してカフェ「UTTAU」をオープンさせました。なるべく地域の素材を使いながらメニューを提供されていて、こちらの場所も、佇む理由を提供することで相乗効果を生み、新たな人の流れを生み出しています。

次なるステージとして、株式会社Backpackers Japanの取締役CCOに就任され、新しい価値観を提供している会社の一員となったことも紹介されました。

続いて、参加者の皆さんからの質問タイム。

質問:
想いを持って始めた事業がビジネスとして軌道に乗らず失敗に終わるという話をよく聞きますが、どう思われますか?

塩満さん:
僕の場合は萩のゲストハウスも運営していたのでそことうまくバランスを取りながらやっていましたが、それ以上に、「やる」ということに只々邁進しました。
例えば、利用者も便数もどんどん減る一方の過疎化が進む地方の駅は、いわば負の遺産。誰もが難しいと考えている。けれど、この「どうせダメだろう」みたいな空気感をいかに打破していくか。

「あなたのお困りごと解決しますよ」という説得や提案ではなく、「この案は絶対いいですよ!こういう景色(将来像)が描けないですか?」という熱量を持って対話を続けることで、そこに共感が生まれ、結果的に人を巻き込んでいけたのではと考えています。

質問:
場所をデザインしていく上で気を付けていることはありますか?

塩満さん:
本来ある景色に付け加える、いわゆる「映える」ような場所を作るのではなく、少し関われる、携われるような理由を整理できれば景観をも価値化できると考えています。
また、そこを運営していくにあたっては公平性を大事にしています。新規で来られる方に疎外感を与えてはいけないっていう意識はスタッフには共有していますね。

質問:
数あるプロジェクトの中で、やる/やらないはどこで線引きしていますか?

塩満さん:
地方創生、地域活性みたいな視点で囚われがちだけれど、本当に自分がそこでやりたいのかっていうのを何回も自分の中で反芻するようにしています。プロジェクトに対する動機を外的なものにあてがわないように意識はしています。

第二部 トークセッション

塩満さんへの質問タイムの流れから、そのまま第二部のトークセッションへ突入。
トークセッションテーマ
ソーシャルデザインKATARI-BAR(語り場)
仲間を巻き込みビジネスの力で地域を面白く輝かせる

会場の進行役は、下関市で旅館業を営み様々な観光プロジェクトに携わる和田健資さんに、オンラインの方へのフォローは岩国市でデザイン事務所を営む綿谷孝司さんにお願いしました。
まずは塩満さん以外の登壇者の皆様に、投影資料をもとに自己紹介をいただきました。(資料は本レポートの下部にPDFを掲載しています。ぜひダウンロードしてご覧ください。)

ここでは一言で皆様をご紹介します。

山本さん(徳山コーヒーボーイ 取締役副社長 山本 統氏)
現在はコーヒーボーイで勤務する傍ら、奥様の飲食店舗運営をサポート。働き方を柔軟に変化し続けている。旅とコーヒー好き。

三由さん(アウトドアスポーツやまぐち協同組合 理事長 三由 野氏)
ボルダリング、スラックラインのプロ。現在、仲間と共に子供向けプレイパーク「ハダシランド」を県内各地で運営し、自治体や企業から注目を浴びている。

原田さん(やまぐちシードル 代表 原田 尚美氏)
「徳佐りんご」を使ったスパークリングワイン「やまぐちシードル」を開発したほか、同地域を盛り上げたい女性グループの代表も務める。元地域おこし協力隊。総務省「ふるさとづくり大賞」を受賞。

粟屋さん(社会福祉法人岩国市社会福祉協議会 地域福祉課 課長補佐/由宇支部長 粟屋 浩氏)
地域の様々な課題を解決するために、地域住民、企業、行政をつなぎ、新たな取り組みを生み出していくクリエイティブな仕事を実践中。

登壇者の皆さん(右から)塩満さん、山本さん、三由さん、原田さん、粟屋さん

質問:
山口県で事業をする上でのコツはありますか?

