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時を越えた瞬間の記録【サンティアゴ・デ・コンポステラ】

2017.09.27 Espagne, Santiago de Compostela

長かったようで短かったサンティアゴ・デ・コンポステラ巡礼36日目に目撃したのは、美しい夕日が西に沈む下り坂だった。最初に歩き始めた800km手前の、フランス・ピレネー山脈の小さな集落でこの場所に到達できるか不安で怯えながら朝を迎えた日が昨日のことのように思い出される。この旅は結局一体何だったんだろう、どのように総括すれば良いのだろう。ずっと何もかもが夢を見ていた感覚だ。素敵な夢だったな、自分の限界を知るための夢であり旅だった。まだまだやれる、とも思った。このまま歩き続けられるとも。それでも目標地点には到着したのだから今日のところは一区切りにしておこう。

夕日、光が道を照らす。「勝利の光だね」と友は呟く。これはわたしたちを祝う光なのだと。

やわらかな秋の青空は煌々と輝く橙色をしっかりと押さえ込むように、重くのしかかる。空はいつも通りの代わり映えのない暗闇の訪れを待つ。それでも今、この瞬間の光景を目にするわたしは初めてのスペインの街で、自分の足で成し遂げるという人生の中での唯一無二の巡礼体験をして、二度と繰り返されることのない風を感じて友と共に時間を過ごし、道端に立ちすくんでいる。石畳に反射する光の筋は「お前にはまだ行くべき道があるだろう」と言葉に出さずに訴えかける、環境が示唆する。だからわたしは観念する。まだやれる、一瞬でもよぎった思いは当然、自然にお見通しなのだ。

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