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イーロン・マスク TED Apr-2022 Giga-Texas Interview 意訳 Full


CA…クリス・アンダーソン TED主催
EM…イーロン・マスク 連続起業家

再生可能エネルギー社会

CA いかがでしょう?10, 20, 30年後といった未来に我々が思いを馳せることに手を貸してくれませんか?そしてワクワクする未来を作るためにわれわれが何をしなければならないか指し示してください。前回、TEDで講演されたとき、それは本当に大きな原動力だとおっしゃっていましたね。この仕事をする理由は他にもたくさんありますが、根本的には、未来について考えたいのであって、それがくだらないと思いたくない、と。


EM そう、その通り。一般にたくさんの議論があります。あの問題、この問題、ってね。そして大勢のひとが未来について嘆いていて、そう、悲観的なんだ。それで、私は、これは良くないと思う。だって、その、みんな将来について前向きな気持ちで朝を迎えたいじゃないか。何が起こるかワクワクしたいはずだ。そして人生ってのは、単に悲惨な問題を次から次へと解決するためのものであってはいけないと思う。

CA それで30年後を想像した時、2050年というのは科学者らが言うには地球温暖化における最後の終末、のような見方がされている。科学者たちの間で一つの総意、大きな総意があって、もし2050年までに温室効果ガスを削減あるいは消失させることができなければ、実質的には温暖化による破滅を招く、と。この破滅を避ける道はあると思いますか?そしてそれはどのようなものでしょうか?

EM そうですね、私は破滅論者ではないんです。驚かせるかもしれませんが。どちらかというと正しい道を進んでいると思います。と同時に、自己満足に陥らないよう忠告します。なので、自己満足に陥らないうちは、そして再生可能エネルギー社会へ急いで進む必要があると気をつけているうちは、問題ないと思います。十分強調することはできませんが、現状に満足せず強く押し進めることができれば未来は明るいと思います。心配はいりません。というか、心配すれば、皮肉ですが、自ら達成を拒む予言となってしまいます。

そう、なので、再生可能エネルギー社会には3つの要素があります。ひとつは再生可能エネルギー源、すなわち風力と太陽光。さらに水力、地熱。ちなみに私は原子力推進派です。原子力はいいです。とにかく第一に太陽光と風力があるべきです。ふたつめはその太陽光と風力のエネルギーを貯蔵する電池が必要です。なぜなら太陽はずっと照らすわけじゃないし、風もずっとは吹きません。なのでたくさんの定置蓄電設備が必要です。そして電気による移動手段が必要です。なので電気自動車、電動航空機、船、です。そして最終的には、本当に電動ロケットは作れないのですが、ロケットに使われる推進剤を再生可能エネルギーをもとに製造することが可能です。
なので、最終的には、完全に再生可能エネルギー社会を作ることは可能です。その3つの要素です。風力/太陽光、定置蓄電設備、電動移動手段。
では何が進行を制限する要素なのか?電池製造でしょうね。それが成長のカギとなる要素です。リチウム電池のサプライチェーンの足を引っ張る要素。すなわち鉱山から精錬における数々の工程、そして最終的に電池セルを作ってパックに入れる、この一連の流れを妨げる要素こそが再生可能エネルギー社会への変化を遅らせる要因です。

CA わかりました。ではもっと電池について話しましょう。私が理解したい重要なポイントとして、その、量産化における課題が驚きと共に気付かされます。あなたは計算によれば世界が再生可能エネルギー社会に移行するには300テラワットの電池が必要と言いました。それがゴールですか?

EM だいぶおおまかな計算です。ほかの計算結果が出る可能性もあるので外部にも意見を募りたいところです。ただ移行するためには、現行の発電能力だけでなく、冷暖房や移動手段に必要な電力も考慮すると、おおよそ3倍の電力が必要となるので、おおよそ300テラワット時(300TWh)の蓄電能力が必要だと思います。

テスラの定置蓄電池 Megapack

CA では皆にどれだけその目標が大きいか示す必要がありますね。その、我々はいまギガファクトリーにいます。世界で一番大きな建造物の一つですよね。私が聞いたところ、合っていたらおしえてください、この施設の目標は最終的に年間100GWhの電池を生産することだと。

EM もしかしたらそれよりもっと作るかもしれません。でもはい。できれば数年以内にその規模を目指したいです。

CA なるほど。でもそれって––

EM 0.1TWh

CA そう。必要な分のわずか1/100未満ですよね。テスラが取りかかろうとしている、残りの分について、たとえば2030、あるいは2040年までどの段階で量産化を本当に実現しなければならないでしょうか?

EM これは推測なので、責任を取れと言われると苦しいのですが、その、何が起こるかと言うと、つまり、予測できたとして、いずれ5年後とかにどこかの愚か者が記事に「イーロンが起こると言ったがそうならなかった。奴は嘘つきで馬鹿だ」とか書くと思う。そういうのはとても迷惑だ。なのでこれは単なる推測です。

CA もちろん。

EM テスラはおそらくその一割を担うことになると思います。

CA たとえば2050年に素晴らしい、100%再生可能エネルギーによる電力網が、その、あなたがいういくつかの発電方法のミックスで出来上がったとしましょう。その電力網はおそらく世界に相当安価なエネルギーを供給しますよね、現代に比べて。私が興味を持っているのは、人々はそういう世界になるかもしれないことについてもっと期待を持っていいのではないか?と言うことです。

EM 人々はもっと未来について前向きになるべきです。人類は再生可能エネルギーを達成するでしょう。達成というのは、その、強く推進することを続ければであって、エネルギーという観点でいえば明るく、期待が持てるはずです。そしてそのエネルギーを利用してやがて炭素の分離ができるはずです。炭素を空気中に放出するとエネルギーが発散されるので、抜き取るのには膨大なエネルギーが必要です。ただたくさんの再生可能エネルギーが風力と太陽光で得られれば、炭素を分離できます。なので空気中や海中のCO2を百万分の一レベルまで下げることができます。さらにほしい分だけの浄水も得ることができます。地球はほとんど水ですから。地表の70%は水ですから地球は「水」と呼ぶべきです。ただほとんど海水ですが。つまり我々はたまたまその残りの陸地にいるだけなのです。

