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ラージャマウリ監督のおすすめ映画からRRRの元ネタを探す旅

 こんにちは、中島です。
 最近個人的な趣味で、S.S.ラージャマウリ監督のおすすめ映画を可能な限り全部観て、RRRとの関連を探すということをやっていました。
 わかったことをメモにまとめていきます。何かの話のタネになればと思います。
 ただ、私の個人的な見解が含まれており、記憶違いもあると思いますのでこのメモを元に何か新しい見解を作る時はご自分で元ネタを確認するようにお願いいたします。

 以下、各映画とRRRのネタバレが含まれます。
 各作品のあらすじはリンク先をご確認ください。

ロミオとジュリエット(シェイクスピア)
 正体を隠したまま主人公のふたりは出会って恋に落ちる。
 ヒロインは「おおロミオ、あなたはどうしてロミオなの」と悩む。
 バルコニーでの逢瀬のシーンがある。(ただしRRRではロミオがジュリエットを刺し、ジュリエットが手すりを破壊)
 ヒロインは毒を飲んで仮死状態になる。
 ヒロインは仮死状態で墓の中から復活する。
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マクベス(シェイクスピア)
 残酷な妻がいて夫の残酷さを代弁する。
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ブレイブハート(メルギブソン監督)
 主人公は羊飼いと呼ばれていて、民衆を鼓舞して戦う。
 主人公は敵のお姫様と恋に落ちる
 主人公は処刑の時吊るされたり体を裂かれそうになる。降伏するように何度も言われるが屈さない。
 主人公は処刑されて死ぬけど、残った敵方の王子がその姿に心を打たれ、遺志を継ぐ。
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フォレスト・ガンプ(スピルバーグ監督)
 国の歴史を踏まえてシナリオを書く
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レイダース失われたアーク(スピルバーグ監督)
 冒頭で縄でぶら下がるシーンがある。他のインディ・ジョーンズシリーズでもこれは必ず行われる、浮遊感というかスリルを楽しむために必須の演出。
 また、インディ・ジョーンズシリーズでは必ず裏切り者がいてハラハラ感が増す。(RRRではラーマとビームがお互いに裏切り者だった)
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カンフーパンダ
 高いところから縄でぶら下がってふりこのようになるアクション
 炎を手にまとって人を殴るアクション
 アクション中にスローになる演出。(ただこれはマトリックスや押井守監督作品にもある)
 キャラクターが縄を引っ張って、襲い掛かってくる虎を止めるシーンがある。
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七人の侍(黒澤明監督)
 冒頭は困ってる村人たちから映す。次のシーンではいきなりヒーロー登場にしてしまえば素早く感情移入できるから。
 敵対関係と緊張を描く。勢力図が複雑になるシーンでは、必ず地図を見せてどうなっているか話す。
 敵にさらわれて敵の妻にされてしまった女が、昔の夫に再会して絶望して自殺する。と言うシーンがある。
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隠し砦の三悪人(黒澤明監督)
 ピンチの切り返しが多い(もうだめかも→ピンチを切り抜ける)
 噂話でキャラ立てする
 前振りとその回収が多い
 テンションが高い時に高い場所へ登る
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ジャングルブック
 獣と額を合わせて挨拶するシーンがある
 ジャングルで、黒豹?と追いかけっこするところから始まる。
 主人公が虎と正面対決するシーンがある
 森の地面が炎の海になるシーンがある。
 ツルにターザンのようにぶら下がるシーンがある。
 主人公がえんじ色のパンツ一丁。
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アポカリプト(メル・ギブソン監督)
 主人公は森の中を半裸でダッシュしているシーンがオープニング。ただ、森がRRRより鬱蒼としていて走りにくそうなのでマウリ監督はよりスピード感を求めて森を選んだと思われます
 黒豹に襲われてダッシュするシーンがある
 猪を網で捕まえて吊り上げるシーンがある
 森を映す構図が似てる。上から徐々に下へ行く写し方など
 シェイクスピア的な入れ子構造がある。追うものと追われるもの、父と息子、反逆するものとされるもの。RRRではビームは虎を弟と呼び「利用する。すまない」と捕まえながら、ラーマに捕まり利用される立場になった。
 主人公は、妻と息子を村に動けない状態で置いてきてしまい、必死で村に戻る目的がある。RRRではそれを裏返した状態で、ビームはさらわれた娘を取り戻す目的がある。
 主人公は、敵数人に追われる。RRRではビームは数人の仲間と共に娘を追いかける。
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ジャンゴ 繋がれざるもの(タランティーノ監督)
 元奴隷の黒人の主人公が、奴隷商人のふりをする。奴隷に向かって偉そうな口をきく。 (黒人が黒人奴隷を差別する)
 主人公が白人に復讐するとき、屋敷を爆破して燃やしてしまう爽快エンドがある。
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イングロリアス・バスターズ(タランティーノ監督)
 実際には出会っていない史実の人物同士が、出会っていたらという設定がある。
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ベン・ハー 1959年版
 親友二人がdosti握りをするシーンがある。(ただ、古いローマを舞台にしたシェイクスピアの映画でも同じ握り方をみたことがあるので、昔の握手はこうだったのかも)
 親友二人が侵略する側、される側の立場にいて、友情が壊れ憎み合う。
 四頭だての白馬の馬車で競争をするシーンが有名。馬車が大破するシーンに迫力がある。
 イエス・キリストの処刑シーンがあり、主人公ベン・ハーの恨みが清められ心変わりする。
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 仲のいい二人の悪党が主人公で、前半バイクに乗りながら「Dosti〜(友情)」と歌うシーンがある。
 https://www.jaiho.jp/video/detail/ESULIB/R30R0W/

