見出し画像

毒親育ちだと鬼滅の刃を観るのが辛い

常勤教員を辞めた2020年4月から『鬼滅の刃』を集め始めました。

鬼滅の刃は家族の絆がテーマになっているので、毒親育ちの私としては好きな漫画なのに胸が詰まるときがあります。

胸が痛むポイントを解説していきたいと思います。


家族の絆の強調 

主人公、炭治郎は真っ直ぐで優しい性格です。妹の禰󠄀豆子や仲間だけでなく、敵である鬼にも優しさを見せます。

鬼滅の刃には、いいお兄ちゃんしか出てきません。鬼の妓夫太郎すら妹の堕姫にとっていい兄です。

いいお兄ちゃんである炭治郎を見ていると、何故か少し胸が締め付けられるような気持ちがします。

炭治郎は、鬼の魘夢に悪夢を見せられ、過去助けられなかった家族に、

「なんで助けてくれなかったの、アンタが死ねば良かったのに」と責められます。

しかし、動揺することなく、

「言うはずがないだろうそんなことを 俺の家族が!俺の家族を侮辱するな!」

と言います。

その家族愛、自己肯定感の高さに私は惨めさを感じてしまいます。

虐待を受けたキャラクターの性格がリアル

ヒロインのカナヲ、炭治郎の上司に当たる『柱』の不死川実弥など過去に虐待を受けていたキャラクターが出てきます。(柱の宇髄天元、伊黒小芭内も虐待育ちだと思いますが、忍者の修行や鬼の餌のために牢に閉じ込められていたという特殊な状況なので、考察が難しいので省きます)

カナヲは、親から壮絶な虐待を受けていました。

泣くと蹴飛ばされるの 踏まれるの     引き摺り回されて 水に浸けられるの

虐待から抜け出した後も、喜怒哀楽がわからなくなり、指示をされないと自分から動くことができなくなったのは、すごくリアルだなと思いました。

画像2

出典:吾峠呼世晴『鬼滅の刃』番外編

不死川実弥も父親から暴力を受けていました。彼自身も口で解決できなければすぐ暴力に走るところが虐待の連鎖だなと思います。

実弥は強いキャラクターなのに、終盤で母親と共依存のような関係があり、アダルトチルドレンではないかと感じました。

カナヲは、炭治郎との出会いで成長し自分の言葉を伝えるようになり救われたと思いますが、実弥には救いがないなと考えています。

不死川実弥を考察していきます。

鬼によって家族壊滅、母殺し、親友や唯一生き残った弟も戦闘で亡くなり、自分も痣の影響で25歳まで生きられないという、辛い運命を背負ったキャラクターです。

小説の話(風の道しるべ)では、こんな状況でも、実弥は、俺は自分のことが不幸だなんて思ったことは一度もないと言います。

1回目に読んだときは感動したのですが、それは本心なのか、ただ言い聞かせてるだけなのかわからないと感じるようになりました。

実弥の母は鬼にされ、実弥と玄弥以外の子供5人を殺してしまいます。実弥がその母を殺したことで、実弥と玄弥がすれ違うことになりました。

実弥は、無惨との戦いで傷を負い、天国と地獄の境目に行きます。そこで泣いている母親を発見します。

我が子を手にかけて自分は天国にいけないと言う母に、実弥は自分がお袋を背負って地獄を歩くよと笑顔でいいます。感動シーンだと思いますが、ここの場面に共依存の気持ち悪さを感じました。

画像3

出典:吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第200話

地獄の地面は燃えていると聞きます。そこを2人分の体重で歩くなんてとんでもないことだと思います。実弥の母は泣いてないで早く追い返せと思いました。

実弥の笑顔も違和感があります。恋人、または子供に向けるような笑顔を貼り付けているのが、親と子の役割逆転を感じました。

死んだ実弥の父が実弥を現世に追い返してくれたから良かったものの、父が出てこなければ地獄に行っていたと推測できます。


毒親の影響を受けた子供の描写がリアルな点が辛いです。

師匠の差別

親子ではありませんが、私は善逸の師匠にちょっと腹が立っています。

教員をしていたので、善逸みたいな性格の生徒が可愛いのはすごくわかります。師匠を爺ちゃんと呼ぶ人懐っこさ、「爺ちゃんが好き、感謝してる」と面と向かって言う素直さも可愛いです。才能があるのに修行嫌いだったらあらゆる手を使って修行させたいのもわかります。