CA そしてそのエネルギーがあれば、海水をー

EM そう

CA 浄水するなりどうとでもできると。

EM 低コストでね。いろいろと改善するでしょう。

CA それは期待できますね。さらに化石燃料がない社会の別の利点というと空気がきれいで––

EM そう。その通り。なぜなら化石燃料を燃やすとさまざまな副反応やさまざまな有毒ガスが発生するからね。発生する各種の微粒子も肺に悪影響だ。そういったいろいろな現在起きている悪いことが解消されるんだ。そして空も綺麗に、もっと静かになる。未来は明るいよ。

人工知能と自動運転


CA 次に人工知能について少し考えてみたい。しかしそれについて進めるとなると、あなたは過去の悪い予測について人々が追求してくるのが迷惑で仕方ないと言っていましたね。なので私は少し迷惑かもしれませんが、今後の計画、予測、そしていくつかのことが驚くほど的確である一方、他はそうでなかったり、ということに私は気になります。たとえばテスラの車両の売上予測についてあなたは驚くほど正確でした。たしか2014年に6万台を販売したとき、あなたは「2020年には年間50万台は売るよ」と言い当てていました。

EM そうだね。確かに我々はほとんど50万台売ったね。

Tesla cars

CA あなたは正確に約50万台を言い当てました。あなたは2014年当時はモデルTを擁するヘンリー・フォード以来、そのような成長率には誰も近づけなかったと嘲笑されました。嘲笑されましたが、結局50万台あるいは51万台といった数量を実際に生み出しました。しかし5年前、前回TEDにいらっしゃった時、私は自動運転車両について聞きましたが、あなたは「そうだね、今年中にLAからニューヨークまで干渉せずとも自動的に移動できる車両が準備できる」と言いました。

EM そうだね。驚かせたくないけど、私はいつも正しいというわけではないんだ。

CA 笑。この二つの違いはなんだったんですか?完全自動運転の予測は単体ではそれほど難しかったのでしょうか。

EM というか、私を本当に困らせたのは、そして他の大勢の方にも影響が出そうなのが、自動運転は本当にぬか喜びが多いんです。問題が見つかったり解決できたと思ったら、また新たな限界が見つかります。もし問題事項をプロットしたら、対数曲線のように見えるでしょう。対数曲線の順繰りです。ですがほとんどの人は対数曲線が何なのかわからないでしょう。たぶん。

CA もうちょっと詳しく説明してもらえませんか。

EM 最初はまっすぐ上昇するんだ。その後失速し始め、反応が減少するんだ。最初は上昇したけど、その後は曲がってきて、やがて慣れる。私はこれを最大位置と呼んでいる。つまり自分が実際にどれほど愚かか気づいていないんだ。そして再び起こる。そして最終的に、その、振り返ると明確に思えるけど、ただ完全自動運転を実現するためには実世界におけるAIを解決しなければならない。道路網はどういう運用を想定されて構築されているか。生物学的なニューラルネット(神経網)を司る我々の脳、そしてビジョンを司る我々の目を用いて扱うよう設計されている。それをコンピュータを通して使えるようにするためには、現実世界でのAIとビションを解決しなければならない。自動運転を可能するため、目と生物学的ニューラルネットを実現するためのカメラとシリコンニューラルネットが必要なんだ。その観点で行くと、自動運転を実現するための唯一の方法は現実世界でのAIと複雑なビジョンを解決するしかないんだ。

CA 現状のアーキテクチャについてどう思いますか?対数曲線のグラフのように成長が減速しないようなアーキテクチャは今現在あるのでしょうか?

EM これはもうみんな聞き飽きた言葉だろうけど、年内に解決する自信があるよ。平均的なドライバーが事故起こす確率を下回る実力に今年中には到達すると思う。

CA その自信を裏付ける根拠はあるのでしょうか?

EM 高品質な統一ベクトル空間を構築できるところまで来ている。最初は個別の画像に対して画像認識を行おうとしていたんだ。しかし映像から一つの画像を取り出そうとすると、今何が起きているかはっきり判断するのが結構難しいんだ。しかし映像のいくつかのコマ送りを見てみると、曖昧ではなくなる。だから最初に行わなければならなかったことは8つのカメラをシンクロさせて、1人の人間に全フレームが同時に見えている状態でラベリングすることだ。まだ人の手によるラベリングが必要だ。少なくとも異なる人によるバラバラのラベリングは避けている。全方位の画像みたいなものだ。さらに重要なのは時間軸を付け加えること。つまり全方位映像を見ながらそこにラベリングしている。これはソフトウェアの視点で行おうとすると実際は結構難しい。我々は自分達でラベリングツールを過去こし、自動ラベリングツールを作成し、人間であるラベラーの効率を上げるソフトを作り出す必要があった。ラベリングって難しいからね。最初は10秒間のクリップをラベリングするのに数時間かかった。これは大量にできない。
なので基本的に何が必要かというと、全方位映像を用意して、その全方位映像がまずは自動的にラベリングされて人間はただ必要に応じて最小限の修正作業を行うようにする。そこで得た修正箇所を以降の自動ラベラーに反映させ、この好循環がやがて自動ラベラーが大量の映像を正確に自動的に車、車線、走行空間をラベリングできるように促進するんだ。

CA つまりそれは、クルマ自身に効果的に周辺にあるモノの3Dモデルを与えているということですね。クルマは何があるか理解し、どれくらい速く動いているか理解している。そして残された課題としては俊敏な動きの予測、例えば歩行者がより小さな歩行者を伴って道路を横断していて、小さな歩行者が予測不能な動きをとるとか。本当に安全という前に作り込みが必要なんですね。

EM 基本的に時空間にわたる記憶力が必要なんだ。何が言いたいかというと、記憶は無限にできない。コンピューターのRAMをだいぶ使っているからね。じゃあどれだけ記憶すればいいか?モノが隠れて視界から消えるのは一般的だ。だから例えば、歩行者がトラックの裏側を通り過ぎようとしていて、片側では見えていたけど、トラックの裏に隠れてしまった。この場合直感的に、はい、歩行者はおそらく反対側から現れることは予測できる。

CA でもコンピューターにそれはわからない

EM ちょっと減速する必要があるね

CA 予測では過去5年にわたって、あなたはおおむね今年じゃないけどあと1、2年で用意できる、といった類のそう遠くない未来だというような言い方をしてきました。しかし今我々は新たなアーキテクチャを手に入れ、裏側ではいくつか成長をあなたは確認していて、今年の終わりまでには、全てではないけどほとんどの街で、すべての状況で、人間より安全に人の介入なくしてクルマ自身が運転できると確信しているのですね。

