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笙野頼子『放火予告を「免れて」います』②

①は下記よりご覧ください。

3 燃やさない焚書、最初からいなかった?私の本

 というわけで今回もまた私の本だけは「ヘイトではありません(引用)」、今まで通りブックファースト等の大型書店(丸善・ジュンク含)に置かれていて、時に平積みにされています。文学枠、これは発想と流通の抜け道と言えますかね。え?
 「でも、本当に大丈夫なんですか?今後はどうなりますか」って?
 そうです、2018年末から今に至るまで、私はこの件で燃やさぬ焚書に苦しめられてきました。
 例えばいくら新米とはいえ読むのが仕事のはずの知らない評論家から、なんと「読んでないけど差別的(要約)」とか言われてしまい、またある時は書店の客を装って店内に侵入した活動家から、「ヘイト本め」と電子万引きされてネットで無料で晒され、また、私をも含むTERF全体へのツイートでは、「顔に刺青しろ」、「収容所に入れろ」「人ではないから焼却炉行き(要約)」など。さすが「ハイデガー界隈」としか言いようがない世界。
 でもともかく一般社会においてはそんな評論家もまたいないも同然、小部数でも大型書店に長くあった私の本を本屋さんは今までのように置いてくれました。

 ことに、今回の『解禁随筆集』は一見反ジェンダー本には見えない装丁です。使っているサフラジェットカラーも他称TERFたちさえ気付かない程にさり気ないです。しかも一見関係ないテーマが前に出ていて、見るからに人畜無害の文学エッセイ。だけれどもページを捲ればこれが私の今出来る反ジェンダー活動です。それと同時に、私の文章は……。
 43年前のデビュー作から今まで、時には法案本会議当日の官邸メールまでも、一貫した私の文学です。なおかつ文学で書く事は、ベトコンが木の葉で偽装するように有効でもあります。但し、文学枠の中にいれば結局、文壇内部及びその実行部隊、勝手連である文壇最末端のTRAに攻撃されます。
 そもそも運の悪い事に文壇とTRAはずぶずぶであり、学術も文壇もだだ被りです。戦う反米文学者(=貧乏難病杖付き老婆)は身辺を敵に囲まれています。なのでむしろそれを利用して一時期、メールで連絡出来る何人かと議論しようとしたこともあったのです。が、……。

 その時から既に、相手はノーディベートでした。「ああ、これはキリスト教唯心論がもたらした文化革命だ、こいつらこれで出世街道まっしぐらのつもりだ」とその時に納得、ある意味文壇末端は文壇上層部よりも汚いと実感しました。つまりネットの実働部隊は、頼まれなくてもこの末端がやっているという事です。
 ていうか、文学の中にいてTERFをやるのは、当然の義務であるとともに最大の困難だなと。その上その他に私には左翼枠もあるのでそこからも嫌がらせが来ます。結局内部で叩き合うという構造です。とはいえ私は彼らを既に左翼とは呼びがたい。あれは今や原型もとどめない溶けた、死んだ何かですね。
 少女を犠牲にした被害を告発する本、そこに放火予告をしているやつまでいるという最低の状況。そんな中、暴力に抵抗して戦うTERF達を「ヘイター」だと言ってのける、左翼、左翼?その神経が私には判りません。さて、……。

4 比戸賀史奴造と火付素留代

 今回この「トランスジェンダーになりたい少女たち」を焚書にしようという理由を知りたくて書名からヤフー検索をしてみました。つまりあの本についてだけは放火まで行く理由を知りたかった。すると結局根本はノーディベートでした。「疑問もったらヘイト」って話だと思った。そしてやはりいつものように「人が史奴ぞー」、「比戸賀史奴造」と言っていました。そう、……。
 ヒトガシヌゾー、ひとがしぬぞう、比戸賀史奴造御一行様、と私は覚えている。もう人間の名前も同然、既にキャラがある、……。
 だけれどもね、そもそも人が死ぬかもしれないからってその本を売っている場所に、放火予告とは一体何事か?その理由が比戸賀史奴造だなんて。そしてさらにまたその脅しもいつの間にか火付けするよ、ヒツケスルヨー、火付素留代と私の耳に名前化してきます。
 で、火事になったら死人が出るとは考えないの? そもそも「本を売ったら死人が出る確率」と「大型書店で放火して死人が出る確率」はどっちが高いですか?ていつのまにか私は聞いてしまっている。ていうかあなた、放火って言うとこれまさに火付け盗賊の火付けですよね? 愉快犯の多いあの放火犯ですよね? と確認したくもなる。さらにすべての質問の後に、こういう質問もヘイトなんですか? と付けたくなっている。やれやれ、ノー議論、ノー質問、何様?比戸賀史奴造様?

 結局、『トランスジェンダーになりたい少女たち』は本当に既に人を殺しているんですか? 或いは未来に出るかもしれない死人のために火付素留代っていう事なんですか? 或いは火付けせんがために比戸賀史奴造を言い訳やレトリックに使っているのですか?——と聞けば聞く程「質問はヘイト」、「ヘイター」にされてゆく。
 書店にやって来る妊婦、老人、絵本の好きな幼児までも火あぶりにすると言いたいのですか? これってまさに「正義の焼け野原」ですが?米帝の好きそうな状況ではないですかね? え、これ全部質問されて自殺したい程の「ヘイト」なのですか?無論、……。
 これ自体が「ターフの陰謀でわざとトランス達が憎まれるように仕向けているのだ」という説も今出ています。しかしもしそうだとしたらそういう犯罪をする者こそが「ヘイター」へのなりすまし、偽の反ジェンダーなのではないのでしょうか? 
 本来ならトランスの権利に敏感な方はむしろ、書店を擁護する活動をして、もしデータに本当に一点誤りでもあるというのならそこを議論して、この放火予告をもっと批判するべきではないでしょうか? まったくこれ一体どっちが危険なのだか。まあ私の書いているものもずーっと比戸賀史奴造様のお怒りに触れていまして、……。

③は下記からご覧いただけます。


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