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閉店間際のジャンヌ・ダルク

フランスにはコンビニがない。
24時間営業の店もほぼ無い。
日曜にいたっては営業すらしない。

普段の生活には困らない程度に慣れたけど、飲食業なんで急に何かが必要になった時は大ピンチ。

この前フェスのケータリングに出店したんだけど、予想外の大反響で余裕を持って用意したはずの2日分の仕込みが1日目の終了間際に完売。慌てて翌日分を仕込まなくちゃいけなくなった。が、時計の針は午後10時。パリのスーパーは基本9時に閉まる。しかも明日は日曜でスーパーはやってない。やいやい…いけんのか?!

どんだけ遠くても、食材調達できる事が最優先。開いてるスーパーをさがしたら11時半クローズの店を発見して猛ダッシュ!!
死にものぐるいで店についたのは11時5分、ギリギリセーフ!!!でも様子がおかしい。

入り口で立往生しているインド人家族。セキュリティが首を振りながらシャッターを閉め始めた?!は??!

「赤ん坊のミルクがもう切れるんです!」お父さんが英語で訴える。なるほど、イギリスからの観光客か。しかしセキュリティはガン無視。え、意地悪っ!!そもそも君らが閉めんの早すぎやろ!!
腹が立ったのでインド人父に囁いたった。
(フォローミー!)

私はズボラな運営体制に反旗を翻した閉店間際のジャンヌ・ダルク。迷える市民よ続け!

知ってるもんね。大きなスーパーは入り口とは別で出口があるってこと!
インド人父を連れて出口にまわり、素知らぬ顔して店内に入り込んだ。諦めかけてた他の人たちも一緒に駆け込んできた。
もちろんセキュリティも黙っちゃいない。
「おい!あいつら入り込んだぞ!!」
巨大なセキュリティが3人がかりで追いかけてくる!!
「おじさん!走って!人混みに入れば見つけ出せないから!!」
「わ…わかった!!」
「飲み物は大体左奥の棚だよ!またレジで会おう!!」
「ありがとう!!!」

お父さんと分かれて店内の客に紛れ込んだ。セキュリティは良心を捨てきれなかったマダムを1人捕まえたのみで、分散した私達を見失ってレジ周りでウロウロしていた。

お目当ての食材を念の為多めにカゴに入れてレジへ向かうと、お父さんもやってきた。って…おい!ミルクよりビールのが多いやんけ!!

「走ったしね…!」

聞いとらんし!
私もビールとってこればよかった…。

二人とも無事お目当てのものを手に入れて、セキュリティに睨まれながら店をあとにした。

その夜の仕込みは2時まで続いたけど、妙な達成感があったね。

必要だからこの時は飛び込んでったけど、普段は割と諦めてる。フランスに来たら、閉店時間には要注意!
あと、開店時間も「店員が出勤してきた時」なのですぐにお会計はできません。ビブラ・フランス!

おまけ おにぎり食べに来てくれたアーティストの人

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