EM はい。というか、もうオースティンで介入を必要とせず私は結構乗り回しています。完全自動運転のベータプログラムに10万人以上参加してもらっているし、彼らがウェブ上に上げている動画を見ることもできます。

CA 見ました。すごいのもある。怖いのもある。たまにクルマが勝手に方向転換して運転手を恐怖に陥れいるものもありますね。

EM まだベータだしね。

CA でもあなたは裏側にいて、データも見ていて、年内に実現できるだけの改善と成長を見出している。

EM そう。そう見ている。またここで来年話して、今年じゃなかったね、ということもできるけど、今年こそできると思う。

CA 一般的に、イーロン時間について人々が話すと、何かを6ヶ月で実現することを予測する一般的なルールはありませんが、我々が実際に想像すべきなのは年内あるいは2倍、3倍と予測の種類にもよると思います。いくつかのこと、例えば進歩しているソフト、AI、などなど、原理的に他よりよそくするのは難しいと思います。人々に希望を持たせるために故意に積極的な予測を起こす要素はありますか?それがなければ、何もできない?

EM まあ、私は一般的に、内々の時間軸で、我々が最も積極的な予定を組むことを目指しています。予定といったものに関してなんだか一度立てるとそれより早まらないというような決まりのようなものがあるからね。早まることは稀だ。しかし我々の予測が注目されると、メディアは悪い点ばかり報じていい点は無視する。それか、私に関する記事を書くと––私は長年にわたってさまざまな産業でキャリアを積んできたけど、私の罪を書き出すと、世界で最低の人間というような書かれ方もする。でも私が行った数々のことも併記すると、ほら成立するでしょ。本質的に、長いこと何かを続けると、類型的に失敗は積み上がっていくんだ。それらを合計すると、私が世界で最も悪い予測者と見える。しかしテスラの台数の成長率に関して言えば、私は1.5倍と予測したけど、、実際は1.8倍だった。

CA なるほど

EM でもそのことは報じない。私は自分自身の予測の正答率はわかりません。悲観的ではなく楽観的ですが、すべてではないです。時間が思ったよりかかったものもありますが、最終的には実現しています。できないことの方が少ないです。そうですね、たとえば、なにか技術に関して過激な予測があったとしましょう。何年遅れたかが重要ではなく実現することが重要なのです。

ロボット


CA そうすると昨年のどこかで、理解度が深まる進捗を見ながら、テスラのAIが世界を理解していく過程で、テスラ内でいつだかアハ体験のようなものがあったのでしょうか。というのもあなたが最近、テスラが今年もっとも注力している製品と発表したとき、皆とても驚いたからです。つまりロボット、オプティマスです。

Tesla Optimus

EM はい。

CA こういったロボットを過去にたくさんの企業が何年もかけて開発しようと試みました。しかしどこも本当の意味で成功していません。人々の家にロボットが大量に導入されていません。製造現場ではいくつかありますが、正直なところ、誰も完全にロボットというものを実現していません。これは完全自動運転を開発中に「あのさ、特別なことができるぞ」と巻き起こったことなのでしょうか。

EM そう。そのとおり。完全自動運転を目指す過程で気づくのに少し時間がかかったけど、本当に現実世界に対応したAIを生み出す必要があるんだ。そして自動車用の現実世界用AIを開発するうち、というのは4輪のロボットだからね、足付きのロボットに一般化できるんだよ。2つの難しいポイントがあると思っている。例えばボストン・ダイナミックスみたいな有力企業が見せたように、驚くべき、時に注意すら必要なロボットはもう作ることができる。

CA そうですね。

EM センサーやアクチュエータの視点に立つと、ヒューマノイド型ロボットを作ることは既に証明されている。今足りないのはロボットが現実世界を明確な指示を必要とせずに便利に動き回ることだ。なので本当に必要なのは現実世界に適した知能と大量生産だ。この二つはテスラはとても得意だ。なのでやらなければならないのはヒューマノイド型ロボットに特化したアクチュエータやセンサーを設計開発することだ。まだみんな気づいていないけど、これは自動車なんかより大きな事になる。

CA ではその点について話題を進めましょう。というのは、一つの視点では、時速100キロで動いて間違えたら人が死んでしまうようなものではないので、完全自動運転よりは実際は簡単ですよね。これはだいたい時速5キロ〜8キロ程度の速度で動くもので、間違っても誰も死なない。恥ずかしいことが起こるかもしれないけど。

EM AIが支配して我々が寝ている間に殺すようなことにならない限りはネ。

CA ですね笑。最初のアプリケーションはおそらく製造業になると思うけれど、最終的な見通しとしては家庭内で人々が活用することだと思います。もしロボットがあなたの家の3D構造やどこに何があるか、どこに置くかを完全に理解したら、それってすごくないですか?例えばロボットに何を指示できるしょう。掃除しろ?とか?

EM その通りだね。夕飯作って、とか草刈りして、とか。

CA おばあちゃん家にお茶でも持っていって家族写真見せてきて、とか。

EM その通り。おばあちゃんの世話をして、とか。

CA 誰が家族かも完全に理解する。子供達とキャッチボールもできる。

EM そう。ただ、ディストピアのような状況を作ることは避けなければならない。ひとつ重要な事項として、OTAアップデートできないROMチップがロボットの中にあるべきだと思う。ロボットを停めようと「止まれ止まれ止まれ」と言う時持ち主の指示しか聞かないようにする、とか。そしてその機能は無線で更新できないようにする。そういった安全措置は必須だと思う。

CA それは確かに

EM そしてAIに標準化機関もあるべきだと思う。何年も前から行ってきた。私は標準規格化は元来好まないが、公共の安全のためには必要だと思う。

CA その点に戻りましょうか。ほとんどの人は真剣にロボットが自宅に置かれることについて考えたことがないと思います。というのも、コンピューター革命が始まった時、ビル・ゲイツ氏はコンピューターが各家庭に一台置かれる時代が来ると言った。その頃人々は欲しい人だけね、という風潮だった。例えば2050年とかにほとんどの家庭でロボットが置かれ、人々が頼ったり愛したりする未来が来ると思いますか?自分専用の執事ができると思っていい。

EM そうだね。相棒ロボットみたいな。

CA どのくらいの相棒?どのくらいの機能を考えましたか?例えば恋人、SEXパートナーとか?

