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【中国山地の歴史⑫】2050年の中山間地域

 こんにちは、中国山地の歴史を調べる人、宍戸です。
 今回は、日本の人口減少について、データを使って書いてみたいと思います。一見、歴史とは関係が薄い内容に見えますが、2050年から見たら現在は歴史になっているし、ここまでに至る経緯も私は大きく歴史が関わっていると思っています(これについては次回以降の記事で触れたいと思います)。
 昨年2023年12月22日に、国立社会保障・人口問題研究所が日本の将来推計人口を更新し、日本の人口減少が改めて話題となりました(参考:NHK)。
 報道では、総人口の推移を中心に扱われ、東京以外すべての道府県で人口が減少し、東京一極集中が更に進むという結論になっています。これは間違ってはいないのですが、これだけで終わってしまうと、議論として解像度が低いのではないかと思っています。
 そこで、より解像度の高いデータを提示することで、より深みのある議論のための素材を提供したいと思います。

1.大都市も人口減少とは無縁ではいられない

 総人口だけで見てしまうと、大都市は人口減少と無縁であるかのように見えなくもありません。しかし実際には大きな影響を受けています。
 東京は、都道府県で唯一、2020年より2050年の方が人口が多いと推計されていますが、東京の人口のピークは2040年の14,507千人で、2050年時点では既に人口減少が始まっています。
 また、高齢化も急速に進みます。2020年の65歳以上の人口を100として、2050年にどのように変化するか示したのが下の図です。

2020年の高齢者数を100とした場合の、2050年の増加率
(国立社会保障・人口問題研究所データをもとに筆者作成)

 図を見ると、次の30年で65歳以上の人口が増えるのは主に都市であり、特に都市の規模が大きくなるほど増加率も高くなることがわかります。65歳以上の人口増加率が最も高いのは東京都中央区で、現在の約2.18倍になると推計されています。なぜこうなるとかと言えば、身も蓋もない理由ですが「現在の65歳以上の人口割合が低いから」です。
 一方で、色がついていない地域はと言うと、高齢者が減る地域です。もっと言うと、高齢者になる人も少ない地域という言い方もできるかもしれません。
 簡単にまとめると、東京はこれからの30年間で人口の規模はおおむね維持できますが、高齢化とは無縁ではいられないと言えます。

2.中国地方と九州地方は高齢化率の上昇が緩やか

2020年から2050年にかけての65歳以上割合の変化(都道府県別)
(国立社会保障・人口問題研究所データをもとに筆者作成)
2020年から2050年にかけての65歳以上割合の変化(市区町村別)
(国立社会保障・人口問題研究所データをもとに筆者作成)
※政令指定都市は区別にしました

 上の図は、2020年から2050年にかけて、65歳以上の人口割合(高齢化率)がどのように変化するかを都道府県別と市区町村別で示しています。つまり、2020年と2050年の割合を比較して、何ポイント変化したかということです。
 まず都道府県別の図に注目すると、東京は、これからの30年間において6.83ポイント増加すると推計され、日本の中では高齢化率が上がりにくい地域に入ります。しかし、それよりも注目したいのは、東京かそれ以外かという構図ではなく、地方の間の差が非常に大きく、東高西低になっているということです。つまり西日本、とりわけ中国地方と九州地方は高齢化率が上がりにくく、中でも島根県は、5.51ポイントの増加にとどまるなど、日本で最も高齢化率が上がらないと予想されています。この理由は主に2つ考えられ、1つは現時点で既に65歳以上の人口割合が高いことです。しかし、これだけでは例外もあるため全てを説明することはできません。もう1つの理由としては合計特殊出生率が高いことがあり、この2つの理由が複合しているためと考えられます。これについては今回の記事ではこれ以上検討せず、次回以降に深掘りしたいと思います。
 さらに解像度を上げ市区町村別の図に注目すると、都道府県別の図と同じく東高西低傾向が確認されますが、興味深いことに、特に中山間地域や離島を中心に65歳以上の人口割合が減少している自治体がいくつかあります。

3.中山間地域と離島を中心に69自治体は若年者比率が増加

2020年から2050年にかけての0歳から14歳の割合の変化(市区町村別)
(国立社会保障・人口問題研究所データをもとに筆者作成)

 そこで今度は逆に、2020年から2050年にかけて、0歳から14歳の割合(若年者比率)がどう変化するかを示してみます。この場合は西高東低になり、西日本の方が、0歳から14歳の割合が減りにくいという傾向です。さらに、中山間地域や離島を中心に、0歳から14歳の割合がむしろ増加する自治体が散見されます。

2020年から2050年にかけて0歳から14歳の割合が増加する市区町村
(国立社会保障・人口問題研究所データをもとに筆者作成)
2020年から2050年にかけて0歳から14歳の割合が増加する市区町村(中国地方)
(国立社会保障・人口問題研究所データをもとに筆者作成)

 わかりやすくするために、2020年から2050年にかけて、0歳から14歳の割合が増加すると推計されている自治体だけに色をつけてみました。日本全体で、2020年より2050年の方が0歳から14歳の割合が高いと推計されている自治体は69ありました。
 都道府県内の市区町村数でみて、0歳から14歳の割合が増加すると推計されている自治体が最も多いのは島根県で、全19市町村のうち5町村が増加すると推計されているため、約26%ということになります。島根県でみると、特に隠岐にある島前3町村が全て増加すると推計されていることが大きく貢献していますが、中国山地全体でみても、増加すると推計されている自治体が散見されます。
 ただし注意したいのは、これは人口比でみて0歳から14歳の割合が増加するということで、0歳から14歳の人口が実数で増えるという意味ではありません。つまり、総人口の減少率より、0歳から14歳人口の減少率の方が低いため、0歳から14歳の割合が増加するということです。
 これを非常に単純化して言うと、人口減少は終わっていないが、高齢化は終わった可能性があるということです。

 ここまで、総人口だけで議論を終わらせないために、国立社会保障・人口問題研究所のデータを使って、主に年齢の割合に注目してデータを紹介してきました。
 長くなるので今回の記事はこれで終わりとし、続きは次回以降の記事で書きたいと思います。未来の人口について語ることは一見、歴史とは無関係に見えるかもしれません。しかし、年齢の割合が地方間で大きく異なることなどをより深く理解するためには、歴史や民俗の視点が欠かせないと思っています。それではまた~!

※なお、2050年の人口はあくまで推計値ですので、必ずそうなるというわけではないということは、ご注意ください。今後、社会に大きな変化があれば、推計人口も大きく変わります。例えば、推計の概要を見ると、人口移動に関しては原則として、2005~2010年、2010~2015年、2015~2020年の 3 期間に観察された地域別の平均的な人口移動傾向が2045~2050年まで継続すると仮定したと記載されています。つまり、2005~2020年に地域づくりに力を入れるなどで移住者が増えていると、その傾向が推計に反映されますし、その影響は総人口の少ない自治体(つまり分母が少ない自治体)ほど顕著に表れます。





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