ライオンキング
 RRRへよりは、バーフバリに影響を与えているのではないかと思いました。父親から力を受け継ぐ、叔父と息子で権力を争うなどの設定部分。
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モーターサイクルダイアリーズ
 革命家・チェゲバラが友人とバイクの旅に出て、徐々に革命家としての心構えを育てていく。という心情を静かに描いたお話。バイクに二人乗りしているシーンが多い。
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水源(アイン・ランド著の小説)
 人に合わせるのではなく、自分の美学と完璧さを追い求め、自立した精神で創作をすべき。過去の作品を参考にしつつもさらに発展させるべき。という思想が何度も書かれている。
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考察・マウリ監督の映画の選び方
 ハリウッドのアカデミー賞受賞作品あたりはまんべんなく全て観ているのではないかなと思いました。ただ、RRRを作るときは、
・友情もの
・国の侵略や革命家に関するもの
・アクションシーンが派手なもの
 という条件をつけて参考映画を絞ったのだと思います。
 特徴的なのはアクションシーンで、スピルバーグのレイダース・失われたアーク風のスマートなキャラ立てに、カンフーパンダ風のアニメアクションを追加しようとするなど、突飛な組み合わせも本当にやってしまうのか感がすごいです。
 過去の映画の要素を本気で分析しないとできないだろうなという取り入れ方をしていて、その集約力と実現力がRRRに生かされているのだなと思いました。

各映画からのアレンジ方法と考え方 

 ※私の個人的予想が多く含まれます

 映画を鑑賞し、印象的なシーンをファイリングする。各シーンの印象の強さもメモしておく。

 俳優さんの得意な演技を羅列する。それを元にキャラクター設定を考える。 例)悲しげな目なので不遇な境遇が似合う、など
 それに合うような他の映画のキャラクター造形を研究する。
 ラーマの場合、ロミオとジュリエット、ジャンゴ繋がれざる者、ベン・ハー、映画に挙げていませんが敵の情婦タイプ(※)の造形。
 ビームの場合、アポカリプト、ブレイブハート、ジャングルブック。
 この時点で革命家が出てくる映画、独立闘争が舞台の映画、シェイクスピアの劇、ジャングルが舞台の映画をリストアップして見返していると思われます。
 ※敵の情婦の典型は、本当はいいヒロインが事情があって悪側の敵の情婦として主人公に出会う。主人公の中にかつての自分と同じ性質を見出し、主人公にほだされて主人公を助けてしまう。そのために敵に殺される。