EM もう避けられないだろうね。ネットでキャットガールは作ると約束したけど、ロボット・キャットガールは作れるかもね。

CA ネットでの約束はお気をつけください。笑

EM そう、だから結局は人々が本当に欲しがる役割になると思う。

CA 最初のモデルが製造されて販売されるまではどのくらいかかると考えればいいでしょうか?

EM  最初のユニットは人が忌避するであろう危険、つまらない、反復作業といったやりたくない仕事を任せることになるだろう。そして、年内には興味深い試作品をお目にかけられるだろう。来年には何か使えるものができるかもしれないけど、多分最低でも2年はかかるかも。その後は年を追うごとにヒューマノイド型ロボットの実用性が増していき、コスト低減と量産化が実現すると思う。

CA 最初は業務用?それとも両親にクリスマスに一台買えるようになるのはいつ頃でしょう?

EM 十年以内でしょうね。

CA 経済的な質問です。一台あたりいくらくらいになるでしょう?

EM それほど高価にはならないでしょう。自動車より安いとか。最新の技術が少量の生産で行われるので最初は高いです。自動車はヒューマノイド型ロボットより複雑で高価です。なので最初は自動車より安いか、安い自動車並になるでしょう。

CA では最初に50k(約650万円)で始まるとして、数年で20kとかに安くなる。家庭用はもっと安いかも。経済効果を考えてみてください。毎年年収30k、40kを支払わなければならない労働者を一度の25kドルの支払いで置き換えて、しかももっと長時間働けるというのはかなり急速にいくつかの職業を置き換えるのではないでしょうか。世界はこれについてどれだけ心配すればいいのでしょう?

EM 人の仕事を奪い取る心配は必要ないでしょう。これから、あるいは既に労働力の不足に直面していると思います。人の仕事が奪われるよりむしろ未来では労働力不足が依然として存在すると思います。
でもこれは本当に豊かな世界になります。あらゆるモノやサービスはそれを必要とする人へ提供されます。モノやサービスが安すぎて欲しがることすら冗談になるかもしれません。

CA 図々しいかもしれないけど今の世界で採算が合わなくて作れない、提供できないようなモノやサービスもロボットのおかげで実現するかもしれませんね。

EM そうです。豊かな社会です。唯一不足するとすれば我々自身が人間(子供)を産むか否かを判断することでしょう。

ニューラリンク


CA なるほど。AIはこの豊かさを生み出しまったく異なる力強い経済へ導くということですね。もし間違えるとして何が一番怖いでしょう?

EM そうですね。先ほど言った通り、豊かな時代の到来をAIやロボットは呼ぶかもしれません。他でも言われていますが、私の予測はこうです:全てのものにとって豊かな社会となるでしょう。ただ、危険要素は汎用人工知能あるいはデジタル超知能がヒトの集団意識と分離し、我々が好まない方向へ進むことです。どの方向へ進むにせよ。
実はそれがニューラリンクの背後にある考えです。ヒトの集団意識をより強固にデジタル超知能へ束ねることです。さらにその過程で脳傷害や脊椎損傷とかをたくさん修復することを目指している。なのでたとえ大きな目標を達成できなくても、脳や脊椎へのダメージを緩和することはできると思う。

CA ということは方針としてはもしこれらのAIをとてもに賢くするとして、その超越した力を駆使するためには我々が直接つながるべき、だと。でもそれだとその超能力が予期せぬ、醜い方向へ進むことを防ぐことにはならないように思えるけど。

EM リスクになるであろうことには同意します。そのリスクに対して今明確な解があるとは言いません。私が言いたいのはその未来の実現を約束するための一つの良いこととしては、ヒトの集団意識をデジタル知能へより強固に結びつけることです。
この点において我々が直面している課題として、既に我々はサイボーグであるといえることです。コンピュータは我々の延長です。我々が死ねば、我々はデジタルのゴーストを持ちます。我々のテキストメッセージやソーシャルメディア、そしてメール。そして気味が悪いことに、誰かが死んでもそういったものはオンラインに全て残っているのです。境界線はどこでしょう?ヒトと機械の共存を抑制するのは何なのでしょう?データレートです。会話するとき、とくに電話では、指はゆっくりと動いています。あなたは小さい肉の棒を一秒あたり10ビット、よくて100ビット毎秒です。しかしコンピュータはギガバイト以上のレベルで会話しています。

CA そのような技術が実際に動作しているのを見たことがありますか?より密度の濃い、高い帯域の通信、例えば外部の電子機器と脳の交信が過去に実現したのでしょうか?

EM はい。というか、ニューロンを読み取ることの原理原則は例えば小さい電子を使ったニューロンへの読み書きは数十年にわたって試されてきました。このコンセプトは新しくありません。ただ発売できるほどの製品が完成していないのです。研究所の中だけの話です。頭から配線が飛び出しているやつです。ちょっとゾッとするし、高い帯域で安全に動作して、買えるし買いたいようなちゃんと動く良い製品というのは実際はないんです。
ただニューラリンクデバイスを考るとなると、フィットビットやアップルウォッチのようなものです。25セント玉サイズの大きさの頭蓋骨を取り除き、フィットビット、アップルウォッチ、その類いとしか言えないようなもので置き換える。でもワイヤはとてもとても小さいです。小さすぎて見えないくらいです。そして挿入されたときに脳を傷つけないよう、とても小さい必要があります。

CA これを人に試すにはどこまで進みましたか?

EM 年内に最初の人間へのインプラントを意欲的に進めるため、FDAへの申請を行ったところだよ。

CA 最初の導入は神経系の傷害などへの使用だと思います。しかし時計を進めて、人が実際に自らの増進のために使うことを想像して、あるいは世界の増進のためだとして、これが実際に頭の中にあるというのはどう言った感覚か、あなたの中で描かれていますか?

