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箱根西山麓の温泉巡り

箱根の温泉と言えば、箱根七湯に加え、強羅や仙石原、芦ノ湖畔など名前は有名です。しかし、静岡側、箱根の西山麓にも、温泉は湧いているのでした。あまり有名ではない?!箱根の西山麓の温泉を巡ってみます!

富士山の見えるところに温泉は湧かない!?

学生時代お世話になった大学の先生で、箱根の山を若い頃から駆け回っていた方がおられまして、その教授が分筆されていた「箱根火山」。

1971年出版 絶版
「富士の見えるところに温泉はない」

箱根の火山、地震、温泉の専門書ですが、ここ↑↑にこんな一節が。伊豆と箱根の諺として紹介されています。温泉を探し当てるときの格言?
また、湯ヶ島層群という伊豆半島で二番目に古い地層の露出する所に温泉が湧くともいわれ、そんな地層が露出する所は谷間しかないので、そうなると富士山も見えないということになります。
箱根七湯はまさにそのとおりです。
箱根では、昭和の初めまで自然湧出の温泉を使っており、その後開発が進むも、ボーリングで100m程度掘って自然に温泉が出てこなけばよい温泉井戸とは言われなかったと。
しかしそんな時代も、今となっては昔のこと。掘削技術も進化し、現在では、どんな温泉があるのか、富士山の見える箱根西山麓の温泉を巡ってみましょう。

竹倉温泉、赤湯の「みなくち荘」

箱根の山麓に赤湯が出る?!
昨年、韮山の江川太郎左衛門の屋敷で初めて聞きました。

経緯は、以下の通り。
お万の方(養珠院ようじゅいん)と呼ばれた徳川家康の側室がいました。(「どうする家康」での家康の正室、築山殿の側室 於愛の方と並んでいたお万の方とは違う)家康が三島の本陣に泊まった際、その接待をして見初められたのがこのお万の方。そして、徳川家に入るには、源氏の流れを汲むものでないとだめだったらしく、お万の方は、一旦江川家の養女となり、その後、家康の側室となります。その家康、赤湯の出る本陣?湯宿?に泊まった!?
と聞き違えたようで、どうもそうではないようです。
そのお万の方にゆかりのある日蓮宗の妙法華寺が箱根の山麓に在り、そのすぐ下に、赤湯の湧く湯があるのだそうで…。
調べましたが、「お万の方」と赤湯は全然関係なさそう笑
それにしても、地元なのに、その赤湯の存在さえ知りませんでした。

本日は「いずっぱこ(伊豆箱根鉄道の愛称)」の三島広小路駅からスタート
三島市街のメインストリートは旧東海道

本陣もこの周辺にあり、家康も泊ったんですね。どんな迎え方したんだろう。遠方には箱根の山が見えます。

この辺りの雰囲気は昔から変わらず
広重 東海道五十三次 三島宿 朝霧 

自転車で走る事15分。目の前に箱根のふもとが見えてきました。

地名は「竹倉」手前に一山、奥には箱根の外輪山
急な坂道を登らねばならないのか!と思いきや、みなくち荘の看板で右折
昭和な感じの旅館ですが、今は日帰り温泉だけ
ロビーはこんな感じ なぜか鎧兜
お風呂は奥の方に…
脱衣所

ホントに赤湯だ!分析表によれば、単純鉄冷鉱泉。わずかに鉄の香り。

湯舟から富士山は見えないですが、田園風景見ながら入浴

開湯は昭和10年、昔はこのみなくち荘を入れて、3軒旅館がありましたが、今はこの一軒のみ。当然、加温していますが、身体の芯まで温まりそうな赤湯が箱根に出るとは…。
土曜に訪ねましたが、地元の方と思われる人もちらほら。是非、存続してほしい箱根山麓の稀有な泉質、竹倉温泉でした。

