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「絶対イヤ」と思っていたテレアポが楽にできるようになった話

われわれが情念から解放されるのは思考のはたらきによってではない。むしろからだの運動がわれわれを開放するのだ。(『幸福論』アラン 岩波文庫p64)

イヤなことに対処しようとするとき、人は心の問題や技術の問題だと考えて対処してしまいがちだ。しかし私は「身体」が本来持っている力を使って対処した。最初に掲載した引用にあるように、「イヤだ」という感覚を変えてしまうには、「からだの運動」の力を使うことが肝要だ。

しかし、「からだの運動」と言っても、テレアポをしながら立ち上がってラジオ体操をするとか、そういう話ではない。私が使った方法は至ってカンタン。かつ、同僚から変な目で見られることもない。非常に動きの少ない、はたから見ても自然に見えるものだ。

その方法は、「受話器を持っていない方の手を下腹部に当てる」というものだ。そうすることで、自然と心が落ち着いてきて、余裕を持ってテレアポができるようになった。

この詳細は追って。ここからは、少し私の経験談にお付き合いいただきたい。

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正直言って、社会に出る前は、知らない人に電話して図々しくも商品を売りつけるために勝手な話を展開するなんてことは、「絶対にやりたくない」と思っていた。

というのも、子どもの頃には、家に掛かってきた営業の電話に対して、母親が露骨に嫌な顔をして断るのを見ていたからだ。

そもそも自分自身「電話」があまり得意ではなかった。プルルル・・・という呼び出し音を聞くと、どうにも緊張してしまい、また緊張していることに気づいて余計に緊張するという負のスパイラルに乗って心が急降下してしまう。

しかし、そんなことを言っていても、会社でその仕事を割り当てられたら、やらなければならない。

ということでテレアポをやるのだが、まぁ~嫌で嫌で仕方なかった。私の会社はBtoBの会社なので、まず受付の方とお話をして、担当の方につないでいただかないといけない。

電話を掛けて、受付の方が「少々お待ちください」と言って保留音が流れる。そのときに私が思っていたことは「担当者出るな、担当者出るな・・・」ということだった(冷静に振り返ると笑えますわ)。

そして保留音が切れ、「ただいま担当の者は会議に出ておりまして」と受付の方の声がすると、内心「よかった~」と思いながら「それではまた改めてご連絡いたします~♪」と電話を切ったものだった。

担当者が出たら出たで、ものすごい緊張して早口になるし、一件話し終わっただけでわきの下からは汗がだくだくと流れ出た。アポを取れたとしても、電話を切ったときに「はぁ~」と大きなため息をつかなければならないほど、電話で人と話すことが苦手だった。

このときの私の状態を分析すると、いわゆる「あがる」という状態になっていることがわかる。

この「あがる」というのは緊張している状態を表している言葉だ。

ただ、いったい「何が」あがるのか、それを考えたことはあるだろうか?

理解の手がかりとして、「あがる」とは逆の状態を考えてみよう。緊張したときに「あがる」のであれば、緊張していない自然体のときには、その何かは「下がって」いるはずだ。では、自然体のときには下にあって、緊張したときには上にあがってくるもの、それを考えれば答えはわかる。

とは言っても、このような考え方に馴染みのない人もいるだろうから、さっさと答えを言ってしまおう。緊張した時にあがるもの、それは「氣」だ。

「氣」というと、何か不可思議なもの、特別な人が持っているもの、時にはとても怪しいものと捉えている方が多いですが、そうではありません。氣は生命力の根幹であり、誰でも持っていて、誰でも活用できるものです。(『動じない。』 王貞治 広岡達朗 藤平信一 幻冬舎 p127)

この引用で示している「生命力の根幹」、それが氣だ(ちなみに王貞治氏は合気道10段の先生から氣の使い方を学んだことで、そこからホームランを連発しはじめた)。

氣でわかりにくければ、意識だったり、心だったり、感覚だったり、そういうものだと思ってもらっても大丈夫。

この氣というものは、本来の状態であれば下腹部の位置にあるのが自然である。しかし大半の人は、緊張すると氣が下腹部から胸や頭にあがってきてしまう。そうすると、落ち着きを欠いてミスをしたり、ミスをしないまでも、人間本来の状態ではなくなってしまうため、異常に疲れてしまったりする。

私もその状態だったのだが、たくさん電話を掛けているうちに、ほんの少しだけだが余裕が出てきた。そこで、自分があがっていることに気がつき、「よし、ここはひとつ氣がハラ(下腹部のこと)に落ち着いていられるように、ハラに手をあててテレアポをしてみよう」と思い、やってみた。

左手に受話器を持ち、右手はフリーにしておく。電話を掛け、コール音が鳴っているときにはもう、ハラに手を置いておく。ときには気持ちよく、優しくさする。受付の方につながったときもそのまま。担当の方につないでいただけるようやりとりをして、プルルル、保留音がなる・・・。

さあ、緊張の一瞬である。しかし、ハラに手を置いているおかげで、緊張はしているのだが、その状態を余裕を持って把握できる。緊張していることが、どこか他人事になる。自分の状態を把握できると、さらに落ち着いてくる。この良循環に入った。よし!

保留音が止んだ。出たのは担当の方である。通常であればここで緊張はマックスに。早口になると同時に自信がなくなり、「あぁ、早く断ってくれないかな」と思うところだが、ハラに手を置き、丹田に氣が漲っている私は一味違う。落ち着いて伝えるべきことを伝え、相手の反応も伺いながら、相手に合わせて言葉を選ぶ余裕もある。

「・・・じゃあ、話聞いてみようかな」。担当の方がそう言った。きた!ここで私はアポの日程の調整をする。ここまで来てはじめて、私の右手はハラを離れ、パソコンを操作し、グーグルカレンダーで空いている日時を確認する。しかし、ハラには触れていた感覚が残っているから、氣はあがらずに下腹部に残っている・・・。

これは、私がテレアポのときに実践した方法そのまんま、実話だ。お金もかからないので、あなたがテレアポが苦手なら、ぜひ試してみてほしい。

・・・さて、世の中には、緊張を和らげるために薬に頼る人もいる。私もそう言う人を見てきた。

しかし、薬に頼ると、まずお金がかかる。それに、薬に頼ることで身体が本来持っている機能が弱まり、それが将来の不健康につながるという話も聞く。うつ病に対して処方されるセロトニン阻害薬などは、まさにその例だ。

もちろん、薬に頼ることは否定しないし、症状の強さも人それぞれだから、どうしても必要な人は使った方がいいだろう。

ただ、なるべく「自然に」物事を解決したい人、あるいは人間が持っている無限の可能性を開いてみたい人、そんな人は、この「下腹部をさする」方法を試してみてほしい。

本日もお読みいただきありがとうございました。

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