塩満さん:
視点を変えて、事業の本質的な価値って何だろうと思いながら物事を見るようには意識しています。
山本さん:
例えば地域のお祭りに参加すれば、1日で地域に溶け込むことができる。そういった行事をシステムとして見るのがコツかなと思います。
三由さん:
僕は毎日、血反吐を吐いて頑張っています(笑)自分のやっていることをブレさせないこと。ここが田舎だと認め、東京に頼らず、地元の人に頼って地元の人で完結させることが大切。
原田さん:
イベント企画を行う際、誰も来ないかもしれない、失敗するかもしれないとやる前から悩むのではなく、まずはやってみること。そこから学ぶことが大切です。
粟屋さん:
地域を見渡してみると、すごい人がたくさんいます。いろんな人と出会い、自らがつながり、人と人をつなげていくと、面白いことが起きたりします。自分にできない=自分の不得意は、誰かの得意だということを意識して、頼ることがコツなのでは。

和田さん(進行役):
皆さんに共通しているのは、ブレずにやる、っていうところですね。そして、これまで個性が大切にされてた時代から、今はもう共感共有の時代になってきていると思います。仲間と一緒に連携して事業を行っているというところが今日のテーマにも繋がってきますね。

質問:
困ったときに思い出す言葉や好きな音楽、映画等はありますか?

塩満さん:
20代前半、萩に帰ってきたころに、「君はお金を稼ごうとか人を呼ぼうとかそういうことをまず考えない方がいいよ。それよりも先に、まず君自身が楽しんでいるかどうかが絶対に大事で、そうしていれば結果的にそれ(お金や集客)は繋がってくるから、その前提を履き違えちゃいけないよ」と言われた言葉。
山本さん
時間イコール命。今この瞬間は、僕にとって意味のある時間なのかという問いかけを大切にしています。
三由さん:
「あなた一人がいいと思うことは全世界で見れば1000人仲間がいる共感者は必ずいる。それがアカウント数であり資金調達の基本になる考え方だよ」と言われた言葉。
原田さん:
地域おこし協力隊として活動していた頃はどうしても地域のためとか活性化・賑わいを考えていましたが、今は「本当にそれがワクワクすることなのか」を判断材料にしています。
粟屋さん:
努力に勝る天才なし。
つらい時、壁にぶつかった時、自分が努力できる源泉になっている言葉です。

和田さん(進行役):
皆さん、気持ちが前を向いていますね!

会場参加者からも積極的に質問がありました

質問:
今からやりたいプロジェクトで、こういう仲間と面白く広げて行きたい等の構想はありますか?

山本さん:
光市の室積エリアに国立公園があり、原生林が残っている遊歩道があるのですが、そこを整備していきたいな、ネイチャーガイドなんかの観光もやりたいな、と思っています。賛同してくれる人達がいれば一緒に、それこそ組合でかもしれないですし、「場づくり」をやりたいなと思っています。
塩満さん:
空港はずっと前から関わりたいなと思っていて、案内所というか、何かを促していくような場所にできないかなと思っています。
三由さん:
事例で紹介したハダシランドは、理念を同じくする仲間、裸足というキーワードで繋がった仲間と一緒に「アウトドアスポーツやまぐち協同組合」という法人組織を組んで実施しています。自分にない魅力を持つ仲間と一緒に活動することで、より実現性が加速しています。例えば個人では行政に相手にされなかったけれど、組合で取り組むことで話を聞いてもらえ、協力体制が築けました。

和田さん(進行役):
組合というと古いイメージがありますが、今の時代に合った共感ビジネスをするための組織としては合っていますね。組合は共感・平等性を考えながら一緒に活動(仲間づくり)ができる組織で、法人格を持てる手段なのですね。

会場の様子

質問:
登壇者同士で一緒に携わって、連携できそうなことはありますか?

原田さん:
伊丹空港だったと思うんですけど、空港にブドウも植えられていて醸造所もあって飛行機を見ながらワインが飲めるんです。(塩満さんとコラボして)リンゴの木を植えて醸造するお酒が飲めるといいなって、妄想ですけど思いますね。

質問:
学生と繋がって取り組んでいることはありますか?

