#207 【便秘集中講義】第11回:高齢者の便通改善を手助けするBifidobacterium longum。
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現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠
便秘集中講義の第11回は、高齢者の便秘改善を目的としたBifidobacterium longum BB536のプロバイオティクスとしての効果を明らかにした研究をご紹介します!Bifidobacterium longumを含む乳製品は日本においても簡単に入手することができます。本研究は順天堂大学医学部と森永乳業の共同研究なので、Bifidobacterium longumの利用価値を明らかにするモチベーションが伺えます。研究成果は、2023年3月1日に発表の"Usefulness of Bifidobacterium longum BB536 in Elderly Individuals With Chronic Constipation: A Randomized Controlled Trial"から確認できます。開示するべきCOIはありません。
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Bifidobacterium longum
Bifidobacterium longum(ロンガム菌)は超有名な乳酸菌であり、ビフィズス属菌です。ロンガム菌は、ヒトを始めとした動物の腸管に存在する嫌気性細菌です。ヤクルトの研究では、ロンガム菌は母親から乳児に受け継がれることや、高齢になるまで腸内に生存することが有名です。
ロンガム菌については、#183にて詳しく解説しているので御覧ください。
試験の対象者とデザイン
試験の対象者は、65歳以上の男女の高齢者、Rome IV診断基準により機能性便秘か便秘型過敏性腸症候群に診断された患者、便秘スコアリングの仕組みであるConstipation Scoring Systemスコアが6以上の患者をすべて満たし、インフォームド・コンセントに同意した方になります。特定の疾患を患っている場合には、除外基準に則り試験の対象外になる場合があります。
試験方法は、無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、対象者80名についてロンガム菌BB536株プロバイオティクス投与群(N=39)とプラセボ群(N=41)に振り分けた上で、最大4週間の投与をします。平均年齢はプロバイオティクス投与群で78.1歳、プラセボ群で77.9歳でした。
以前お話しましたが、高齢者においては男性の2/3、女性の3/4が便秘です。したがって、高齢者における便秘の改善を目的としたプロバイオティクスやプレバイオティクスの開発ができれば、多くの日本人のQOLを向上させることが期待されます。
プロバイオティクス投与の結果CSSが減少傾向に
CSSでは最低点を0点、最も便秘であることを最高点の30点として表現した指標で、排便頻度や排便に伴う痛み、残便感や腹痛などにより評価します。
評価の結果、排便頻度の増加(p = 0.008)、排便の失敗の減少(p=0.0051)が確認される一方、排便時の痛みや残便感についてなどは有意な減少が確認されませんでした。CSSの合計点から傾向を見ると、プロバイオティクスの摂取によって便秘が改善傾向にあるとのことでした。
プロバイオティクスによる介入に伴って、Clostridiaceae科の増加とCoprococcusの減少が確認されました。有害事象として死亡事例はありませんでしたが、プロバイオティクス群とプラセボ群のそれぞれで、下痢が1例確認されたとのことです。
本研究は、統計的に有意な便通の改善効果が確認された上で、「B. longum BB536のサプリメントが、高齢者の慢性便秘の改善に安全かつ部分的に有効であることを示唆」すると締めくくっています。
今後、前回紹介したようなラクチュロースの併用など、シンバイオティクスとしての効果を確認することで、より劇的な便秘改善効果が期待できるかもしれません。
以上、高齢者の便通改善を手助けするBifidobacterium longumについてのお話でした!
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また次回、お会いしましょう!
本日も一日、お疲れさまでした。
参考文献
Takeda, Tsutomu et al. “Usefulness of Bifidobacterium longum BB536 in Elderly Individuals With Chronic Constipation: A Randomized Controlled Trial.” The American journal of gastroenterology vol. 118,3 (2023): 561-568. doi:10.14309/ajg.0000000000002028
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