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惚れたが、最後、地獄行き

 芸術に惚れたが、最後、地獄行きは間逃れなかった。高校3年生の頃、私は自分に自信がなかった。絶望していたし、腐っていた。そんなときに君を見かけた。見た瞬間、これまでの暗く辛い日々に、希望の炎が灯ったような気さえした。同時に君は他の人の花嫁でもあった。

 そこからは不幸であり幸せな恋が始まった。君は常に他人の花嫁でありながら、美しい。君は分け隔てることなく、誰でも愛した。だから、僕のことも愛してはくれたけれど、他の人のことも愛した。でも、あなたが淫らに私の上に乗ることはなかった。常にあなたは、ふかふかな椅子にもたれかけ、さながら、細い指をその美しい頬に乗せ、優しく微笑むだけだった。

 それでも、私はよかった。あなたに愛されることが、いつしか私の生きる歓びになり、私はあなたに尽くした。それでも、あなたは私以外も、分け隔てることはなく、愛した。私は嫉妬の炎で焼き焦がれるようになった。いつからか、あなたの愛がもっと欲しいと思うようになった。でも、そんなことはどうでもいいのだ。芸術、君は儚くも永遠であり、美しくも醜い。君は私にとって最上の恋人であり、全ての人の花嫁だ。僕は本当に君におかしくされそうだけれど、それでも君が必要だし、芸術こそが生きる歓びだ。

 僕が何をしなくたって、君は美しく、人を愛し、人に愛され生きるだろう。それでも、僕は君のことをずっとずっと愛しているし、君の幸せを心の底から祈っている。芸術、君はいつも僕の前にはいない。時折、気まぐれに現れて、僕に微笑みかける。その顔に僕は一生、身体を硬直させ、動機は速くなり、目眩を起こし、そして恍惚と君を見つめるに違いないのだろうから。

この詩を同士、ギルバート・ジョージに捧げる。

2022.09.20.
作家の日記

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