巡り合わせが無いからこそ生まれた縁を、大切にしたい〜カフェーパウリスタ〜
銀座にある資生堂パーラーのカフェに行こうとしたら、28組待ちだった。
にじゅっ……いや、流石になあ。
というか27組目までの人、それでよく了承したよな。
待つことは嫌いじゃない。
本でも読んでいればあっという間だ。
ただ実際には並ぶことはあまりなくて、5組以上待つような時には「今日は縁がなかった」と思うことにしている。無理やり繋ぐ縁というのもまた。ひとつの縁の形なのだろう。が、私は流れに身を任せたような生き方の方が、なんとなく好き。
と、いうわけで。
さてどうしようかな。銀座という街はカフェの選択肢が多いから、本当の本気でカフェ難民になることはないのだけれど。でも選択肢が多すぎて選べずに難民かすることは結構あるからな。
どうしよう。
資生堂パーラーの向かいの通りには、何かあるかしら。
……あった。
カフェーパウリスタ
まじか。
この店のことは、知らない。銀座のカフェはよく検索するけれど、ヒットしたっけなあ。絶対するくらい、評価だって高いのだけれど。いまいちそういう注目をした記憶が無い。
ただ、私はこのカフェのことを確かに知っていた。
カフェの始まりと広がり、みたいなことをテーマに暑かった文章を読むと、この「カフェーパウリスタ」、確か出てきたはずだ。
かーっくいい!!
外観は、私が好んで行くようなカフェというよりは、どこかアメリカンなダイナーのイメージ。
それが中に入ると、例えばルノアールとか集とか、そういう雰囲気。大衆に愛されてきた広々喫茶店感が凄くあって、良い。とても良い。
さてさて、やっぱり注文するのはやっぱりケーキとセットだろうか。
私はそれほど「お得セット」にはこだわらない。
コーヒーと紅茶しかセットにできないけど他の季節のドリンクに惹かれたのなら単品でもそれを追加する。そういう女だ。
なんと言ってもやっぱり価格の心理とは不思議なもので。そういう主義を頑なに抱いていても、「お得」には抗えない。
ケーキセットよりも、それプラスキッシュのセットがお得で。「人気No.1」的な表記もここできいてくる。
キッシュとケーキとドリンクとか…皆、そんな罪深いことしてんのか。きっとあの綺麗なお姉さんもシュッとした紳士も、そのセットを注文しているのだ。
それならば私だって――。
3種類のきのことたっぷりのベーコンキッシュ
え。
何これ美味杉くん問題。
え、嘘、ちょちょちょ、ちょーーーーっと、想定以上、なんて言ったら申し訳ないかもだけど、美味し過ぎでは。もっと古くからの伝統ある感じじゃないの?
なんだ、この卵のフワトロ感。
食べても食べても、キノコが溢れ出てくる。
キノコから出た旨みがジュワッと卵に溶け込んで。更にそれが、周りのサクサクなはずのパイ生地に溶け込んで。それは確かにパリッとした食感をやや残しながらも、柔らかで。まるで春巻き。
キッシュを食べて春巻きと思ったのは初めての体験だったけど。そこには確かに春巻きの世界があった。
オペラ
各層が凄くしっかり!
驚いた。
これはキッシュに比べて、どちらかといえば「伝統」に寄っている感じがする。
最近は消えるような口どけのムース的なオペラが多いからねえ。この重厚感はむしろ新鮮 。
モカバタークリームやテリーヌ のようなチョコ、アーモンド生地…その層ごとの境界が曖昧すぎて一体感での味わいが全て、というオペラも結構多いのだけれど。これは、ポロンと層別に分かれる。だからこそ、それぞれでも少しづつ味わって。
それでもやはり、層の一体感が、オペラというケーキの魅力。
分かれるから一体感は低い?
それは正解じゃない気がする。
分かれるから、それぞれの個性がしっかりハッキリしているから。だからこそのまとまりが生み出せる。
トップには、「割って」食べるような分厚いチョコプレート。フォークをおろそうとすると、トンと当たる。そのまま力を入れたら、ケーキが潰れてしまう。その隙間にフォークを上手く差し込み、そうして捻る!パキン。その一瞬が、とても気持ち良い。
お店の珈琲をたっぷり使用、というのもまた、オペラの素晴らしき魅力だ。
昔から長く愛されてきたことがよくよく伝わる空気感。しかし古臭くない。「今」来た一見さんを、まるで昔からの友人のごとく受け入れてくれる。
ちっ、行きたい店に行けなかったぜ。
そういうことは、巡る人なら絶対に出てくる。
しかしそれは決して不幸なことじゃない。
その先にきっときっと在る出会いに目を向けて欲しいと、そんなことを思う。
明日はどんなカフェに出会えますか?
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