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東大教育学研究科の対策と予想問題集 〜教育心理学コース編〜

つい先日、私立の他大学から東大の院試を受験し、無事合格することができました。理系の受験者の体験談や勉強方法などはブログや記事で散見されるのですが、文系の記事は思ったより少なかった(ただの確認不足?)ので、せっかくなので使った参考書や勉強時間などをnoteに記そうと思います。この記事を見てくださっているのは院試を控えている方や、受験を考えている方、試験前の不安を拭いたい方など様々だと思いますが息抜き程度に見ていただけると幸いです。

この記事では、①扱った参考書・勉強法今考えてこれを勉強したらもっと楽だったと思う本を紹介します(情報として少し古くなりつつあるので、有料記事から無料記事に変更させていただきました。それに伴い、予想問題集も非公開とさせていただきます。こちらは有料で購入された方のためにも、購入してくださった方以外に公開する予定はありませんのでご了承ください)。

はじめに

申し遅れました、Sta_noteと申します。一浪して関西の私立大学に入学。大学3年の頃、某リサーチ会社のサマーインターンをきっかけに、数学が全くわからない状態にも関わらず心理統計学に興味を持ち、大学院に進もうと決意しました(8月)。

その後、東京大学の院試を受験しようと考え動き始めたのは3年生の11月ごろ(院試を購入/先輩の体験談を聞く程度)で、勉強を本格的にはじめたのは4~5月からでした。文系の大学生は基本就職するので、周りに大学院に行く人は一人もおらず、モチベーション管理や情報収集との戦いに苦戦しましたのを今でも鮮明に覚えています。学部時代の先輩や今所属している研究室の先輩の助けもあり、大学院で東大の教育学研究科教育心理学コースで心理統計について研究することが無事決定しました。

院試の勉強を始めるに至って、その人の基礎学力に応じて勉強法は大きく変わると思います。内部生は受かりやすいという話もあちこちで聞きますが、やはり基礎学力が高いため院試を楽々受かる能力を持っている人が”受験生全般より平均的に多い”に尽きると思います。もちろん、情報量についても左右されるのはいうまでもありません。この記事では情報量についてある程度は補えるように書いたつもりです。ただし、僕が持っている情報は2020年度までの情報しかありません。最新の情報については、自ら足を運んで(Zoomでも可)先生や先輩に話を聞くのが一番だと思います。

では早速内容に入っていきたいのですが、僕自身がどのように勉強し、どのような文献・教材を用いて院試に挑んだのかざっくりとお話ししようと思います。

受験対策(前提条件)

先に述べると院試は普通に落ちます。特に教育学研究科は倍率も高い(例年3~4倍)ので、一次の筆記試験が悪かった時点で落とされ二次試験にも進めないようになっています。今年の教育学研究科は約290名が受験し、最終残ったのが83名でした。ですから、変な1〜2ヶ月の勉強で受かるといった変なアドバイスを受け入れずに、しっかりと余裕のある時期から計画的に対策を練っていきましょう。自分は外部で情報も少ないので、前年11月には過去問を5年分購入し、積極的に院生の先輩からアドバイスや過去問の解答をもらったりしました(この節は本当にお世話になりました🙇‍♂️)。

以下では文献を中心に紹介しますが、これらの文献はもちろんのこと、志望する先生の論文についてもしっかりと熟読することを強くお勧めします。

英語受験対策(教育学研究科共通)

対策に用いた参考書は以下の一冊のみです。

教育学研究科の英語では心理学特有の単語はそれほど出てこない印象ですが、目次に記載されている中では「発達心理学」「研究法・統計学」「学習心理学」「認知心理学」「性格・知能」「動機付け・感情心理学」「一般用語」を覚えていくと良いかと思います(自身の論文を読むときにも参考になりますのでおすすめです)。

自分のゼミでは積極的に英語の論文を読ませる文化があるので、大学4年前期までには約40本の英語論文を読んでいたと思います。ですのでこれといった英語の勉強はそれ以外行っておらず、院試対策の時間のほとんどを専門科目に費やしていました。

院試の当日は、長文和訳が一切出題されずに共通問題を英語で出題されたことに加え、かなり長い長文を日本語600字で要約しなさいといった問題に変更されていたのでかなり驚きました。