源泉 駒の湯荘

こちらは、畑毛温泉から南東の方、徒歩で30分ほどのところにある「駒の湯荘」。車でなければ「韮山駅」からレンタサイクルでのアプローチが一番。

中伊豆の山々を眺めながら
カカシ? 人柱?! 怖い…
この辺りはいちごの産地なのですが、最近はいちご狩り出来る窓口は一つしかない…
あの山の谷の中を目指します!
奈古谷の集落を抜けて行きます こういう集落も静岡では希少種になってきた
左手に谷川が見えて来て、鬱蒼とした針葉樹を抜けると
見えてきました「源泉 駒の湯荘」
今は日帰り温泉のみ 3.11の時に計画停電が続き、やむなく日帰り温泉に…、こんなところにも影響があったとは

小学校1,2年の頃に、何度か、じいちゃん、ばあちゃんと尋ねた思い出の場所で、その時にも日帰り湯治のような感覚だったので、ホント懐かしい。
若主人に
「ここ、初めてですか?」と聞かれ、
「いや、40年くらい前に何度か来ました、道の反対側に露天風呂ありましたよね」と伝えたら、
「おぉ、それは、本当に40年前ですね!」と。

円形の浴場で、半分ずつ男女で分かれています (駒の湯荘HPより)

こちらは、ぬる湯の名湯と言われて、Ph9.2の強アルカリ性の単純泉。飲泉も可。源泉は38℃なので、そこまでぬるいという感じではないですが、沸かし湯と交互に入りながら、ゆっくりできます。

内湯は5つの湯舟、露天風呂も4つの湯舟
内湯も露天も浴槽が多くて、贅沢な作り (駒の湯荘HPより)

料金は2時間の料金から、大部屋の休憩室や個室利用もでき、湯治場のようにゆっくりできます。昔使った時は、大部屋で、結構な人がくつろいで、半日以上過ごしたような…。

座敷の休憩室だけでなく、ロッジ風の場所も
あり、軽食も食べることが出来る

帰りは、大女将さんがいらして、昔話に花が咲きました。こちら開館したのは、昭和50年ということで、当時もいい温泉が湧いたとかいう噂が聞こえてきて、来た記憶があります。
露天風呂はもともと源泉やぐらの近くにあり、少し旅館からは歩きました。
女将さん「あの頃の露天風呂は混浴でしたね」と、確かにいろんな人が入っていた記憶が!
そうそう、記憶をたどれば、生まれて初めて入った露天風呂がここで、露天風呂ってこんなに賑やかにいろんな人が入るもんだと思ってました笑

中伊豆の隠れ名湯へ是非!!

箱根峠の温泉?!富士箱根ランド

冒頭の格言を思い切り覆す峠の温泉。箱根峠から車で数分、南に下ったところに「富士箱根ランド」という施設があります。学生の頃に訪れた場所ですが、こんなところにも温泉があるのかと、当時も驚きのロケーション。

箱根の西側の外輪山 箱根峠から熱海方面へ向かう途中(国土地理院 GSI Mapsより)
富士山もばっちりでしたが…

かれこれ10年ぶりに、友人と訪ねましたが、なんと廃業…。HPはまだ存在していたのですが、どうも2024年、2月、3月くらいで閉館している模様。

体育館、プール、ホールあり、ボーリングまでできた企業出資の大型宿泊施でした

高層ホテルの上部には、駿河湾と富士山を眺められるお風呂があり、源泉名は「箱根峠温泉」、強アルカリの単純泉。

スポーツした後に入ったお湯は最高でした! (HPより)
男女入れ替えのお風呂は、その名も「天空の湯」「天海の湯」(HPより)

このご時世なので、どこかが買収するなり、再び復活することを、祈りつつ、せっかくここまで来たので、十国峠へ。

なんとか天気も守られ、雲の中ではない
ケーブルカーで山頂へ
古風な車両、3分ほどで山頂駅 出発地点と2℃くらいは気温が違うか、肌寒い

十国峠、その名の通り、西は遠江、北は信濃、南は安房の方まで、十の国を見渡せるところからその名が付きました。眺めは如何に!

