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愛ちゃんとの食事

ここには、あまりお洒落なお店がなかった。しかし、どこで食事をするか迷う必要がなかった。だって、夜に開いている店がスナック1つしかなかったから。

「あら~先生!お連れさんいるの?」

「ええ。」

「あらっ、愛ちゃん‼️まあ、そういうことぉ?     こっちへ、いらっしゃい。」

ママはは昔、居酒屋をやっていた。カラオケのマシーンを入れるとき、居酒屋の一部をリフォームしてスナックを開いたらしい。珍しいカップルの来店に気をきかせて、居酒屋として使っていた所を貸切として使わせてくれた。

「愛ちゃん、良かったねぇ。いい人見つけたじゃない‼️」

「うふふ、ママ、ありがと!」

「せまい街だから、気をつけてねー」

笑顔で話すママに感謝した。後に、この言葉の重みを知ることになるとは思ってもいなかったが。

愛ちゃんは、全くお酒を飲まない。というか、飲めない。ビールを小さなコップで少し飲んでも顔が真っ赤になり、ひっくり返るらしい。腕に注射するとき、消毒のためのアルコール綿で拭かれると、真っ赤になるというから本物だ。

楽しい雰囲気で飲んだ後、気づけばスナックの客も帰り、夜も更けていた。ママにお礼をして店をでると、辺りはシーンと静まり返っている。愛ちゃんに何かあったらまずいと思い、家まで送ることにした。言葉を交わすこともなく、しばらく歩くと、

「ここ。家なの。」

「今日はありがとう。楽しかった。また、飲もうね。」

愛ちゃんは続けた。

「お茶でも飲んでいく?」

「あ、いや~。お父さん、お母さんに迷惑かけちゃう…から。」

「今日は出掛けてるの。私、一人だよ。」

「いや~でも。うん。」

誰もいないひんやりした家にお邪魔すると、愛ちゃんがお茶をいれてくれた。帰り道、言葉も交わさず歩いてきたからか、二人とも溢れるように話した。話疲れた頃、しばらくの間シーンとした。愛ちゃんは私にきいてきた。

「誰か付き合ってる人いるの?」

「いや、いないよ。なんで?」

「そうなんだ…。」

愛ちゃんとは、話も合うし楽しい。片方の髪を留め、耳だけ出した姿もかわいい。好きになっている自分に気付いていたが、なかなか好きと言えず、もじもじしていた。愛ちゃんは続けた。

「私のことどう思ってる?」

「どうって?人だと思ってるけど…。」

「プッ。当たり前。そうじゃなくて、どうしたいの?」

「どうしたい?これからも仲良く…したい…。」

「愛も仲良くしたいと思ってる。」

「ふーん。」

「ふーん、じゃなくてさあ💕」

「うん、愛ちゃんのこと、好き。」

「愛も先生が好きだよ。」

煮え切らない態度の私に、意地悪い顔をしている愛ちゃんだった。






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