 ハリウッドに受け入れられるよう、シェイクスピア型の話を選ぶ。RRRではロミオとジュリエットが選択された。
 インド映画のポイントを羅列し、独自色が強すぎる部分は捨てる。
  例)インド映画ではナンバーガールという本筋に関係ない女性が出てきて踊るが、外国人には関係がないのに何故出てきたのか理解できない。そういう部分は排除する。いい点(冒頭で脱ぐ、ダンスと歌がある、とか)は残す。

 ハリウッドで受け入れられやすいポイントを追加する。
  例)ハリウッドのアクション映画では宙吊りになるシーンが多い。インディ・ジョーンズシリーズでは全ての冒頭で宙吊りで振り子状態になるシーンがある。インドのアクション映画には(私が見た限りでは)そういうシーンはなく斧やカマで殴るシーンの方が多い。

 基本的にロミオとジュリエットに準拠で話が進むが、ラーマは警官なので刑事ものの流れが入る。ラッチュを捕まえて拷問しようとするシーン等。中心軌道と人物相関図を決める。
 中心軌道:ロミオとジュリエットのジュリエット視点で進む話、刑事物の流れで前半にミスリードを加える、毒で死んで一回死んで復活する。
 また、ビーム視点の話もあったと思われますが(おそらく特別な出自の主人公が仲間を得て戦う桃太郎型に近い話だったのではないかと予想しています)カットされる。

 中心軌道が決まったらアクションシーンを追加する。アクションシーンには前振りを2回、後ふりを2回程入れる。
  例)後半の肩車シーンの前振りとして、前半はボクシングをするラーマは腕が強い、虎と追いかけっこするビームは足が強い。という前振りがある。ラーマが懸垂するシーンと、ビームが屈伸するシーンも後半の肩車アクションの前振り。

 アクションシーンはテンションに応じて高い場所で行われるようにする。ヤグラに登ったり、橋に登ったりと言ったシーン。これは黒澤明の影響と思われます。

 ハリウッドと大衆に受け入れられるようストレスコントロールをする。
 インド映画のアクション映画では頭を叩き割ったり、斧で殴ったりというシーンが多い。RRRではそういう刺激の強すぎるシーンを可能な限り避けている。
 ラーマが拷問されるシーンでは足が殴られている時に足元は映さない。ビームが処刑されるシーンでも歌を歌って痛みを訴えたりはしない。ラッチュが拷問されるシーンではなぜかラーマが胸元をチラつかせてお色気が気になって拷問どころではない。
 
 この後は細かくシナリオを分解したり詰めたりしているのだと思いますが、見てきたわけではないので(というか私ならこういう風に作るという予想を書いたものなので)この辺にしておきます。

補足:不得意分野は捨てて得意分野を増やす
 ラージャマウリ監督の過去作をいくつか拝見しましたが、アクションシーンが得意で日常会話が不得意なのかなと言う印象を受けました。
 RRRでは日常会話が少なく、ラーマとビームが仲を深めるシーンは曲が流れミュージックビデオのようになっていて、何をしたかはわかりますが会話は想像するしかない。アクションシーンはとても多くなっている。

補足:リアリティを捨てる
 RRRでは脚本がおかしい部分があるが、勢いで押し切っていく。
 例えば、ラーマの兄貴分のマニが「ラーマから連絡が来ない!」とシータを責めるシーンがあるが、本当なら「うちの弟が本当にごめんね」と言う必要があるだろうに何故かマニはシータを責めている。
 シータが精神的に追い詰められ苦境にいる、と言う表現のためだと思うが、私がシータなら「お前んとこの弟の不始末ちゃうんかい」と言い返してしまう。リアリティを捨てて勢いを取ってもいいんだ……と学びました。

未確認の映画と本↓
アラジン
羅生門
マハーラーバタ
ラーマーヤナ
ギタンシャリ(詩集)
幻想市場 mayabazar
サンカラバラナム
ムンバイMBBS
山賊の女王


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