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時を越えた瞬間の記録【ニュルンベルク】

2017.12.24 Allemagne, Nürnberg

ビール7本、スパークリングワイン1本、白ワイン1本。12月24日16時過ぎのニュルンベルク駅で、数週間ぶりに再会する仲間と合流するやいなや駅の売店で「お店が閉まる前にはやく調達しないと」「買えるだけ買い込んで」そういって慌ててお酒を買い占めた。いったい我々は何に焦っているのか、どれほど重症アルコール中毒患者なのか。はたから見ると不思議なアジア人3人組だったにちがいない。わたしは見ず知らずの土地、馴染みの顔と出会うことへの高揚感のせいでどこか浮き足立っている。にこにこと嬉しさをあふれんばかりにばらまく姿は周囲のひとも不思議がっただろう。それもこれも全部、気恥ずかしさをごまかすための笑顔である。

「どうか驚かないでください、クリスマスマーケットは今日の14時に終了してしまいました」。本場ドイツのマーケットを楽しむためにと計画したクリスマスイブの予定。まさか最終日で早めに終了するという想定外の事実を受け取ったのは、ニュルンベルクに向かう移動中の車内である。商店が閉まっているからには何もできない、仕方がない。それならほかに楽しめることをせねば、と情報を調べるものの日曜営業のレストランも本日は閉店しているようだ。うかつだった、それがヨーロッパだった。

中身もよくわからずに注文した売店の適当なソーセージと、重たい酒瓶たちを両手に抱えてホテルへ。簡素で匿名性の高いビジネスホテル。窓から見える景色はわずかなもので、灰色の空、駅に続く線路、雨に打たれ疲れ切ったビル、無機質なホテル、目を引く色合いの企業ロゴマーク。情緒の片鱗を見出すにも難しい外側の景色と、内側にいるいつもの仲間。

約1万キロ離れた先にある国の、我々が存在しない時代に誕生した曲、ユーミンの「恋人はサンタクロース」をスマートフォンから流し、歌い、踊りながら夜が更けていく。笑い過ぎのせいか腹筋がきゅうと絞られて顔の表情筋もひきつるほどに使い果たした。それでも楽しさだけは、何ひとつ疲弊することなく底を尽きない。ニュルンベルクの狭いビジネスホテルにてクリスマスイブ、祝祭の喜びは部屋の隅々までみっちりと埋めていく。

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