#11 読書メモ:『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』

おはようございます、ちゅるぱんです。

昨日、ひらたえりこさん主催の読書会にオンラインで参加してきました。
今回のテーマは「積読本で’今’の仕事(育児)をさらに楽しく‼」

というわけで、今回の読書会では、現在、小売業界において注目されている"D2C"に関する本を選びました。今回は読む前に自分で立てた問い&読書会参加者の皆さんからいただいた問いに答える形でまとめていきたいと思います。 

1) D2Cとは?

D2Cとは、Direct to Consumer(直販)を指す。 

AmazonをはじめとするEコマースが生活に浸透する中で、伝統的な小売店舗は瀕死の危機にあり、2015年頃から「リテール・アポカリプス(小売の終焉)」という言葉がメディアを賑わせるようになっている中、小売業界の衰退の横目に、GUCCIやPRADAなどの高級ブティックが並ぶニューヨークのソーホー地区にリアル店舗を開店しているのが、D2Cブランドだ。日本でも、D2Cという言葉は、2018年以降メディアを賑わせているらしい。

D2Cの辞書的な定義は、以下のようなものだ。

新しい消費の価値観を持つミレニアル世代以下のターゲットに対し、ユニークな世界観を下敷きにたプロダクトとカスタマーエクスペリエンス、SNSや店舗を通じた顧客とのダイレクトな対話垂直統合したサプライチェーンを武器に、VCから資金調達を行い、短期間に急成長を目指すデジタル&データドリブンなライフスタイルブランド

個人的な理解では、これまでテクノロジーが浸透していなかった小売業界にテクノロジーやデータを活用し、しかしながらアマゾンのような形でのデジタル的関わりではなく、デジタルではあるけれども、人に寄り添った丁寧な対応やメッセージを送ることで顧客と直接デジタル&リアルで対話をし、自分たちの世界観を伝え、良いプロダクトと体験を同時に与えているブランド、と認識している。

D2Cのポイントは以下の通り。

1)「ものづくり屋」ではなく「テック企業」
2)「間接販売」ではなく「直接販売」
3)「高価格化」ではなく「低価格化」を志向
4)「着実な成長」ではなく「指数関数的成長」を遂げる
5)「プロダクト」ではなく「ライフスタイル」を売る
6)「X世代以上」ではなく「ミレニアル世代以下」をターゲット

D2Cは以下の点で不可逆の変化をもたらしている。

・顧客との関係
・ものづくりのプロセス
・ブランディング人材・組織
・プロダクトの売り方

その他、D2C企業の特徴

・シリコンバレーのスタートアップに見られるような、カリスマ的リーダーによる企業ではなく、4-5名のチームで創業をしている。

2) D2Cの具体的な成功事例は?

① Warby Parker (2010年 NYにて創業)
 ・おしゃれな様々なメガネのラインアップを展開
 ・アメリカの作家ジャック・ケルアックの世界観を表したリアル店舗。
  キーワードは文学・本・図書館と言う世界観を作る
 ・オンラインショップにも関わらず、5日間試着可能。
 ・試着手続きによる工数の多さをタッチポイントの多さと捉え、
   ポジティブかつ丁寧に、顧客に寄り添うコミュニケーション
 ・創業直後には、ニューヨーク公共図書館でゲリラ・マーケティングを
  実施。図書館でWarby Parkerの眼鏡をかけたモデルたちが登場!

Everlane (2011年サンフランシスコにて創業)
 ・デザイン性があり、高品質な衣服・ファッション雑貨を手頃な価格で消費者に届けることを目標としオンラインからスタート
 ・過激なまでの透明性(Radical Transparency)でそのプロダクトの素材、人件費、輸送費、工場の場所、様子などを公開
 ・徹底した環境配慮

D2Cは世界観を通じプロダクトをコンテンツ化し、ブランドをメディア化している。インターネットやSNSの登場で、表現をするための”枠”は実質的に「無限」になった。これからのブランドにはある種の「奥行き」や「深み」が求められていく。創業ストーリー、製品の生産工程、実現したいライフスタイル、ロイヤルカスタマーのエピソードなどを、SNSなどを使いながら、顧客に提供していく。これからのブランドには、無機質な情報を一方的に流すのではなく、重層的かつ奥行きのあるコミュニケーションが求められていく。

D2Cは消費者の立場からだとどんな利点があるか?

・店舗へ行かなくても、インターネット環境があればいつでもどこでも買える(試着までも自宅でできる)
・お店に行きたくなったらリアル店舗もあり、リアル店舗は世界観を芸術的に表しており、没入感がある。特別な経験をした感じが得られる。
・自分の声を製品開発に反映してもらえる
・データにより自分の趣味嗜好に合った製品を進めてもらえる
・ブランド、会社の”顧客”と言うよりも、社員に近い存在であり、その成長を共に感じることができる。

日本でもこのD2Cの成功モデルは当てはまるか?

結論から言うと、米国でのD2C成功モデルをそのまま当てはめても成功しない。理由は、2つ。1点目は、アメリカのミレニアム世代はリーマンショック後の就職難や失業を経験しており、懐事情が日本のミレニアム世代より厳しいと言うこと。2点目は日本では長年のデフレの影響で米国よりも「安くていいもの」が溢れているから。したがって、アメリカの成功モデルをそのまま日本市場に取り込むことはできない。アメリカのD2Cブランドとは異なる価格戦略・ブランディングが必要。

デジタルでフィジカルな価値を実現させる方法とは?

