【外資系うさぎの雑感】その6.あの"無限列車”のプロジェクト計画をたててみた
※添付スライド中の誤字をご指摘いただきましたので差し替えております
(3回目、2021/01/23-00:37)
どうも、外資系うさぎのちょこさんです。
前回、あの"パワハラ会議"の議事録を書いてみたところ、結構多くの方にみていただくことができたようで、大変うれしい限りです。
記事の購入、サポートをいただきました皆様、本当にありがとうございます。
さて、その前回作成した議事録の中で、決定事項として下弦の壱:魘夢に新たな任務が与えられたと書かれています。
議事録を書いておけば会議に参加していなかった人にもどういうことが決まったか分かるので便利ですね。
これを見ている各位もぜひきれいな議事録を書きましょう。
100本も書けばそれなりのものを書けるようになるので頑張ってください。
話をもどしまして、この後、魘夢さんは煉獄さんを300億の男にしたあの作戦を決行するわけですが、あんな大規模な作戦を結構するからにはそれなりの計画が必要だと思うんですよ。
計画のないプロジェクトなんて許されないので、ちょこさんが魘夢さんにかわって、無惨様に提出するためのプロジェクト計画書を作ってみました。
スライドボリュームはこれくらいあるので、覚悟を決めてから読むことを推奨します。
というわけで、今回はこのサンプルをベースに、プロジェクト計画書の書き方について語っていきたいと思います。
なお、毎度のことですが、この記事も有料設定していますが、全文無料で読むことができます。もしいいねと思っていただけた場合は、ちょこさんの大好物のおいしいチョコレートを一粒調達するための費用としてカンパいただけると大変うれしいです。
ちなみに、有料エリアに今回作成したスライドをPDFで一式まとめたものを格納してあります。
ご興味あります方は、ぜひ記事のご購入をご検討いただけますと幸いです。
ネタバレについて
もはやこの映画のネタバレを気にする必要があるのか、と素朴な疑問もわいてくるのですが、一応、注意書きです。
ここから先は劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の内容について壮大なネタバレが含まれています。
未履修の各位はご了承のうえ御覧ください。
原作コミックスでは7巻、8巻が無限列車編に該当するので、ぜひこちらの記事と併せて読んでみてください。
では、本編…の前にちょっとした前説からどうぞ。
まず、そもそもプロジェクトって?
いきなり本筋から外れますが、この先のプロジェクト計画書の解説をよりよく理解いただくために、まずは簡単にプロジェクトとは何か、という説明をします。
今回も文字数がとても長くなりそうですが、頑張って読んでください。
ちなみに、前回のパワハラ会議の議事録の回はだいたい5,500文字くらいでした。
さらにちなみに、本編まだ始まっていないのに既に1,000文字くらい消費しています。
では気を取り直して、プロジェクトとは何か、PMI(プロジェクトマネジメント協会)というグローバルでスタンダードなプロジェクトをマネージするためのフレームワークを作っている団体は以下のように定義しています。
要は、①目標と②期限があるものがプロジェクトということですね。
この目標も特定の製品やシステムがある必要はないので、例えば「次の定期テストで90点以上を取る」、「就活で複数の会社から内定を得る」なども立派なプロジェクトになります。
魘夢さんの場合は、①無惨様から課せられた"鬼狩りの柱"と"耳に花札のような飾りをつけた鬼狩り"を倒す、という目標があり、明確な期限は定められていないものの②時間をかけすぎてしまうと粛清されるおそれがある、ことから、これもプロジェクトであると言うことができるでしょう。