ざっくりではありますが、どのように解いたのか軽く紹介します。前提として、解答フォーラムでは文字カウントもマスもありません。従って、一行あたり何文字×何行あれば600文字になるのか自ら把握する必要があります(記憶が正しければ一行あたり80文字書けたので、だいたい七行書ければ大丈夫かと思われます)。自分の場合、長文の各パラグラフの一行目をそれぞれ和訳し、統合すると580文字くらいでうまく収まったので、おそらくこの方法で十分解けるのではないかと思います。

また、英文法や読解に自信のないかたは以下の参考書がおすすめです。

全て勉強する時間があれば良いですが、大学院入試に挑まれる方ならある程度の読解力はあると思います。従って、苦手な構文を集中的に勉強したりかいつまんで学習すれば十分だと思います。

そして、英語の勉強法として僕が重要だと感じたものは、院進後に行おうと考えている研究ないしは研究テーマに基づいてその分野の論文を英語で読む訓練を日頃から習慣づけることも大事だと思います。論文を読むにあたって必要な知識として①英単語力、②英文読解力、③心理学の知識、④要点把握力が総合的に必要になりますから、単語、読解の練習と並行して積極的に読むことをお勧めします。さらに、二時試験でも最近読んだ英語論文で面白かったものは何か?と僕自身も質問されたのでたくさん読んで置くことをお勧めします。研究計画書にも活きてきます。

心理学分野全般の受験対策(*教育心理学コースの場合なので他のコース受験の方は注意してください)

共通問題・選択問題において、「発達心理学」「認知心理学」「教育心理学」「学習心理学」を問われる問題がありますが、選択問題においては5問中3問の選択なので、自信のある分野に絞って学習を進めるのも戦略としてアリだと、いやむしろ推奨します。自分が用いた参考書は以下の通りです。

5つ全て何周も勉強しましたが、特に「発達と学習」を中心的な教材として使いました。これらの教材に加えて、東大の先生方の論文を読んで勉強を進められれば、間違いなく3問はカバーできると思います。自分の場合、心理統計に一問を費やすことが確定していたので、他の2問だけ解ければ良いといった感じでした。ちなみに志望する先生が作成する問題は解かなくても総合点が合格点を上回っていれば大丈夫だそうです(研究室の先輩がそうでした)。

過去問を逐次確認しながら、問題を解くためにはどのような読み方・覚え方をすれば良いのだろうかといった点に注意すれば学習が進むと思います。

受験対策(共通問題・心理統計)←臨床心理学における心理統計の対策にも有用

対策に用いた本は以下の通りです。

特に「心理統計学の基礎」「伝えるための心理統計」「岩波データサイエンスの因果推論」は必須中の必須だと思います。心理統計の問題を選択するのであれば「Rによる項目反応理論」も重要です。中に記載されている演習問題がそのまま過去問に載っていたのでこれからもここから出題される可能性も高いと考えられます。

「心理統計学の基礎」は基礎と書かれていますが、内容はハードであり一朝一夕で身につくものではありません。また、本質的な理解が院試では問われるため、「心理統計学ワークブック」を用いて理解の定着を促すと良いでしょう。選択問題における心理統計の問題を解く予定が無い方にも、共通問題では因果推論の問題が出題される傾向が近年増加しているので「岩波データサイエンスの因果推論」は必ず読んでおきましょう。「欠測データの統計科学」はあまり重きを置かなくても大丈夫だと思います。余力があれば過去問を参照しながら確認しましょう。

学習の役に立ったブログ・サイト

こちらは論述ってなんぞや?どうやって書けばええんや?といった人には特にお勧めです。院試の一ヶ月前くらいに運よく見つけることができましたが、論述の型を学ぶことができ、一気に力がつきました。研究計画書を書くための技術もつくと思います。

こちらのブログは東大の教育学研究科における院試の流れや筆者自身の対策法、山の張り方などが細かく書かれたものです。ゼミ見学の流れ(コロナ以前ですが)や、出願の流れも記載されているので読まない手はないでしょう。お勧めです。

こちらではパラグラフライティングについてのコツが解説されています。やはり論述問題が多い教育学研究科ではパラグラフライティングができていないと大幅に減点される可能性が高いので、一読する価値は大いにあると思います。論述の型を身につけるためにとてもためになる記事です。

【共通問題対策としての文献重要度まとめ】

発達と学習=心理統計学の基礎 > 志望する先生の文献(論文) > 伝えるための心理統計=心理統計学ワークブック > キーワード集 > 岩波データサイエンス >>> 欠測データの統計科学

といった感じでしょうか。専門科目は得意(もしくは志望する)先生の文献を買いましょう。

一次試験(筆記)