EM まあ、初期段階にあることは強調します。そして実際に高い帯域でのAIーヒト協調のための神経インターフェイスというものになるにはまだまだかかることでしょう。数年にわたって、脳障害や脊椎損傷の修復にとどまるでしょう。おそらく十年は。これはある日突然、素晴らしい脳インターフェイスが生み出されるようなものではありません。本当に十年間は脳障害や脊椎傷害を治すためのものになるでしょう。ただ、広範囲の脳障害を治すことができるでしょう。たとえばひどいうつ病、過度な肥満、昏睡、潜在的統合失調症などです。人々に多大なストレスを与えるような病気です。あるいは高齢者の記憶を取り戻したり。

CA それができるなら私は申し込みますね。

EM もちろん。

CA 急いでください(笑)

EM というのも、ニューラリンクで我々が受け取るEメールは心痛めるものばかりなのです。本当に気の毒な、たとえば、若い頃にバイク事故に遭って、25歳のひとが、自分で食事も取れないのです。しかし我々なら治せます。

CA しかしあなたはAIはあなたが最も懸念することのひとつで、ニューラリンクはそれについて知見を得ておく一つの方法だと言っていました。

EM そう、短期的には、個別の人間の傷害を助けるといった面がある。長期的には生物学的知能とデジタル知能が近づくことで生じるAIによる文明的リスクを顕在化することにある。というのも、今日において脳がどのように働くか考えると、実際にはふたつの層が脳内にはある。辺縁系と大脳皮質だ。そして動物的な部分、わりと楽しい箇所なんだけど、本当は。

CA ツイッターが最も機能する箇所ですね。ちなみに。

EM ティム・アーバン曰く、(訳注:WaitButWhyというブログで著名。人間の思考や習慣に関してTEDでも講演している。)我々はコンピュータを与えられたサルだ。もしサルにコンピュータを与えたら、それが大脳皮質だ。ただ我々にはまだまだたくさんのサルの本能がある。そして我々は違う、それはサルのような本能ではない、と正当化できる。でもだいたいただの本能なんだ。我々はただコンピュータを頭に突っ込まれたサルなんだ。それでも大脳皮質が脳内の割と高度な知能で考える箇所だ。私はまだ辺縁系や大脳皮質を取り除きたいという人には出会ったことがない。みんな両方を持っていて幸福だ。みんな両方持っていたい。そしてみんな本当にスマホやコンピュータを持ちたがっていて、これが第三の知能なんだ。ただ、その第三の層の帯域というか、通信スピードが遅いんだ。第三層へは細い管しかない。ほの細い管を大きな高速道路にしたい。ただ私はこれがすべてを解決するとは決して言わない。そしてこれしか解決方法がない、とも言わない。ただ助けることはできる。最悪のシナリオでも、脳手術や、脊椎損傷の重要な問題を解決することができるかもしれなくて、それでも十分な結果と言えます。

CA 最良の場合、我々は人類の新たな可能性、テレパシーのようなもの、と言いました。ある種の、愛するものとのつながりが、完璧な記憶やより早い思考プロセスとか。いろんなこと。とてもクールだ。
もしAIが地球を支配しようとしたら、プランBが必要だ。では宇宙へ視野を広げよう。以前のTEDでは再利用性について話して、あなたは劇的な成果をもって初めて示した。それ以来、このバケモノのようなロケット、スターシップを、劇的なゲームチェンジャーとして建設している。スターシップについて語ってください。

スターシップ

EM スターシップは極めて本質的だ。
ロケット工学や宇宙輸送の聖杯はは完全かつ素早い再利用性にある。未だかつて実現されていない。もっとも実現に近づいたのは我々のファルコン9ロケットで、ファーストステージ、すなわち推進ステージ、つまり発射される乗り物の約60%、あるいは70%にあたる部分、の回収に成功した。そしてすでに100回以上は成功している。だからスターシップでは、我々は全部を回収する。少なくともそれがゴールだ。

Starship Super Heavy

CA なるほど。

EM 付け加えると、すぐに再出発できるような形で回収するんだ。ファルコン9では推進器や流線形のノーズコーンの付け替えが必要だ。しかしスターシップの目標はただちに再発射することだ。推進剤を再充填すればすぐにまた飛べる。そして巨大だ。まったく新しい形の輸送手段になるだろう。

CA 主なデザインとしては基本的に100人以上を乗せ、さらに荷物もたくさん積み、火星へ行くと。この点についてまずお願いします。最新の予定は?最初はおそらく人を乗せずに道具だけ積んでスターシップが火星へ飛んで、次に人。その次は、多分、100人ずつ。さあ行こう!

EM もちろん。ついでにコストについて言及すると、衛星軌道に100トンを打ち上げられるスターシップはファイルコン1ロケットを打ち上げるよりはるかに安いんだ。まるでボーイング747が世界一周飛行にかかるコストが小型機のそれより安いようにね。もう既に使用されていないような小型機さ。より大きなものの方がコスト安というのはたしかに理解し難い。そして火星で用意しにくいようなものや外部推進器は使わない。燃料はほとんど、ざくり77−78%が酸素で構成されるメタンを使用する。火星は二酸化炭素の大気を持ち、氷がある。つまりCO2とH2Oがあり、CH4つまりメタンとO2つまり酸素が作れる。

CA おそらく、火星における最初の任務はたくさんのスターシップが帰還できるように燃料製造基地を作ることだろうね。

EM そうです。そしておそらく大半は酸素工場になるでしょう。78%が酸素で22%が燃料ですから。ただ燃料は単純で火星でも作れる。ほかの太陽系の惑星でも作れる。さらに、あと推進器を利用して着陸するのでパラシュートもほかの投棄物もない。地球や火星へ再降下するための耐熱シールドもある。金星にだって行ける実力がある。でも行かないだろうね(笑)金星は実際、地獄だから。でも可能だ。太陽系内で移動するための汎用手段だ。なぜなら火星に燃料基地があれば、小惑星帯は土星や木星の衛星たち、やがては太陽系すべてへ移動が可能だからね。

CA でもあなたとスペースXの主たる目的はまだ火星だ。それが目標。それが最も力を注ぐところですか?それとも今後もと用途が広がって、例えば次の十年とかで使われることはあり得ますか?ほかに、たとえば、太陽系の他の惑星など、もしからしたらNASAがロケットをそう言った目的で使いたがるかも。

EM うん。NASAは月へ人類を再び送り込むためにスターシップの使用を計画している。そして我々はNASAに選ばれたことを光栄に思う。ただこれは汎用的で、大いなる太陽系のどこへでも移動するための汎用手段なんだ。他の恒星系へ行くための手段ではないけど、太陽系内なら可能だ。

CA そう言ったことが可能になる前に、地球の衛星軌道に行けることを示す必要がありますね。その辺りの最新の予定はいかがですか?