これは、本書に記載されている「優しいデジタル」3つの条件に当てはまるかと思う。

1. データの適切なフィードバック
  顧客からえたデータを元に、サービスの質が上がっていることが、顧客に知覚されていること。データがどのようにサービスに生かされているのかをすぐに顧客側にフィードバックすること。

2. 時間・場所の制約からの解放
 サービス上でチャットをするだけで、顧客はいつでもどこでも社内チームとやりとりができる。

3.コラボレーションの感覚を生む
 積極的に顧客の声を集め、感謝やフィードバックを伝えて丁寧にコミュニケーションする。顧客が「自分の意見が考慮されている」と感じ、企業とともに商品を開発している感覚を持つことができる

個人的には、以下のような事例も参考になると思う。

・例えば、Warby Parkerのように、オンラインで商品を見ながらも、実際に商品を5日間試着することができるサービスを提供する。そして、試着の商品が戻ってくるまでの間に、顧客に対して、装着感はどうか?など顧客に寄り添った言葉を使ってメールをする。
・デジタルなデータがあれば、その顧客が購入してからどのくらい経過したか、商品がそろそろ経年変化したなどが自動的に追える。そのタイミングは機械にやってもらうとして、その後のフオローのメールは、手書き感のある絵や一人一人に寄り添ったセールスでない文章で「その後の製品の調子はどうですか?」と連絡を取り、コミュニケーションをとる。
・美しい写真や動画をInstagramやホームページでかっこよく見せる?

小売業界はアフターコロナ、どうなるか?

今後の小売業界は、デジタル化が避けられない中でデジタル化とブランドのメディア化がますます進むだろう。具体的には、YoutubeやInstagramのライブ配信などはもはや普通になってくるかもしれない。そうした中で、いかに店舗や社員全員が美しい言葉でメッセージを発信し、自らがもつ情報を編集できるかが大事になってくる。

また、小売業界の枠を超えた新規事業を考えるなどをしたほうがいいかもしれない。

私個人としては、小売はここの人間に直接届けられると言うものすごいパワーを持っているものだと思っており、その機能をリアルとデジタル、多方面にわたり発揮をする必要があると思う。そして、店舗はより「●●を経験したい」「●●さんに会いたい/話したい」「●●を体験したい」「●●な空間に行ってみたい」と行ったプロダクト以外のものに目的性をもたれるものになるのではないかと思う。

それを考えると、店舗に立つもの、小売の会社に属する人間は、自分が美しいと思うもの、自分の哲学、価値観を磨き、人間として磨いていく必要がある。

マス、で成り立ってきた企業はどう転換したらよいか?

大手ブランドがD2C化するには、様々な障壁があるが、転換するには、以下のことについて検討すると良さそうだ。

・マインドセットの変革
  →そもそも、何を目的としてビジネスをしているのか?を考える
  →メーカーでなく、テック企業でありメディア企業であると言う認識
・エンジニアリングの重視
・ストーリーテリングの管理
  →コンテンツディレクターのような職種を設ける
・ビジネスモデルの再構築
・人事評価の再設計
 →デジタルチームとリアル店舗でのシームレスな顧客体験を実現し、一人一人のLTV(顧客生涯価値)をどう最大化していくか?と言う観点が必要
・製品開発/改善プロセスのオープン化
 
→顧客とのダイレクトな対話

D2Cの方向性はつづくのでしょうか?

どの業界においても、デジタル化は避けられない。もはや、「いつデジタル化へ移行するのか」というタイミングの問題になっている。アメリカでは、NikeやTargetといった会社もD2C化へ変貌をしてきている。これから小売が生き残っていくためには、D2C化の方向性は避けて通れない。そう言う意味で、今のコロナは小売だけでなく、全ての業界において、デジタル化を後押しする良い機会になっていると言える。

感じたこと

小売業においてもデジタル化が進む中で、私が働いている企業も今まさにデジタル化、ブランドのメディア化に挑戦しようとしている。D2Cのブランドのホームページは確かにかっこいいし、アートだ。だから、ミレニアル世代以下にはヒットしているのかもしれない。それでも、やはりリアルな人のつながりというのはとても大事だし、ネットには変えがたいインパクトや粘着性、そして安心感があると思う。私が働いている会社は、デジタル化に挑戦をしているところだが、デジタルの良いところを受け入れつつ、自分も順応しつつも、人の温かみ、リアルさのあるコミュニケーションというのは、デジタルが発展するからこそ、さらに大事になってくるのではないかと感じている。だから、このD2Cの企業にある良い部分と、会社の良い部分をうまく掛け算しながら、アイデアを小さくてもいいから出して、小さくてもいいから自分自身も試していく必要があると感じた。

今後実践したいアクション

・今私が所属する会社もデジタルシフトを始めているが、どこまでできているのか、その前提を確認する。
・D2Cのいいところと、自社のいいところを掛け合わせた何かアイデアを考える。
・自分のセンスを磨く(写真、服のコーディネート、文章、言葉、映画、アート)

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