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フランスでショコラトリー店員になる#6突然の嵐

こうして、地方のパティスリーでの販売の仕事が白紙になった私は、残りの内定先、つまり、ムッシュが紹介してくれた近所のショコラトリーでの仕事を考え始めていた。

葡萄摘みの仕事から帰って来たら、すぐに仕事が始まるだろう。だったらそれまでに、ある程度の商品を少しずつ味見して覚えておいた方が良い。

そう思って、時間を見つけてはちょくちょくと通い、食べていないケーキを少しずつ購入して、ノートに書き留めていった。

自宅に持ち帰り、写真に撮って、ノートを書く。

味の構成はどうだとか、何という名前でいくらだとか、そういったことだ。


私はこういうことが苦にならない。

元々このような細かいことが好きなのだ。


未だ連絡待ちだった、葡萄農家さんのことも気になっていた。

具体的に、いつからなのか、詳細が全く決まっていなかったのだ。


ショコラトリーに行った時、マダムやムッシュに、

「まだハッキリと日程が決まっていないのですが…」

と伝えると

「Pas de problème(問題ないよ)!」

と笑顔で答えてくれた。

休日も、好きな時に予め申告すれば休めるというので、私はここで働きながら、好きなことをやっていこう!と心に決め始めていた。それにステイ先のムッシュも、ずっといてくれて良いと言っている。住まいの心配がないのは大きかった。

フランス語クラスも、B2クラス中盤のNiveau2となり、しっかり宿題をやって、予習復習もしないとなかなかハードだった。それでも、やりがいもあり、今までにないワクワク感があった。

ステイ先では、ランチはしっかりと食べ、夜は食べない、もしくは各自で軽めに食べていた。

しかし、料理好きのムッシュが腕を振るったランチは、ラパン(うさぎ)等、フランスならではの家庭調理が出てきた。アペリティフ・スープ・サラダ・メイン・デザート…毎日がレストランのようだった。

私は、ムッシュと一緒に買い物に行ったり、料理の手伝いをしたり、色々なことを教えてもらった。夜はお酒を飲みながら、機関銃のように話し続けるムッシュの話が早すぎて、もはやBGMのようだったが、少しでも聞き取ろうとする気持ちと、睡魔の狭間で揺れていた(頭が)…そんな夜が心地よかった。

ルームメイトのイタリア人とは、「たまにはさっぱりしたもの食べたいね~」等とよく盛り上がった。(ムッシュの作る料理は美味しかったが、基本こてこての肉料理だった。)彼女の家では、島に住むおじいちゃんが作ったお手製オリーブオイルを実家に送ってくれるそうで、シンプルに野菜にオリーブオイルと塩をかけて食べたり、それからパスタや魚介類を沢山食べると言っていた。彼女の話を聞くのもとても楽しかった。

ある日、いつもは優しく、明るいムッシュが、まじめな顔をして

「大事な話があるんだ。」

と切り出した。

私達は二人でテーブルの椅子に腰掛けた。

静まり返った部屋で、ムッシュがこう言った。


「悪いが、2週間後、家を出て行ってくれないか?」

「ええぇぇっ⁈」

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