EM 数ヶ月以内には衛星軌道へ打ち上げる予定だ。なので実際に、次の1、2週間でブースターにエンジンを埋め込んで最初の打ち上げに向かう予定だ。なので打ち上げ設備自体は既に準備完了している。当局の許可が降りれば、数ヶ月以内には衛星軌道への打ち上げを行えるはずだ。

CA そしてこういった急進的に新しい技術の早すぎる挑戦に実際にはリスクはつきものですよね。

EM 100%あるね。いつも冗談で言うけど、興奮は保証するよ。成功は保証できないが、興奮は保証する。

CA でも最後にあなたのタイムライン(Twitter)でみたとき、火星へ人類を入植させる日付を2029年へ少し後ろ倒しませんでした?

EM えーっと、それは、うん。スターシップの製造システムを作ったんだ。だからたくさんの搭乗機やブースターを作っている。

CA 実際は何台作る予定ですか?

EM まあ、搭乗機とブースターを実際には数ヶ月ごと、できれば年内一杯、つまり毎月だ。巨大なロケットをたくさん。ざっくりとした規模感でいうと、自営可能な拠点を火星に建てるためには数千台のスターシップが必要だろうね。そしてスパルタのヘレネーが必要だ。火星にね。

CA それはみんな予想外だろうね、イーロン。

EM 1000機の宇宙船を打ち出した星だよ。

CA それはいいね。でもそれはあなたの頭の中にある絵で、我々のような大勢には思い描けないことだ。実際には2年かかる。でも火星へ快適に2年おきに行けるんだ。最初あなたは2030年代に複数年おきにおそらく1,000機のスターシップがそれぞれ100人以上乗せた状態で飛ぶと予想した。ただただ驚愕。この大勢の艦隊が--

ME 出発する時「宇宙空母ギャラクティカ」みたいな艦隊に見えるだろうね。

CA そしてそれは火星へ行きたい人々のおそらく数十万円の旅費でまかなえると?そのくらいの費用で済みますか?

火星入植

EM まあ、もし火星へ自営可能な拠点を建設するために必要な人員と物資を送るためにはね。もちろん希望するある程度の人数がいれば、おそらく人類の数パーセントしか行きたがらないだろうし。そして費用を捻出、あるいは支援してもらえたらね。人員の規模は、数百万人規模が必要だろうね。だから数百万人が支払えるか、あるいは支援されてもらえるか、多分政府も支援してくれるだろう。ローンも組めるだろうし。だからもし火星へ移住する費用が、議論しやすくするために仮に1千万円としよう。であればほとんどの人が稼いだり貯金したりして捻出して火星へ行けるだろうし。我々は行きたい人が誰でも行けるようにしたい。
強調したいのは、火星は、とくに初期は、決して居心地は良くないと言うことです。危険で、狭苦しくて、困難で、重労働だ。例えるならシャクルトンが南極を目指したような、実際には違うけど、例えるとしたらピッタリだしカッコいい。言うなれば、火星へ行くための宣伝文句は「危険で、狭苦しい。帰ってこれないかもしれない。難しくて重労働だ」という感じだろう。

CA でしょうね。でも歴史に名を刻む。

EM 栄光に満ちているでしょう。

CA そのような発射の頻度でたとえは20年間かければ、最終的には数百万人を火星へ送り込めると言うのですね?誰の都市に?NASAの?それともスペースXの?

EM 火星市民のでしょう。理由として、なぜこれを行うか?と考えた時、人類や意識の可能な寿命を最大限に伸ばすのに重要だからです。ヒトの文明は滅亡するか、外的要因、たとえば巨大隕石や巨大噴火や凄まじい気候変動などで終焉を迎えるかもしれない。もしくは第三次世界大戦か。なんでもいい。しかし文明的な意識の可能な寿命というのは、考えようによっては、暗闇の中のか細いロウソクのともし火だ。実際のところそうなんだ。途方もない宇宙という暗闇の中でこのか細い人類の意識という名のロウソクは点いてから45億年経っていて、いつ消えてもおかしくない。

CA 力強い言葉です。そのビジョンによってたくさんの人が意識付けられるでしょう。そしてなぜ数百万人が必要かというと、生存するために十分な人員が必要だからということですね。

EM 実際に、もし地球から来る宇宙船がなんらかの理由で止まった場合、火星都市は生き残れるか否かのしきい値はどこか?といった考え方だ。そして我々は、大きなフィルター、あるいはフェルミのパラドックスとか、エイリアンはどこか?とか議論したりする。たしかにもしかしたらエイリアンが存在するために通過できなかった大いなるフィルターがあったのかもしれない。そしてフィルターのひとつは汎惑星間生命体になることだ。そしてそのフィルターを突破したい。もちろん私はこれが実際に達成する頃にはとっくに死んでいるでしょう。ただ死ぬ前にこの方向へ大きく進歩していることをこの目で確認しておきたい。

CA 地球がどれだけ悲惨な状況かを目の当たりにして、さらに人類がお互いが傷つけ合うのをみて、もし文明をそこで作り上げることができたら火星へ行くことを夢見る人々の間で新しいルールについて議論すべきではないでしょうか?誰かがそれらの議論を率いて火星都市の人々にとっての意味を見出す必要はないでしょうか

EM 究極的には社会について考え直す権利は火星の人々に委ねられるでしょう。持ちろんそこにはリスクもあります。願わくば火星の人々はより啓蒙されていて、お互いを責め合いすぎることはないでしょう。火星の人々が聞くか聞かないかは自由ですがいくつか薦める方法はあります。私だったら間接民主制ではなく直接民主制を提唱します。法律も皆が理解できるよう短くあるべきです。法を作る方が取り除くより難しくあるべきです。

未来の宇宙探査

CA もう少し目線を足下に戻して、スターシップが生み出そうとしているもう一つの可能性について話させてください。急に我々は100トン以上を周回軌道に打ち上げる手段を得ました。ジェームズ・ウェブ望遠鏡を打ち上げたばかりだ。素晴らしいことです。信じられない。

EM 精巧で美しい科学技術だ。

CA 精巧で美しい科学技術ですね。でも皆この望遠鏡をどうやって折り畳むか2年悩んだのです。3トンもする望遠鏡です。

EM もしもっと体積と重量があっても我々はもっと簡単にできます。

CA 別の聞き方をしましょう。というのは、スターシップ向けに設計された望遠鏡であれば、何倍のパワーに上げることができますか?

