見出し画像

【コンサル業界研究】総論②デジタル市場で戦略ファームvs総合ファームの競争が激化(前編)

どうも、外資系うさぎのちょこさんです。
今回も業界総論として、コンサル市場の規模や、昨今の主要なトレンドについてまとめていきたいと思います。
特に、COVID-19対策によるドラスティックな環境変化もあり、戦略ファームの実行支援フェーズへの拡大、総合ファームの戦略制定フェーズへの拡大、その結果としての提案の場での競合は、更に激化の一途を辿るものと思います。
これからも市場の動向には目が離せませんね。
※前回、主要プレイヤーの紹介、も予告に書きましたが、分量がえげつないことになりそうだったので次回以降に取り上げることにしました。

なお、前回に引き続き、この記事も有料設定していますが、全文無料で読むことができます。もしいいねと思っていただけた場合は、ちょこさんの大好物のおいしいチョコレートを一粒調達するための費用としてカンパいただけると大変うれしいです。

書いていて、全体で8,000字くらいのボリュームになってしまったので今回の記事は前後編とします。
後編もまもなく公開しますので、是非あわせて業界研究にお役立てください。
※まとめスライドは後編に添付します。

それでは、本編をどうぞ。

前回のおさらい

早速ですが下記スライド(再掲)をご覧ください。

画像1

前回は、クライアントマネジメントのどのレイヤーに対してコンサルティングサービスを提供しているかによってコンサルティングファームの分類が決まる、というお話をしました。
トップマネジメント向けの戦略コンサルティング、ミドルマネジメント向けの経営/業務コンサルティング…といった具合ですね。

ただ、この分類はMECE感を満たせるかというとそうでもないのと、経営コンサルティングって言葉は戦略コンサルティング、業務コンサルティング、ITコンサルティング全てカバーする、という解釈もあるので、言葉の定義って結構難しいんですよね…

とはいえ、ここの細かい解釈について論じていても話が進まないので、トップマネジメント=戦略コンサルティングミドルマネジメント=経営/業務/ITコンサルティングロワーマネジメント=サービスデリバリーという定義を仮置したまま今後の話を進めていきたいと思います。


コンサル市場の規模およびサービス種別内訳から見るトレンド

IT専門調査会社であるIDC Japanが2020年6月に下記のとおり2018年〜2024年の国内コンサルティング市場規模予測を発表しています。

IDC_コンサル市場規模

出典:国内コンサルティングサービス市場 支出予想額:2018年〜2024年(IDC)

2020年で8,000億円程度、2024年で10,000億円程度の市場規模になると予測されています。
ちなみに同程度の市場規模としては、食品添加物、お花、家庭用/オフィス用家具が代表的なもののようです。
ちょこさんもこちらから調べましたが、今知りました。

話を本筋に戻しましょう…。

まず、特筆すべき点として、市場全体で見ると2020年にCOVID-19の影響による落ち込みが見られるものの、デジタル案件の規模は堅調に推移し、2021年以降更に成長を加速すると見られていることが挙げられます。

中でも、デジタル関連ビジネスコンサルティングよりもデジタル関連ITコンサルティングの拡大が大きい、また同時期にデジタル以外の業務/ITコンサルティングへの投資が減少している点からも、企業は新しいサービスの導入や従来の業務改善ではなく、リモートワークの導入を始めとした社内ITシステムの急速なデジタル化へ投資を集中していることが伺えます。

この記事を執筆している時点(2021年1月上旬)で、首都圏1都3県に対し緊急事態宣言が発出されていますし、当面収束する見通しも立っていないことから、今後もフルリモートの達成に向けた社内システムのデジタル化、収益減少を見越したコスト削減のためのデジタルツールの導入など、デジタル関連ITコンサルティング案件の需要は一層高まっていくでしょう。

ちなみに、デジタルトランスフォーメーションという言葉の定義も人によって扱い方が異なるようですが、ここでは上記のIDC Japanが提唱し、経済産業省も採用している定義をひとつ紹介しておきます。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内
部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラ
ットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソ
ーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデ
ルを通して
、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図る
ことで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

出典:デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会の報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』をとりまとめました(経済産業省)

新しい製品やサービス、ビジネスモデルの開発がキーとなるので、社内システムのデジタル化(RPA、AIなど)は厳密には含まれないのでしょうが、こっちはこっちで重要なテーマなので、今回はここもDXとしておきましょう。
社内システムのデジタル化もDXに含まれる、いいね?