だけど獪岳も見てやれよ!!と思います。

獪岳は善逸の兄弟子です。

※私は獪岳が好きです。

獪岳と善逸は扱いが違いすぎます。


獪岳は怒り以外の自分の感情を表すのは下手ですが修行は真面目です。素行や性格も悪いけど、努力だけは認められるべきだろうと思います。

獪岳は善逸に、師匠のことを爺ちゃんと馴れ馴れしく呼ぶな、元柱のすごい人なんだと伝えているので、師匠のことは善逸同様に尊敬していたと思います。

しかし、師匠は真面目に修行をする獪岳を差し置いて、逃げてサボる善逸ばかりにかまっている印象があります。実際、獪岳は逃げる善逸が師匠の時間を奪っていると言います。

修行から逃げてばかりの善逸と獪岳2人で、雷の呼吸の継承者だと伝えられても獪岳は不満なのです。獪岳は常に不満で、『心の中の幸せを入れる箱』に穴が空いていると善逸に言われます。

画像1

出典:吾峠呼世晴『鬼滅の刃』第145話

獪岳は、上弦の鬼の黒死牟と遭遇してしまい、命乞いで鬼になって、善逸に斬られます。(獪岳が鬼になってしまったので師匠は切腹をします)

今にも死にそうな獪岳の元に亡き師匠は現れず、善逸の元だけに来て「お前は儂の誇りじゃ」と言いました。

獪岳は、最期まで師匠から自分を認めてもらうどころか気に掛けてもらえませんでした。

私は毒親育ちで、常に兄と差別されてきました。親は兄の方が私より可愛かったのです。

獪岳に自分を重ねて同情してしまうのかもしれません。

※ここから獪岳の考察をしていますが長いです。


(獪岳の罪は何なのでしょうか。

幼少期、獪岳は後の柱の悲鳴嶼と身寄りのない子供たちと寺で暮らしていました。

獪岳は金を盗んだため、他の子供たちから寺を追い出されます。

私はここが納得がいきません。保護者抜きで子供だけで勝手に裁判をして、追い出したからです。

鬼の脅威の伝承が残る地域であったと回想で言われていたので、子供でも追い出した獪岳は死ぬだろうと想像できるだろうに薄情すぎると思うのです。

獪岳は案の定鬼に遭遇して、寺の人間たちの命を売ってしまいました。命乞いで他の人の命を打ってしまったのは悪いことですが、同情はできます。


盗みは悪いことですが、鬼滅の刃の世界では獪岳以外、盗みの罰を受けていません。

軽いのだったら善逸も饅頭盗んでたし、子供なのに野良鬼狩りのための武器を山ほど持ってた実弥も盗みをしたのではないかと思います。

どうして獪岳だけ罪が重いのでしょうか。

獪岳は幼少期におそろしい思いをしたのだから、鬼に関わらず上手く避けて生きていく道もあったはずです。

何かしら思うところあって、わざわざ弟子入りし、辛い修行や試験を経て、鬼殺隊に入ったのだから、完璧な悪ではないはずです。

獪岳に救いがないのが辛いです。)

最後に

毒親育ちにとって、鬼滅の刃の地雷ポイントは人それぞれまだあると思います。私としては煉獄さんの母の

弱き人を助けることは強く生まれたものの責務です 責任を持って果たさなければならない使命なのです

も感動したのですが、既に生き方を決められていることに違和感というか同情してしまいました。


なんだかんだ言いましたが、私は鬼滅の刃は好きです。

ちょっと読んでいたらちくりと刺さることもあるけれど、それはキャラクターの心情がわかりやすく、ストーリーが考察しがいがあるからでしょう。

また、違うテーマで鬼滅の刃は触れるかもしれません。

読んでくれてありがとう。


この記事が参加している募集

#読書感想文

190,092件

1億円欲しいです。