EM 大まかに言って、桁数の分精度を上げられるだろう。我々が運べるのは100トンだけどね。

CA その上、太陽系圏内を移動できるわけですよね?

EM エウロパ(木星の第二衛星)は大いに興味を惹くね。

CA そう。その星には大きな海がありますね。そして何がしたいかというとその海に潜水艦を沈めたい。

EM もしかしたら、イカ型か頭足類の宇宙人の文明がエウロパの氷の中あるかもしれない。とても興味深い。

CA イーロン、もしエウロパへ潜水艦を運べてこのイカが何かを食べているのをみられたら、私の人生最高の瞬間だろうね。

EM ワクワクするね。

CA ほかに何ができるだろう?こういった宇宙船を何千台も作って、火星へは2年に一度しか飛べない。ほかの時間は何をする?みんな考えつかない以上にいくつもの可能性を感じます。

EM 正直思いつかないね。まだ先は長い。さきほど示してくれたように、まだ軌道に打ち上げるという課題が残っている。軌道に乗せた後、本当に完全で素早い再利用性を示さないといけない。時間がかかる。けど解決できるはずだ。現時点で解決できると強く信じている。

CA スペースXにとってヒンデンベルク号的な瞬間が起こる悪夢で目を覚ますことがありますか?

EM 実際、過去にヒンデンベルクはたくさんあったよ。もちろん、人的被害はなかった。とても大事なことだ。大きな違いだ。ロケットをいくつか爆発させた。ウェブ我々が作った総集編もあればほかが作ったものもある。ロケットが難しいってことを示している。というか、ロケットを打つときにかかる本当のエネルギー量を知ると頭が狂っちゃうよ。我々は強い重力下と分厚い大気の下にいる。火星は40%未満、地球の37%の重力と薄い大気しかない。あの宇宙船は火星の地表から地球の地表まで単独で飛ぶことができる。一方で火星へ行くにはもっと大きな推進器と衛星上での補給が必要だ。

シナジー

CA イーロン、あなたが関わるこれらのたくさんの仕事を考えたとき、シナジーが、ひどい言葉ですが、が見えてきます。たとえば、テスラで作ろうとしているロボットは火星では危険な作業を任せるには便利だろうし、とか。もしかしたら火星の拠点は百万人も人員を必要とせず、50万人の人間と50万台のロボットで事足りるかもしれない。可能性の一つです。ボーリングカンパニーは地下の居住空間を生み出すのにひと役買えるのかもしれない。

EM そうだね。

CA 地球に戻れば、ボーリングカンパニーとテスラの間で協力すれば、都市の地下で3Dトンネル地下空間を構築してロボットタクシーを走らせ、素早い、安い移動手段を皆に提供できるかもしれない。完全自動運転は今年中に完成するかもしれないし、しないかもしれない。そしてたとえばムンバイなんかでは今後10年以内にはまだ難しいかもしれない。

EM 特定の場所は他よりやりがいがあるだろうね。

CA しかし現時点で、現時点の技術で、トンネルの地下3Dネットワークをこうちくできますよね?

EM ただのトンネルならね。それは解決済み

CA そのとおり。完全自動運転はすでに解決済みだ。わたしにとってこれは素晴らしいシナジーだ。スターシップがあれば、(SpaceX COOの)グウィン・ショットウェル氏が話したところによれば、2028年ごろまでに地球上の都市間でも使用できると。

EM まさしく可能性のひとつだね。ある場所から遠い別の場所への最も速い移動手段はロケットだね。原理的にICBM(大陸間弾道ミサイル)だ。

CA ただし着陸する必要があって、ICBMじゃないから、沖合に着陸が必要だ。騒音がひどいだろう。せっかくなら都市間をトンネルで繋いでテスラで移動すれば?ニューラリンクも。火星に行くときにテレパシーのような会話手段で故郷の恋人とやりとりできれば、たとえ遅延があろうと…

EM ちなみにこれらの事業を相互連携させる意図はなかったんだ。でもシナジーはおおいにあり得るね。

CA おおいに議論が生じていることとして、これらをひとつの企業にまとめて、ワクワクしたりいろいろな可能性が花開く未来に専念できるという見方があります。これについてはどうお考えですか?

EM えーっと、ちょっと込み入っていることとして、テスラは上場企業であり、テスラ、スペースX、もちろんボーリングカンパニーとニューラリンクの投資基盤はそれぞれかなり異なる。ボーリングカンパニーとニューラリンクは小さい企業だ。

CA 比べてね。

EM うん。テスラは今や11万人の従業員がいる。スペースXはおそらく1万2千人だ。ボーリングカンパニーとニューラリンクはそれぞれ200人以下だ。とても小さい。ただ将来は大きくなるだろう。なので一緒くたにするのはちょっと難しい。

CA 今までも、スペースXに関しては特に公開したくないとおっしゃってましたね。だって一般投資家は火星に行くなどと言った狂気じみたアイデアを支持しませんから。

EM そう、文明を惑星間に広げるという行為はウォール街のアナリストの通常の時間軸のはるか枠外だからね(笑)少なく見積もっても。

CA でも何かが変わった気がします。なにかというとテスラが現在あまりにも強大となり、点と点を結ぶだけの十分な資金を稼いでいるということです。稼いでいる何十億ドルというお金が、実際いくらであるかはわかりませんが、火星到達の礎になると伝えたらどうでしょう。そういう会社が出現したらみんな大いに興味を注ぐと思います。それはあなた自身の可能性をもっと解き放つ可能性がある。そう思いませんか?