以上、長々と対策方法を述べましたが、ここでは当日の感想を手短に述べたいと思います。

今年(2021年度)の試験はコロナにより、オンライン試験となりました。zoomが試験室となり、送信されたURLから解答フォームに移動し問題を解くという形で行われました。それによる試験方式や内容の変化によって個人的には非常に難しい試験になっていました(要約問題は人生で一度も解いたことが無いし、統計の問題では計算問題が出題されたことで頭が真っ白になりました)。一次試験が終了した後、家族と友達には「まあ落ちたから、また半年頑張るわ〜」と本気で落ちたことを確信して電話してました(笑)。一次試験の合格者発表までの2日間はずっとベッドに寝転がって無気力な状態。twitterで「院試 落ちた」のツイートをひたすら見ているという時間が過ぎてました。

結果発表の日は大学の院ゼミが対面であって、みんなの前で結果を見て報告するというなんとも地獄な空間でしたが、何にも緊張しませんでした。なぜなら落ちていると確信していたからです。しかし、奇跡的にも自分の番号が載っており、研究室の院生と先生に祝福されて初めてなぜか緊張してきたと同時に「あ、ヤバイ。二次試験の対策全くしてない...」という危機感に襲われました。

発表翌日の朝に面接で時間がなかったのでとりあえず研究についての整理と一般的な質問に対するシミュレーションをして、当日に備えました。

二次試験(面接)

迎えた当日。面接は志望理由や志望する先生、研究についての深堀りと知識の確認といった形で進められました。また、上述の通り「最近読んだ英語論文の中で興味深かったものを教えてください」という質問を投げかけられたり、僕の先輩や同期ですと「尤度とは何か」「実験と調査の違いはどこにあるか」などの質問をされた方もいらっしゃったようです。このように淡々と質問がされ、かなり難しい内容から答えられる内容まで様々でしたが、わからないことはわからないと素直に白状(?)することを心がけました。時間は計15分程度で終わったので「え?これだけ?」と思いつつも、「あぁ、とうとう院試に向けてやるべきことが終わったな〜。受かっていればの話だけど」といった気持ちになりました。最終的に友達4人と一緒に自分の番号を確認してみんなで大喜びしたことは一生忘れない思い出になりました。

まとめ

院試は大変ですが、大学受験と異なり自分の関心のある分野について勉強できるのである程度モチベーションは高く維持できるかなと思います。塾や院試の対策用の参考書がない中大変なことも多いですが時間があまりない中、以下のことについて注意すれば良いかと思います。おさらいですが、

①英語は心理英単語をざっと終わらせ、英語論文を読む習慣をつける(英文法や英文読解は苦手ならその分野に絞って復習する)

②「発達と学習」「心理統計学の基礎」「教育心理学コースに所属する先生の論文」を中心に学習を進め、必要に応じてキーワード集や対策する分野(言語心理学/発達心理学/心理統計学etc..)の学習を進める

③面接では志望する指導教官とのミスマッチを防ぐべく、「自分のしたい研究は何か」「それについての専門知識はあるか」などの自分自身の研究について深掘りする

の3点をしっかり押さえておけば周りとしっかり差をつけられるのではないでしょうか。

学部生からストレートで院進を考えている人、社会人を経て院進を考えている人など様々ではあると思いますが、皆さんにとって有益な情報をお送りできたのであればこれ以上に嬉しいことはありません。


終わりに

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。この記事が誰か一人でもお役に立てるのであれば、これ以上に嬉しいことはありません。自分自身、院生の方々や先生に本当にお世話になった経験から自分も還元したい気持ちでこの記事を書くことを決めました。

思い返せば、院試の勉強は楽しくも、また非常に辛かったことが多かったです。コロナによってろくに人とあえず、孤独な時間が長かったので精神的にきつい時期もありました。自分は頭は良い方では無いので(偏差値50そこそこの高校で400人中398位)、誰よりも頑張らないといけないという一心でなんとか前に進むことができました。勉強時間の管理をしつつモチベーションをなんとか保ち、半年で1600時間は勉強しました。変態を除き、おそらく大半の人が院試はつらく、大変なものであると思います。この記事が今読んでくださっているあなたのためになることを心から祈っています。

長々と冗長な文章であったと思いますが、ここまで読んでくださった方ありがとうございます。院試に合格した際にはまた一言いただけると嬉しいです。研究室でお会いできることを楽しみにしております。

Sta_note


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