【無料掲載】轆轤と熊のまつりに寄せるテキスト「熊に宿る道」
私が住む石川県能美市でも、里や住宅地にクマが現れるようになってどれくらい経つだろうか。「え、こんなところに?」というような場所にも彼らは忽然と姿を見せる。多くはきっと、人目に触れることなく川伝いにやってくるのだろう。クマの語源の一説に「隈(くま)」がある。奥まった所、物陰の暗いところ、光と陰が接する部分という意味だ。クマは陽が陰む時間帯に、あの真っ黒な軀で薮や、叢(くさむら)に現れる動物だった。昔の人はクマを、あの世とこの世を行き来するマレビト、異界の神と捉えていたようだ。