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上出長右衛門窯の道行

現在進行中の新作開発の紆余曲折するストーリーを、テキスト、写真でお伝えしています。旅は道連れ世は情け。これまで秘密にしていた新作とそのアイディア、プロセスを上出長右衛門窯六代目・… もっと読む
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記事一覧

【干支水滴 辰】の道行#3「前例を参照せよ」

【干支水滴 辰】の道行#3「前例を参照せよ」

こんにちは。上出惠悟です。

1年以上続いていた原因不明の咳がどういう訳か治ったので、ずっとやりたいと思っていた朗読会をこのクリスマスに開催することにしました。年末でお忙しいことと思いますが、宜しければいらしてくださいね。皆様にお会いできますのを楽しみにしております。

さて、まさかの全3話となってしまった「干支水滴 辰」完結編です。ではどうぞ。

【干支水滴 辰】の道行#2「バイオリンの先端部分」

【干支水滴 辰】の道行#2「バイオリンの先端部分」

こんにちは。上出惠悟です。

犬を散歩させながらTシャツで運動場を駆ける子供達を見ていたのは昨日のこと。もう12月になるというのに暖かく、来年の干支に纏わる商品をご紹介しておきながらも暦とのギャップに驚いている2023年11月末日です。皆様は如何お過ごしでしょうか。

現在来年の干支である辰年の水滴の道行(開発ストーリー)をお届けしています。もう既に販売しておりますので、是非お手にとって頂ければと

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【干支水滴 辰】の道行#1「真っ直ぐ進む道」

【干支水滴 辰】の道行#1「真っ直ぐ進む道」

こんにちは。上出惠悟です。

【窯まつり・絵付】の道行の完結を未だお見せ出来ていませんが、この道行を始める際の問いであった「なぜ私たちは手で作るのか」という大きなテーマがまだ纏められていませんので、今回は発売目前の【干支水滴 辰】の道行をお届けしたいと思います。

寅年、卯年と2年続けて書いて来ました「干支水滴」の道行ですので、新しい年の水滴も楽しみにされていた方も多いのではないかと思うのですが、

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【窯まつり・絵付】の道行#11「歴史とつながる」

【窯まつり・絵付】の道行#11「歴史とつながる」

こんにちは。上出惠悟です。

今年2月に始まった今回の道行もそろそろ終盤です。これまで絵付場で活躍する3人の女性を紹介して参りましたが如何でしたでしょうか。上出長右衛門窯で働いている私達がどんな人間で、どうしてここで働いているのか、少しでも身近に感じて頂けていたら嬉しいです。

ここで初めて読んでいる方に少しだけご説明すると、このnote「上出長右衛門窯の道行」は、私達がこれから発表しようとする新

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【窯まつり・絵付】の道行#10「もっと練習を」

【窯まつり・絵付】の道行#10「もっと練習を」

こんにちは。上出惠悟です。

いよいよ第2回目の轆轤(ろくろ)まつりが始まります。今回からはコロナ前と同じフリー入場制になるので、是非多くの方にお越しいただきたいです。16回を数える窯まつりに比べればまだまだ手探り状態ですが、轆轤師を中心に職人たちは張り切って準備をしています。轆轤まつりはこれまで華やかな絵付の影に隠れている轆轤に光を当てようと企画されました。改めて考えてみれば、回転する台の上に乗

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【窯まつり・絵付】の道行#9「奥出のサンプル」

【窯まつり・絵付】の道行#9「奥出のサンプル」

こんにちは。上出惠悟です。

突然ですが、皆様は墨の匂いはお好きですか?

多くの大人にとって墨や硯はもうあまり触れることのないものかも知れませんが、私やその他の九谷焼作家にとっては、墨はかなり身近なものと言えると思います。墨は焼くときれいに燃えてなくなるので絵付の際に下描きに使いますし、木箱への箱書きや熨斗書きなどかなり頻繁に活躍します。

それに加え、私は最近になって水墨画を始めました。水墨画

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【窯まつり・絵付】の道行#8「犬も恐れる20代」

【窯まつり・絵付】の道行#8「犬も恐れる20代」

こんにちは。上出惠悟です。

現代の「働く」という感覚からは随分ズレているかもしれませんが、職人の仕事は生きることの延長線にあって欲しいと私は考えています。それを教えてくれたのは昨年亡くなった轆轤(ろくろ)師の河田の姿です。河田は何十年も長右衛門窯の敷地内で畑を耕して野菜を育てていました。轆轤仕事を終えれば暗くなるまで畑仕事をし、休日も窯に来てはよく土を触っていました。腕に技術を持っている職人とい