EM スペースXを公開することは否定はしませんが、株式公開された企業にかかる負荷は大きいです。というか、公開企業というのか、ひっきりなしに訴えられるようなものです。かなりの時間を占めたりして…こういうことと向き合うのは多くの時間と労力がいるんです。

CA でもまとめればひとつの公開企業に絞られるし、より大きくなるし、もっといろんな事業を同時に行える。さらに4つの企業の社長を務める代わりに、ひとつで済む。

EM 実際に私はニューラリンクやボーリングカンパニーの取締役ではないんです。スペースXの取締役会にも実際には出席してません。年に2回だけだし、私は小一時間ほどしゃべるだけです。公開企業の取締役会にかかる労力はもっと高いでしょう。

CA 私が思うに投資家の何割かはあなたの時間が分割されていることを心配していて、まとまったらもっと良いだろうと思っているのだと思います。とにかく、先日私はふと、たくさんのことがつなげられると気づいたのです。そして、その目標が単純なことに、つまり皆が期待するに値する未来を作るということがものすごくたくさんの人の関心を買うことができるはずだと。
イーロン、あなたはフォーブスによれば、あと皆もう知っているけど、世界で一番の億万長者です。

EM でも国王じゃないね

CA (笑)

慈善活動


EM ひとつ言いたいのは、どこかの国の国王とか首長で私より裕福な人はいます。

CA でも測るのが難しい--3000億ドルですよ。だって、あなたの資産は日々数十億ドルも上下するのです。ちょっとおかしいですよね。

EM 狂ってるよね。

CA 一体それとどうやって平然と向き合っているのですか?それについて考えることすら想像できない人が世の中には多いです。

EM 実際あまり考えないようにしています。もっと難しいこと、睡眠不足に陥るようなことというのは、1時間、あるいは1分間でもテスラやスペースXについて考えるときというのがその企業に与える影響が大きすぎて、とにかくできる限り働こうとしている。文字通り命をかけて、だ。テスラに関してはすでに、あるいは今年の後半にでも、貴重な一分間の思考というのがテスラに数百万ドルの影響を与えかねない。狂ってるよ。例えば、テスラがもし、週20億ドルを稼いでいるとして、売上で、だいたい1日あたり3億ドルになる。一週間でね。もうね…

CA もし1時間のブレーンストーミングで5%変動したら、かなり貴重な1時間になるでしょうね。

EM そう。たとえば30分の会議に出てとして、その時間を使えば自分自身で会社の売上を1億ドル増やすことができた、ということもあるんだ。

CA 世の中にはこう言った億万長者の世界を認めない人が多いです。例えば、ほかの数十億人や最貧国の住民と同等の富を個人が保有するという概念をつよく非難する人は多いです。

EM ちゃんと彼らに確認してもらえたら -- 彼らがそういう結論に辿り着く一種の明らかな欠陥があると思う。たしかに、私が個人で数十億ドルも消費していたら非常に問題だろう。しかしそれは事実と違う。実のところ、私は現在自宅も所有していない。文字通り友人宅に居候している。ほとんどのテスラの設計拠点があるベイエリアへ移動する際には友人たちの空室を使わせてもらっている。ヨットも持っていないし、長期休暇もとくにとっていない。個人的な消費は多くないんだ。唯一の例外は飛行機(プライベートジェット機)かな。しかし飛行機がないと働ける時間が減ってしまう。

CA 個人的にはあなたが深いところでは善意によって突き動かされていることを表したように思えます。たとえば、気候変動を解決しようとする行動においては私が知る他の誰よりも力強く動いています。そして、本当に、個人的に本当に理解できないのは左翼主義者からの批判の数々です。「嗚呼、彼は富を築きすぎて吐き気がする」とかね。気候変動は彼らこそ議論すべきことだ。慈善活動に行動を移す人はいます。難しい議題ですが。どう思いますか?

EM 善の認識ではなく、善の現実を気にするのであれば、慈善活動は非常に難しいことだと思います。スペースX、テスラ、ニューラリンク、そしてボーリングカンパニーは慈善活動です。もし慈善活動を人類愛というすれば、これらは慈善活動です。テスラは再生可能エネルギーを推進しています。これは愛であり、慈善です。スペースXは人類を惑星間で生きのびることができ、生存を長期にわたって維持できるよう努めている。これも人類愛だ。ニューラリンクだって脳傷害を助け、存在しうる問題をAIで解決しようとしている。人類愛だ。ボーリングカンパニーはほとんどの人にとって地獄である交通渋滞を無くそうとしていて、これだって人類愛だ。

CA ひっきりなしに続く「億万長者が〜だの、イーロンマスクが〜」といった言葉をどう捉えてますか?一切気にしていないか、それか実際に傷つきますか?

EM まあ、いまのところは蛙のツラに水、とったところかな。

未来への行動

CA イーロン、まとめに入る前に、少し目線を引いて、今あなたは七人の子どもの父親だ。

EM まあ、私は例を示そうとしているだけだ。地球の出生率が維持できるレベルまで復活しないと文明崩壊に直面するだろうからね。

CA そうですね。これも何度も議論したことです。人口崩壊は大問題で、ひとびとはこの問題がいかに大きいか気づいていない。

EM 人口崩壊は人類文明にとってもっとも大きな脅威のひとつだ。そして現在進行形でもある。

CA 日々の仕事の原動力はなんですか?

EM 私は、人類に良い未来が訪れるように、そして宇宙の本質や人生の意味を理解するための道を進んでいるということを確認したいのです。私たちはなぜここにいるのか、どうやってここに来たのか。そして、宇宙の本質やこれらすべての根本的な疑問を理解するためには、意識の範囲と規模を拡大する必要があります。間違いなく減ったり、消えたりしてはいけません。さもなければ、いつまでも理解できないでしょう。私は何よりも好奇心によって動かされてきたこと、そして未来について考えたい、悲しくなりたくないという欲求に突き動かされてきたと言えるでしょう。

CA そして、今はどうですか?悲観してませんか?

EM 時おり悲しくなるけど、最近は未来について比較的楽観的になってきていると思うよ。たしかに人類が直面している大きなリスクはあります。人口崩壊は本当に大きな問題で、もっと多くの人に考えてほしいと思います。なぜなら、出生率は現在の文明のレベルを維持するのに必要な値をはるかに下回っているからです。あと間違いなく ... 私たちは、気候の持続可能性について行動を起こす必要があり、それはすでに実行されています。そして、私たちは惑星間に生きる種であることによって、意識の未来を確保する必要があるのです。私たちは -- 本質的に、意識の未来に影響を与える実存的なリスクに対処するために、思いつく限りの行動を起こすことが重要です。

CA 未来について本当に悲しさしか考えられない世代が生まれようとしています。彼らになんと声をかけますか?

EM そうだね。未来を本当に良くしたければ、自らそうさせるしかない。よくしようと行動すること。それは叶う。

CA イーロン、ここまで時間をくれてありがとう。終わるには最高の言葉だ。すべてにありがとう。

EM どういたしまして。

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