三由さん:
僕が東京から山口に越してきて最初にできた友達は小学4年生の無口な少年でした。今は大学で社交的になり彼女もいてアルバイトもしています。社会にはじかれて出来ないというレッテルを貼られているような子供たちは環境がそうさせているのであって、きちんと選択肢を与えてあげて活躍の場があれば得意が伸びて社会に馴染んで人から必要とされる人材になると信じています。このことは、僕のプラットフォームを使って大学が研究(行動心理学)をしているところです。
子供たちが概念形成をする上で、今は多くの制限や閉塞感があり地域の大人との接点がない。原体験がないから、自分のふるさとに対する愛着を失わせているのではないか。
子供たちに目一杯の体験をさせていると、勝手に子供は巣立っていく。大人は見送るだけ。地元の大人がかっこいい姿を見せていれば、子供たちはいつかのタイミングでまた地元に戻ってくるんじゃないか、これが背中を見せて育てるってことだと思います。
粟屋さん:
本業が地域の活動やボランティア活動なので、子どもたちが参加する機会はたくさんあります。中には内申書を良くするためにボランティアしたいっていう子もいたりするんですけど、私は全然良いと思っていて。不純な動機でもいいから、まずはやってみる。もしかすると、そこでボランティアに目覚めるかもしれない。そこから地域の活動に積極的に参加していくような大人になってくれれば、全然ありですよね。
「子どもたちが帰りたいと思える里山をつくる」という想いで活動している集落があります。そのために必要なことは、自分たちが輝いていることだと話されています。東京に行きたいという子どもたちの気持ちもわかるから、一度行ってみて、自分には故郷が良かったんだって気づいた時に、故郷の大人たちの顔が輝いていなければ帰りたいとは思えないのではないでしょうか。

和田さん(進行役):
学ぶ、知識を教えるというところから次の展開・次の発想をすることで、山口県の人口流出を防げるという可能性がありそうですね。
実際、山口を出ないと分からない、海外経験をしないと分からないと言う人がいる一方で、学校現場では地元で就職しろよという先生もいます。ここで次の質問です。

質問:
地域活性や地方創生は、地域外に出た経験がないとできないものですか?また、地域活性や地方創生にはゴールがあったりビジネスだと思いますか?

塩満さん:
僕自身が駅に着目したのは、世界で旅する中で各地の駅を利用したときにそこの地域性を感じることが多く、それは例えば働く人や利用する人、販売している物ですが、それが一つの資源や旅する価値になっているのではと感じていて。これは出たからこそ得た価値観と言えますね。
山本さん:
(光市室積で奥さんと運営する店舗について)2年やってきて、一応ビジネスとしては成り立ちます。ただし色々な条件が当てはまってこそ。地域活性や地方創生はビジネスだと思う。
原田さん:
地域って実態がないもので、そこにいる人たちが作っているものなので、その人たちが楽しく暮らし続けているというのがゴールなのでは。楽しく暮らすためにビジネスとして回し続けていくっていうのは大事かな。
粟屋さん:
地域の課題は、一つ解決したとしても、また次の課題が生まれてくるので、ゴールはないと思っています。地域外の経験は、自分自身が人生の中で何をしたいかによって変わります。夢を実現するために、外の経験が必要なら行くべき。地域の活性化で私が今意識しているのは活動人口です。人口が減少したとしても、地域の活動に参加する人たちが増えれば、それだけ元気な地域になると思います。

和田さん(進行役):
地方で事業を行うには、周りの皆さんと一緒に巻き込んでやっていくほうが絶対に楽しいですし面白いですね。その経験をされている方が、山口県にもこれだけいらっしゃるということが今日わかりました。

本日は背中を押されるような良いお話がたくさんありました。今回のトークセッションはこれで終了しますが、今日をきっかけに皆様同士で繋がっていただければと思います。ご参加いただき誠にありがとうございました。

登壇者と進行役の皆さん

イベントレポートは以上です。
当日の登壇者の皆様の資料はこちらからダウンロードの上ご覧いただけます。

今回ご登壇頂いた三由さんが理事長となって活動されている「アウトドアスポーツやまぐち協同組合」の皆様へのインタビューを動画にしました。
なぜ、事業協同組合をつくったの?
どんなメリットがあったの?などにお答えいただいています。
ぜひご視聴ください!

組合へのインタビュー記事はこちら。

組合制度について知りたい方は、中央会までご相談ください。ご相談はお気軽に!

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