プロジェクトには5つのプロセス群がある
なぜ計画を立てることが必要なのか、まぁそんなの当たり前じゃないのと思うかもしれないですが、一応ちゃんとした定義があるのでそこもちらっと解説します。
こちらも同じく先程のPMIという団体の定義に沿いますが、プロジェクトには5つのプロセス群があり、それぞれのプロセス群で何をするべきかが定められています。
今回は、無惨様から既に目標と期限がある任務を命じられているので、1.立ち上げプロセス群が完了している段階です。
一般的には、この段階では、偉い人に"うん、いいね!"って言ってもらうために大まかな企画書(プロジェクト憲章といいます)を書きます。
したがって、魘夢さんは2.計画プロセス群から開始すればよいわけです。
色々と端折って説明しますと、2.計画プロセス群では1.立ち上げプロセス群で作成したプロジェクト憲章に沿って、更に詳細なプロジェクトマネジメント計画書を作成することがメイン作業です。
いわゆるプロジェクト計画書を作るって言われる行為はだいたいこれを指します。
無惨様からは、目標だけを提示されている状態なので、それをどうやって達成するか具体的な計画を立てるってことですね。
プロジェクトマネジメントとは
まだまだ前提知識編です。
このあたりをしっかり読んでおくとこのあとのスライド現物の解説が頭に入りやすくなるので、もうちょっと頑張ってお付き合いください。
とはいえ、ここをガチで解説しだすと厚めの本が一冊書けてしまうので、全集中・雷の呼吸、壱ノ型、霹靂一閃のごとくサササッと解説済ませてしまいます。
先ほどから何度も登場しているPMIという団体では、プロジェクトマネジメントを効果的に達成するための、10個の知識エリアというものを定めています。
ここは結構細かいので名前だけ列挙します。
が、だいたい詳細説明も名前のとおりなのでイメージしやすいかと思います。
で、これがなんで大事なのかというと、これらのうち、どれか一つでも疎かにしてしまうと、そのプロジェクトが失敗するリスクが一気にあがってしまうことになります。
それはもうド派手です。
つまりは、プロジェクトを成功させるためには、上記10個の知識エリアについて漏れなく理解し、管理・コントロールしていく必要があるということです。
で、何が大事なの?(前置きの結論)
というわけで、ここまでで、プロジェクトのライフライクルにおける5つのステップ(プロセス群)と、プロジェクトマネジメントのための10の観点(知識エリア)の解説を行いました。
今回はプロジェクト計画書を作成する、というnoteでしたね。
そして、勘のいい各位はもうお気づきでしょうが、プロジェクトを成功に導くためのプロジェクト計画書を作成するには、上記の10の観点を漏れなく盛り込む必要がある、ということなのです。
はい、以上前置きです!
ここまででだいたい3,300文字なので読み疲れた人はちょっと休憩挟んでも良いかもしれません。
それでは、プロジェクト計画書の解説に移ります(PMBOK詳しい方はここまで飛ばしてきて大丈夫です)
おまたせしました、ようやく本編の本編です。
なんかもう何を言っているのかわからない感がありますね。
では、各ページ見ていきましょう。
こういったプロジェクト計画書でプロジェクトマネージャの写真を全面に押し出すことは普通しないのですが、この方、映画にも出てますし、どのような能力でプロジェクトを進めていくのかわかりやすく覚えていただくのも大事ってことでまぁよいでしょう!
インパクトって大事です!
1.プロジェクト背景、課題および対応策
では最初のページです!
