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【六寸刻文皿】の道行

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2020年に発表した「八寸丸皿 百果刻文」を小さくリサイズした「六寸丸皿 百果刻文」の道行です。様々なフルーツをレリーフ状に彫刻したデザインで、製法である「圧力鋳込」や「石膏型」… もっと読む
本マガジンは「上出長右衛門窯の道行」からの抜粋です。月額500円/初月無料の「上出長右衛門窯の道行… もっと詳しく
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記事一覧

【六寸刻文皿】の道行#14「ハマ落ち」

こんにちは。上出惠悟です。 今年、創業143年になる私達が今座っている席には、かつては違う人が仕事をしていました。六代目である私ばかりが注目されがちですが、当然職人達も皆代替わりしています。彼らに血縁関係はありませんが、先人とも言える前任者達の仕事を受け継ぎ、同じ方向を向いてその仕事と毎日向き合い続けています。 窯まつりが閉幕してはや2週間が経ちました。今年の窯まつりで私は、初日の朝礼で「おめでとうございます」と皆に伝えました。窯まつりが果たして成功するか否か、何も判らな

【六寸刻文皿】の道行#13「プレ販売」

こんにちは。上出惠悟です。 前回お伝えした通り、窯まつりの現地でプレ販売しました「六寸百果刻文皿」ですが、おかげさまで道行を読んで下さっている方を中心に(きっと!)多くの方に手にとっていただけました。出来立てほやほやの新作でしたので、反応があったことはとても嬉しいです。使ってみた方は是非ご感想などもお待ちしています。 窯まつりへ来れなかった道行ご同行者の皆様には、9days Shopを利用して道行限定のプレ販売を行いたいと思います。お買い物には下記のパスワードが必要です。

【六寸刻文皿】の道行#12「百果」

こんにちは。上出惠悟です。 そして六寸刻文皿は焼き上がりました。難なく無事に。 これまで道行の購読されている方以外には伏せていましたが、「六寸刻文皿」は「六寸百果刻文皿」のことで、既に販売している「八寸百果刻文皿」の二回り小さなお皿つくり(開発)の工程を約5ヶ月に渡ってお届けして来たのでした。 焼き上がりはなかなか良く、八寸同様レリーフが美しく浮かび上がっています。2枚を重ねてみますとこんな感じになります。六寸皿は使い勝手が良く、あれやこれやと、何を盛り付けようか楽しく

【六寸刻文皿】の道行#11「型が完成」

こんにちは。上出惠悟です。 少し前に編集者の知人の依頼で「感情」というテーマのエッセイを書きました。私は感情をあまり表に出すことが得意ではなく、内に溜め込んでしまうタイプでして、感情と言われて思い出されるのは幼い日から今日までのネガティブなことばかり。到底書きたいと思える内容ではなく随分と悩んでしまいました。 そんなエッセイを掲載した雑誌が発売になっているので、興味がある方は是非ご覧ください。amazonでも販売しているそうです。 他の雑誌では金沢の美味しいお菓子をご紹

【六寸刻文皿】の道行#10「楽しい型もの」

こんにちは。上出惠悟です。 皆様にとって身近な”型”とは何でしょうか? クッキーやタルトなど焼き菓子の型が思い浮かびますが、私たちの身の回りにある多くの物は型から作られています。型とは原形(オリジナル)を複製(コピー)する為の基(もと)になる物です。周りを見回してみてください。オリジナルなのか、コピーなのか、そう考えて物と接すると少し見え方が変わるかも知れません。 人類が”型”を用いてものづくりを始めたのはいつからなのでしょうか。インターネットで簡単に調べてみると、紀元

【六寸刻文皿】の道行#9「春と塵(原形完成)」

こんにちは。上出惠悟です。 20数年前のちょうど今頃、金沢の高校を卒業した私は美術予備校へ通うべく親元を離れ、名古屋へ向かいました。卒業式が終わっても浪人を許さなかった父は、話し合いの末に「たまには手紙を寄こせ」と言って送り出してくれました。最初の手紙には北村という友人ができたと書きました。結局浪人中、私が父に手紙を書いたのはその一通だけだったように思います。これが私という旅のはじまり。その後の柴田との出会いも、親友や妻との出会いもこの特別な春からはじまりました。名古屋へ向

【六寸刻文皿】の道行#8「原形完成」

こんにちは。上出惠悟です。 日々確かな春の訪れを感じていますが、石川県は北陸らしい三寒四温の気候がまだまだ続いています。皆様のお住まいの地域はもう暖かいでしょうか。 本noteは「道行」と称して、上出長右衛門窯の新作制作の㊙︎作業日誌をお届けしています。ものづくりを”旅”と捉え、その旅路にご同行頂ける方(購読者)を募集しています。私たちがどのような考えも持ち、何を大切にしているのか、その一端を覗き見ることができるのではないかと思います。 さて、前回お届けした工程より5日

