おかしの国のおひめさま

おかしの国のおひめさま

最近の記事

デカルトブックガイド1.0

①『省察』を読めるようにする 1/ 野田又夫『デカルト』(岩波新書) 短い入門書としては、昔のものだけれど、本書がいちばんに推薦されます。名著という言葉はこのような本のためにあります。品よく明快な美文で、簡潔にして要点を押さえたことが述べられています。 2/ 所雄章『デカルト』(講談社) 「人類の知的遺産」というシリーズの1冊です。野田の書が、デカルト入門初歩としたら、所の書は、デカルト入門中級ないしデカルト学概説といえなくもないかもしれない。とにかく、いちだんかにだん、

    • 断想(2024 2 21)

      断想①西洋哲学の普遍性? このあいだわたくしについて、「西洋哲学は普遍的だとでもいうのか」というような調子のレスポンスをいくつかいただいたことがあり、それ(代名詞は誤読のもとですね、誤読の機会のないように申し上げましょう。つまり、ボールドにしたように、いくつかいただいている、ということ)ゆえ特にだれ宛というわけでもありませんが、ひとこと断っておきましょう。わたくしは、西洋哲学が普遍的だとか、普遍的でないとか、申し上げたことは、絶えてなく、また、それと縁のある話を(少なくともじ

      • 「第二省察」お嬢様訳※途中

        In tantas dubitationes hesterna meditatione conjectus sum, ut nequeam amplius earum oblivisci, nec videam tamen qua ratione solvendae sint, sed tanquam in profundum gurgitem ex improviso delapsus ita turbatus sum, ut nec possim in imo pedem

        • 「第一省察」お嬢様訳

          Animadverti jam ante aliquot annos quam multa, ineunte aetate, falsa pro veris admiserim, et quam dubia sint quaecunque istis postea superextruxi, ac proinde funditus omnia semel in vita esse evertenda, atque a primis fundamentis denuo inch

        デカルトブックガイド1.0

          『方法叙説』ラテン語訳:表題と第1部

          理性を正しく用い、学問における真理を探究する方法についての講話第1部 学問上の考慮にかかわるいろいろ 人々のあいだで、良識ほど等しく配分されているものはありません。誰でもじぶんでは良識をふんだんに持ち合わせていると思っておりますゆえ、成就しがたいことこのうえない願望の持ち主で、これいがいの事柄では何につけても自然から満足をえられない、という方々でも、手持ちよりもすぐれた良識を望む習性はないわけです。この点でみなさんが揃いも揃って思い違いをなさっている、と信じるべきではなく、

          『方法叙説』ラテン語訳:表題と第1部

          『方法叙説』ラテン語訳:読者への手紙

          ルネ・デカルトから読者へ ごきげんよう。 この教本は、わたくしがフランス語で著し、7年前に上梓したものであります。すこし経ち、友人がラテン語に訳してわたくしに寄こしてくれましたので、ラテン語の点であまり好ましくないところは、じぶんの権限に応じてこれをいちいち改めました。いろいろの箇所でそうしましたけれども、見過ごしたところがたくさんあるかもしれません。後者の点を前者の点から見分けるにあたっては、きっとご誠実な訳者がそこかしこで逐語に努められただろう、ということが、材料となる

          『方法叙説』ラテン語訳:読者への手紙

          文学部哲学科

          文学部に哲学科がぞくしていることは、しばしば奇妙だといわれます。それにはいろいろないわれがあるにせよ、いちばんコアのところをとっていえばこうなりましょう。文学部のかなめは人文学である。しかるに哲学は人文学ではない、あるいはそれにはつきない。だから哲学科が文学部にあるのは変だ。だいたいこういう運びです。このようになおしてみますと、ずいぶんあらっぽく、このままでは理屈としてたちゆかないのですけれども、いまは仔細もうしません。 わたくしも、このような考えには、長年どこか共感するとこ