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【窯まつり・絵付】の道行#7「一手間+一手間」

【窯まつり・絵付】の道行#7「一手間+一手間」

こんにちは。上出惠悟です。

突然ですが、皆様はこれまで悲しみをどう堪えて乗り越えて来られたでしょうか。

ニュースを見ていると度々悲しい事故や事件が報道されます。特にこの季節は夏休み中の子供達が犠牲になることが多く、親御さんの想いを考えると居た堪れない気持ちになります。それでも私達は深く傷付いたその方の心に、自分の心を重ね合わせる事しか出来ません。私達の心はそして身体も、誰かと成り代わることは出

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【窯まつり・絵付】の道行#6「基本と応用」

【窯まつり・絵付】の道行#6「基本と応用」

こんにちは。上出惠悟です。

私の住む石川県は日本で最も多く雷が発生する地域だそうです。雷の研究者にとっては非常に良い環境だというような事を以前に耳にしたことがあります。しかし雷を嫌う犬にとっては最悪な環境だと言えるかもしれません。私が飼っている二匹の小さな犬達も異常に雷を怖がっていつもぶるぶると震えて可哀想です。特に兄のかめちよは雷が鳴ると恐れおののき、我を失ったかのように高いところへ登りたがる

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【窯まつり・絵付】の道行#5「普通ができない」

【窯まつり・絵付】の道行#5「普通ができない」

こんにちは。上出惠悟です。

実は窯まつり限定品としてこれまでお客様からの要望が最も多かったのは丼鉢でした。うどんやラーメン、天丼、親子丼などを食べるためのものです。窯まつりで売り場に立っていると「丼ってないの?」というお声を何度も聞きます。そんな声を頂いていたにも関わらず、これまで作って来なかったのは上出長右衛門窯が割烹食器を作ってきた窯元だからです。ご存知の通り、今では「割烹」という料理人に向

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【窯まつり・絵付】の道行#4「伝えること」

【窯まつり・絵付】の道行#4「伝えること」

こんにちは。上出惠悟です。

金沢に上出長右衛門窯のお店(その名も金沢長右衛門)ができたことで、これまで以上に私達のことを多くの方に知ってもらう機会が増えました。また外国の方も驚く程に多く旅行されているので、コミニュケーションの仕方も今後変わって来ることを実感しています。これまで日本の方に対しては「九谷焼のことを知っている」もしくは「聞いたことがある」という大きな前提がありましたが、外国の方にはそ

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【窯まつり・絵付】の道行#3「窯まつり限定品のデザイン」

【窯まつり・絵付】の道行#3「窯まつり限定品のデザイン」

こんにちは。上出惠悟です。

ちょろちょろと田圃に水が張られるといよいよ窯まつりがやって来ます。毎日寒暖の差が激しく気候がいつもと違う感じがしますが、まつりが開催される5月2日から5日は過ごしやすいお天気が続くようにと願うばかりです。

窯まつりの企画や運営は窯まつり実行委員が進めますが、直前にもなれば窯のスタッフ総動員で、お客様を窯へお迎えする準備をします。大変な作業ですが、職人たちはどこかわく

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【窯まつり・絵付】の道行#2「なぜ人の手で作るのか」

【窯まつり・絵付】の道行#2「なぜ人の手で作るのか」

こんにちは。上出惠悟です。

2019年の夏にEN TEAの丸若裕俊さんに「楽しい会」だと連れて行かれたお店で私は2人と出会いました。場所は白金にあるお店。

1人は千葉麻里絵さん、GEM by motoというお店で長年お店に立ちながら、全国の日本酒の蔵元を巡り日本酒にまつわるプロデュースや書籍の出版などを精力的に行っている方です。最近、独立されてEUREKA!という素敵なお店を西麻布に昨年の11

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【窯まつり・絵付】の道行#1「心の絵」

【窯まつり・絵付】の道行#1「心の絵」

こんにちは。上出惠悟です。

2018年のパリ、ポンピドゥーセンター(国立近代美術館)で私は1枚の油絵に目を奪われました。それは「La quai de Paris in Rouen」という絵で作者はアルベール・マルケ(1875年-1947年)。大きな橋のかかった埠頭を描いた風景画でした。日頃絵を見て、巧いと思うことはあっても、好きだと感じる絵に出会うことはあまり多くありません。私は何と良い絵だろう

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