【六寸刻文皿】の道行#7「祈りと光」

こんにちは。上出惠悟です。 ”焼物”とは文字通り”焼かれた物”で、人がどんなに手ずから粘土を捏ねて成形し、何日掛けて絵付を施そうが、最後は窯の火で焼かねばなりません。窯で焼くことで粘土が石質になります。これを”焼成”と言います。磁器の焼成温度はおよそ1300度。焼いている最中の窯をご覧になったことがある方はご存知かも知れませんが、高温になると火は赤ではなく白くて眩しい光のようになります。ウイルスはもちろん、どんな生物も燃えてしまう光の洗礼を浴びて、見違える姿で窯から出てくる

【六寸刻文皿】の道行#6「我らの道すじ」

こんにちは。上出惠悟です。 2月24日の朝、しばしの休息を得た私は、嬉野の露天温泉に浸かりながら贅沢に空を見上げていました。美しい青空でしたが、なんだか雲の動きが慌ただしいようで、遠くの空の下で暴力に震えている人たちを想像しました。彼らの苦しみを思うととても心が痛みます。 どんな国にもその土地の文化や伝統があり、それらを育み育まれた命があります。微力な私でも文化で世界を繋げようと、明るい世界をつくろうと命を燃やして来たつもりでした。尊敬する多くの仲間たちも、これまで私が影

【六寸刻文皿】の道行#5「Time Lapse→」

こんにちは。上出惠悟です。 先日仲の良い友人がニューヨークへ旅立ちました。予備校で出会い、大学卒業まで多くの時間を共に過ごした友人です。卒業後は立場も環境も変わり、私たちは違う場所で社会の波にたくさん揉まれました。片時、お互いの姿が見えなくなっても、波が去って気がつけばまた傍にいて、ゆらゆらと揺られているような、彼とはそんな不思議な縁を感じます。40歳という年齢になっても、新しい世界に身を投じようとする彼を尊敬しますし、純粋に羨ましいと思っています。窯元を継いだ私にとって外

【六寸刻文皿】の道行#4「九谷と絵付/先人の道行②」

こんにちは。上出惠悟です。 「九谷焼は絵付を離れて存在せず」という言葉を生んだ先人たちの道行を、前回に続けてお届けします。皆様がきっと知らないであろう九谷焼と絵付についての歩み、今回は近現代編です。 基本的にお皿の絵付には、装飾という美的な価値の他に機能はありません。そしてこの装飾、美しさこそが九谷焼の真髄なのです。絵で埋め尽くされた古九谷がゴッホなどの西洋画に喩えられるのは、古九谷の余白を活かさない美があるのかも知れません(※古九谷の全てが絵で埋め尽くされている訳ではあ

【六寸刻文皿】の道行#3「九谷と絵付/先人の道行①」

こんにちは。上出惠悟です。 「九谷焼は絵付を離れて存在せず」という言葉がこの産地にはあります。なぜこのような言葉が生まれたのか、今回は少し立ち止まって考えてみたいと思います。九谷焼と絵付の歴史について書いているので、少し退屈に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとだけ我慢してお付き合いいただけますと幸いです。 九谷焼の源流となるのは、今からおよそ360年前につくられた「古九谷」という色絵磁器です。古九谷は現在の石川県加賀市にある雪深い山間の村で、大聖寺藩の藩営と

【六寸刻文皿】の道行#2「切なる思い」

こんにちは。上出惠悟です。 一週間も家を空けるのはコロナ禍になって初めてのことだったかも知れません。松の内も過ぎたばかりの北海道と大阪へ立て続けに行って来ました。大阪は毎年恒例の阪急うめだでの催事ですが、北海道は初の試みとして、石狩湾に面する港街・小樽へ。私が15年来親しくさせてもらっているMABOROSHI・GEN GEN AN幻(ENTEA・丸若屋)の丸若裕俊さんと、京都で茶筒をつくる開化堂の六代目・八木隆裕さんとでイベントを行いました。会場となったのは喫茶フルールとい

【六寸刻文皿】の道行#1「年の瀬に始まる真っ直ぐの道」

こんにちは。上出惠悟です。 年の瀬、皆様は如何お過ごしでしょうか?会社は仕事納めをしましたが、私はやり残したことがあるようで、まだ振り返る心持ちにはなれません。古くなったほうじ茶をフライパンで煎り直したり、お気に入りの玩具を手元に置いたりしながら、小さな満足を繰り返しています。 リアルタイムで新作の制作プロセスを皆様にお伝えする試み「上出長右衛門窯の道行」、その新シリーズ「六寸刻文皿」を本日よりスタートさせたいと思います。宜しくご同行頂けましたら幸いです。またその他にも、