ここでは、例のパワハラ会議で無惨様より指摘を受けた事項を、①十二鬼月としての自覚が足りない、②無惨様への貢献度が低い、といった2つの課題に整理してみました。
そこから、課題→原因→打ち手、と深堀りを進めていきます。
ロジカルシンキングってやつですね。
原因、打ち手は必ずしも1:1の関係にはならないので、それぞれの関係性を忘れずにしめしましょう。
こうすることで、どの打ち手がどのようなロジックで課題の解消に繋がるか、を簡潔に描けることになります。
2.スコープ
続いて、スコープです。
ここでは、最初のページで示した打ち手に対して、成果物とKGIを定めることで、何をもってその打ち手が成功したと言えるか、を客観的に定義しています。
強くなる、だと主観的な表現で人(鬼)によって価値基準が違うので、具体的に上弦の鬼と同程度を目指すこととして、そのために必要な人の数は大まかにフェルミ推定的な手口により導き出すことにしました。
こういうのは数字の正確さよりもそれらしい根拠をもって数字を出すことが大事です。
更に、全ての打ち手を一気に達成しようとするとキャパオーバーになって破綻するおそれがあるので、打ち手ごとにフェーズを分割し、魘夢さんにはまずはたくさんの人間を食べることに集中してもらって、さっさと強くなってもらうことにしましょう。
KGIという言葉は馴染みがないかもしれないですが、Key Goal Indicatorの略で、目標が達成されたかを図る指標になります。
たとえば、目標が「次の定期テストで90点以上を取る」であればテストの点数、「就活で複数の会社から内定を得る」であれば獲得した内定の数、がKGIになりますね。
ちなみに、KPI(Key Performance Indicator)はKGIの下位に位置する指標で、目標達成に必要な活動(業績)の達成度合いを図るものとなります。
目標が「次の定期テストで90点以上を取る」であれば毎日の勉強時間、、「就活で複数の会社から内定を得る」であれば選考を受けた数、などがKPIとして考えられます。
3.フェーズ1におけるタスク
次は、具体的なタスクです。
一番大事なところはここでしょうかね。
どんなタスクをどんなスケジュール感で行うのか、ここで失敗するとブラック企業でおなじみのデスマーチ直行になってしまいます。
まずはフェーズ1で行うことを大きく4つのステップに分け、何をするのかという概要と、それのイメージ図を添えてみました。
何をするのか、文字だけだとどうしても伝わりづらいので、簡単な図をつけて説明する、というのはよくあることです。
ポンチ絵というやつですね。
いらすとやさんに助けられている社内プロジェクト担当者はきっと星の数ほどいるものと思われます。
ちょこさんもいつもお世話になっています。
実際には上記のような書き方では細かいタスクの管理ができないので、WBS(Work Breakdown Structure)というタスクを分解したリストを作成します。
※WBSの右側にガントチャートというカレンダー型の進捗管理表をつないだものを作成するのが一般的だと思います。
WBSはパワポで管理するのには向かないので、Excelで作ったものを抜粋してスライドに貼り付けている、という体にしています。
コンサルファームに入った人や何かしらのプロジェクトマネージャを任された人は漏れなくこのWBS(+ガントチャート)が夢に出てくるまで書かされることになります。
ここも細かく解説しようとすると本ができてしまう気がするので、このくらいに留めておきます。
4.体制
ここでは、どういう人達がプロジェクトを進めるのか、また誰が誰にレポートするのかの関係性を示す体制図を作成しています。
左の図では、線でつながっているひとつ上の人にレポートします。
いわゆる上司です。
Twitter上だとよくヘイトを向けられている人たちですね。
この人数規模は、コンサル案件だとちょっと大きめ、SI案件だとだいぶ小さめ、でしょうか。
加えて、各チームがどのようなロール(役割)を持っているかの説明も記載するのですが、今回は図示することにしました。
実際はRACI図いうものを作成して誰が何に責任を追っているのか、を表にしたりしますが、今回は割愛します。
5.品質管理・コミュニケーション
え、こんなの書くの、って思った方、いるんじゃないでしょうか。
人の数が増えれば増えるほど意思疎通にかかるコストが増大するので、「このプロジェクトではこんな会議を開きます、対象者はちゃんと出席して必要な意思決定とかやってね」と予め決めておいて、進捗を報告したり課題を相談したり、偉い人に方針を決めてもらったりします。