ちなみに、ちょこさん個人の体感だと、2016〜2017年頃からRPAやAIのPoCブームが始まり、2018年〜2019年で一気に本番導入が広がった、という印象です。
これを読んでいただいている社会人各位も、その頃に社内で「DXはじめました」みたいな標語とか見かけたのではないでしょうか。

PoCについて
Proof of Conceptの略で概念実証という意味。
戦略仮説・コンセプトの検証工程で、要は「こんなテクノロジーを使ってこんなビジネス、業務をやりたいけどちゃんと動くの?」ってのをごく簡単なシステムなどを組んで使えそうか使えなそうか判断するフェーズです。
通常、PoCで実現可能と判断されたら、改めて導入計画を立て、要件定義し、パイロット開発のうえ本格的な導入に移ります。


戦略ファームvs総合ファームの競争が一層激化

で、ここからどう戦略ファームと総合ファームの競争につながっていくか、というお話に移っていきます。

時系列が前後するのですが、2010年代前半のコンサル業界の大きなニュースのひとつに総合ファームによる戦略ファームの買収劇を挙げる業界関係者は少なくないと思います。
また、2010年代後半では、一部の戦略ファームがデジタル部隊を新設し、業務の実行支援まで担える組織へと体制の拡大を図ってきました。

2010年代、ERPやクラウドの導入をはじめとしたITコンサルティング案件へのニーズの高まり、さらにコンサルティングサービスのコモディティ化も進み、それぞれのファームが従来どおりのサービスのみを提供するだけでは生き残っていけない時代となりました。

戦略ファームは実行支援へ、総合ファームは戦略制定へ、それぞれ参入していくことは必然だったと言えるでしょう。
そして、間違いなく2020年代の主戦場はデジタルトランスフォーメーションです。

次のセクションからは、戦略ファーム、総合ファームがどのように拡大を図ってきたか、について解説しましょう。


実行支援まで取りに行きたい戦略ファーム

冒頭のおさらいでも触れたように、戦略ファームがターゲットとしているのはクライアントのトップマネジメントです。
そのトップマネジメント相手に、Why/Whatを問う新規事業、全社戦略などのコンサルティング案件を仕掛けていくのが彼らのミッションです。

先程、デジタルトランスフォーメーションのキーとなる要素は、新しい製品やサービス、ビジネスモデルの開発であると紹介しました。
そうです、戦略ファームは従来型の全社戦略などのコンサルティング案件に加え、デジタルテクノロジーを活用したビジネスモデルの開発を手掛けていかなければならないのです。

日々あたらしいテクノロジーが市場に投入される今日においては、企業はスピード感をもって採用するツールを見極め、PoCにより実現可能性を検証し、競合他社より速やかに新しいサービスを市場に提供できるか、で今後の成長、生き残りが左右されます。

従来型の戦略制定のみ行って、実行フェーズはクライアントの社内体制で、もしくは総合系ファームの業務コンサルティング部隊が引き継ぐ体制では到底スピード感をもったサービスの投入が実現できないため、戦略ファームは戦略制定のみならず、PoC以降サービスインへ向けた実行支援までデリバリーしきれるコンピテンシーを獲得することが課題となってきます。

具体的例を紹介しましょう。

マッキンゼーはデジタル新規事業構築のコンピテンシーを持つマッキンゼー・デジタル、従来の戦略ファームでは手掛けていなかった実行支援を担うマッキンゼーインプリメンテーションという組織を設立し、両組織とも急速に成長しています。

一方で、BCGもクライアントの全社的なDX推進を支援するデジタルBCG Japanという組織、サービス投入までの実行支援でなく、クライアントとジョイントベンチャーを設立しビジネスの成長までコミットするBCGデジタルベンチャーズという法人を新設しています。

その結果、両ファームとも2015年頃には日本法人の規模200〜300人に対し、現在ではマッキンゼーが約400人、BCGが約800人と大きく成長し、特に国内においては相対的にBCGのプレゼンスが高まっているようです。

これを読んでいるITコンサル業界の各位も、転職エージェントがマッキンゼーやBCGの案件をやたら紹介してくる、といったシーンを目にしたことがあるのではないでしょうか。

その他の主要戦略ファームであるベイン、カーニー、ローランドベルガーの日本法人が100〜200人規模であることを考えると、マッキンゼー、BCGのこの人数は戦略ファームとしては異例と言えるでしょう。

以上、戦略ファームの動向です。


今回のまとめ

このあと、総合ファームの動向についても解説する予定だったのですが、文字数が多くなってしまったので、今回はここで分割します。

まもなく、後編も公開しますので、お楽しみに!

後編では下記を前編と同じくらいのボリュームで解説します
・戦略制定からの一気通貫のサービスを目指す総合ファーム
・業界に激震が走った総合ファームによる戦略ファームの買収劇
・そして今後はどうなるのか

※後編でました。


以下、カンパいただいた方向けにちょこさんお勧めのチョコレート屋さんのリンクを貼っておきます。
今回は日本酒が好きな方にお勧めです。


ここから先は

68字

¥ 500

この記事が参加している募集

いただいたサポート代はもれなくチョコレート代にあてさせていただきます!