←こちらが伊豆方面 山頂には昭和な円形のテラス
手前、真鶴半島 箱根の裾野からつながっているのがよく分かります
半島の先、三ツ石までくっきり 遠方には湘南の海岸
富士山バックの撮影スポット 

富士山の右手前の山が愛鷹山。これはもともと成層火山だったので、富士山のような形をしていたんですが、風化して現在の姿に。富士山もいつの日かはそんな姿になるのでした。
ちなみに箱根も成層火山、「箱根火山」の本によれば、推定で標高は2,700mあったのではないかということ。

西側の眺めは最高です! 手前が丹那盆地 

丹那断層が走っているエリアも見れます。この断層、1930年の北伊豆地震で2mもズレました。丹那トンネルの工事中に、坑道が2m横にズレたのでした。新幹線で丹那トンネル通過するときには、地震来ないようにと祈らないとです(^^; (半ば本気で…)

三島・沼津から駿河湾、三保の松原の方まで
南側は伊東沖の手石島、大室山  初島、伊豆大島までの眺められました

寒くなって、円形の施設のカフェに。

十国にちなんで、「1059カフェ」 
テンゴク神社!? 日本人チャンポン好きです…
富士山カフェラテは丹那牛乳使用 濃厚な抹茶モンブランは本当にお茶のケーキ!

ということで、箱根の西山麓を巡るなら、ここは外せない場所でした!

大涌谷と並ぶ、箱根の大自然スポット「十国峠」

国民保養温泉 畑毛はたけ温泉

最後はこちら、箱根西山麓ではそれでも、一番名前が知れているのかどうか…、畑毛温泉です。最寄り駅は「いずっぱこ(伊豆箱根鉄道駿豆線)」の大場駅になります。こちらは静岡県内にある二つの国民保養地のうちの一つ。温泉街があるわけでもなく、宿泊施設が数軒あるという温泉場です。先に紹介した「源泉 駒の湯荘」も、ここのすぐそばになります。

まさに畑の中にある温泉場
温泉街はないけれど、昔はそれでも少し歩けたのか…
畑毛温泉エリア 何の変哲もない新しめの住宅地の只中にあります

本日の日帰り温泉は、「誠山」。もとは「高橋別館」という宿からフルリフォームして開業。湯治を推奨しているので、静かに浸かりたい方はロングステイのプランもあります。

2時間700円(土日+100円)から丸一日は1,000円
館内は新しいですが、昔の旅館の雰囲気はのこしています

畑毛温泉は、ぬるゆの名湯、源頼朝が軍馬を癒したという言い伝えや江戸中期の文献にも湯治の記録があるようで、開湯は400年以上前とのこと。若山牧水は「長湯して飽かぬこの湯のぬるき湯にひたりて安き心なりけり」と詠じました。
源泉が30℃なので、温度の異なる加温した湯舟がいくつかあり、長~く、ゆっくり浸かれます。

内風呂は三つ、露天風呂が一つ 弱アルカリ性の単純泉(誠山HPより)
鶯の声を聴きながら、癒されました~(誠山HPより)

現在、畑毛温泉は、3軒の宿があるようです。昔はどのくらいあったのか。
誠山からすぐそばの、こちらの「富士見館」もなかなかイイ感じで、次回は訪ねてみたい。湯治場なので、質素な食事で良いんです。

創業は明治43年 富士が見える「富士見館」

ということで、珍しく今回の温泉巡り総評。
これからの季節、夏は宿泊なら畑毛温泉!一択。日帰り温泉なら、涼しげな針葉樹に囲まれた露天風呂&森林浴も満喫できる駒の湯荘。秋から冬は体の芯から温まりそうな赤湯でどうでしょう~
以上、箱根西山麓、穴場の温泉巡りでした! (2024.3-5)


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