これを決めていないと、いざ何かを決めたいときに誰が何を決めればいいかわからなくて誰も何も決めようとしない、というお察しな状態になります。
こうなるともうプロジェクトはおしまいです。
このあたり、PMOのとても大事なお仕事になります。
6.リスク・課題
はい、こういうのも書くんです。
マイナスのことは分かりづらく書いて誤魔化そうと思ったそこのあなた。
バレた瞬間に容赦なく粛清されるので今日から心を入れ替えてマイナスのことほど速やかに上司に報告するようにしましょう。
上司の仕事には、いかにリスクや課題が燃え広がる前に解消するか、が含まれているので、そのリスクや課題を隠してしまった日にはそれはもう「許されない」の一言であとは目も当てられない事態になります。
リスクの対応方針(回避/低減/受容、とあと移転があります)については特に解説せず使っていますが、気になる人はぐぐってください。
リスクマネジメントもなかなかマニアックでおもしろいのでいつか解説したいですね。
サンプル数がそう多いわけではないですが、日本の会社ってこういうのあまり上手くない印象がありますね。
はい、スライドはここまでです
いかがでしたでしょうか。(って定型句のように書いてあるブログ、ちょこさんあまり好きになれないんですよね…)
スライド満載でしたが、無惨様から命ぜられた①無惨様から課せられた"鬼狩りの柱"と"耳に花札のような飾りをつけた鬼狩り"を倒すという目標を確実に達成するためには、本来これくらい細かい計画を立てる必要があるのです。
かなり飛ばし気味で色々語ってきましたが、プロジェクトとは何か、プロジェクトを成功に導くためのプロジェクトマネジメント、そしてプロジェクト計画書の作成はどのように行うべきか、少しはイメージが掴めたでしょうか。
果たして、このプロジェクト計画書はプロジェクトマネジメントの10の観点を満たしているのか
ここでまとめに入りそうな雰囲気だったのですが、もうちょっと頑張りましょう。
成果物(計画書も成果物です)は作りっぱなしではいけません。
そうです、セルフレビューです。
今回は簡単に、アジェンダの各項目と、プロジェクトマネジメントの10の観点がどのように紐付いていたか見てみましょう。
さらっと触れた程度ではありましたが、一応右側の10の観点(知識エリア)はちゃんと満たせていたようです。
本来であればコストのページは独立してちゃんと作るべきではあるのですが、無惨様これ以上成果をあげない限りお金も血もくれないと思うので、さらっと触れた程度で済ませました。
最後に
今度こそ本当に最終セクションです。
これまで解説してきたものは、さっきからちょくちょく出てきているPMIという団体が提唱するPMBOK(ピンボック)というプロジェクトマネジメントのためのフレームワークに準拠しています。
このPMBOKを極めると、PMP(Project Management Professional)やプロジェクトマネージャといったIT系の中でもかなり高難易度かつ上位の資格にチャレンジできるようになります。
両者の違いは管理団体がグローバルな組織か、日本の経産省配下の組織か、の違いです。
前者は海外でも通用し、後者は完全に日本国内向けですね。
もし興味を持った方がいましたら、ぜひ試験合格を目標とした息の長いプロジェクトを打ち立ててみてください。
ちょこさんも応援します。
オススメの一冊
あ、もう1セクションありました。
プロジェクトマネジメントを簡単に学んでみたい方、こちらの本がわかりやすくておすすめです。
もう1冊、PMBOKではなくISO準拠(どっちも基本的なコンセプトは同じ)ですが、↑よりはお固めな本なので、↑では物足りなそうって方はこちらを読んでも良いかと思います。
プロジェクトマネジメントの知識は何をやるにも役に立つので、最初は広く浅くで全然OKなので軽く読んでなんとなく覚えておくと今後の人生がちょっとだけ捗ると思います。
今度こそ終わりです。
長い文を読んでいただいてありがとうございました。
ここまででだいたい7,300字でした。
取り上げてほしいトピックや、このアニメのこんな作戦を計画書にしてほしいなどありましたら是非コメントなどお寄せください。
質問箱もどうぞ。
P.S.
ここから先は有料枠なのですが、記事を購入頂いた方へのお礼として今回作成したスライドをPDFで一式まとめたものを格納してあります。
何かのご参考にしていただけますと幸いです。
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