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見知らぬ誰かの人生泥棒はカフェ巡りにおける楽しさのひとつ~MARADONA CAFE~

「私、競争心が強くて。同期の中では一番取ったりもしたんですけど、それで身体壊しちゃって――」
「本当、凄いよ、その誰にも負けないっていう姿勢。でもその働かせ方は完全にブラック。倒れて当然だ。うちの会社ならそんな無茶はさせないし、もっと君のその長所を発揮させられるはずだよ」

転職にあたっての先輩訪問かカジュアル人事面談といったところか。


聞き耳を立てているわけじゃないけれど、カフェ巡りをしているとどうしても、隣の席に座るグループの会話とか、勝手に聞こえてきたりする。

そこには私の知らない世界が広がっていて、なんだか小説を読んでいるような気持ちだ。
そして小説と同じように、「自分だったら――」みたいなことを考えてみたりして。

「同期の中で一番」なんて話は時折耳にする。
秋田高校。明治大学。マジで優秀な人もいる一方、そこそこの中小やベンチャー企業に入ると学歴的には大体の人よりは上。優秀な成績を出せるはずだ、自分はやればできる子だ、みたいなプライドで生きている人も結構多い進路を辿ってきた。

父もよく言ってたっけな。
同期の中で一番。

でもこの「一番」ってなんだろう。
営業成績?
確かに少しくらいツンケンして周りへの当たりが厳しくてもビシッと数字を出してくる人も必要かもしれないけれど。
少しくらい成績不良でも周りの雰囲気を明るくしてくれる人というのも、また重要な人材と見なされるべきだ。

そもそも、私が働く経理の仕事も誰かが一番と語るレースに入っているのだろうか。売上を出しているわけはないのだから、だとしたら私はビリなのか。知らないうちに。


答えなんて出ないけれど、それでも考える。
思考には、常に何か疑問を持ち続けているような天才でなければキッカケが必要だ。それは、例えば誰かの会話。

繰り返すが、決して悪意を持って耳をすませているわけではない。
多くのカフェでは、隣の席との間隔はそれほど広いわけではなくて。普通に聞こえてくるものだ。それをわざわざ耳を塞ぐ義務までは無い。
見知らぬ人に聞かれて困る内容であるなら、わざわざ公共の施設で話さないでくれ。

さて、それはそれとして。
カフェで考えることはそれだけではない。
自分の最近の行動を振り返ったり、悩みを更に悩んでみたり、未来に想いを馳せてみたり――、いやいや、それよりももっと大事なこと。
今、目の前にあるスイーツを楽しむ。


MARADONA CAFE by salon Sharely
レアチーズケーキ

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滅茶苦茶かわいい。

銀座駅に着いた時、チョコレートドリンクを飲みたくなった。
駅にできたGODIVAが良いかな。
いやいや、東急プラザ銀座なら、カカオマーケットがあるじゃないか。
…あ、あれ?工事中???かなにか分からないけれど、いつも向かう道が途中で塞がれていて、お店までたどり着けない。

途中にカフェがあった。
それは知っていたけど、入ったことは無かった。
時々お店変わるし、まあいいかなって。
でも、なんだか気になって。
入ってみた。
チョコレートドリンク気分はどこへやら。

どうやら元のお店はサロンが本業で。
美と健康をテーマにしたコンセプトカフェを出したのだとか。
そういうの、好きだ。

そしてレアチーズケーキ。

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見た目から、ドライフルーツやらなにやらが多過ぎる。
ムニッと柔らかな、あるいはシャキリとした、コリッとキュキュッと。
一体何種類詰まっているのか。
それが、ムースのようなプルンとしたチーズに包み込まれて。

チーズの味は、糖質オフ系で食べるものに近い。
特に書いてはいなかった気がするけど、コンセプト的に言えば有り得る。

無花果の、ムニムニプチプチッとした二段構えの独特なリズムが好きだ。
ドライフルーツやナッツは噛み締める程にその旨みを増す。
それが爽やかでシンプルな味わいにじんわり馴染んでいく感覚が、たまらなく好きだ。

中にも沢山ありつつ、上にもささやかに乗せるというセンスも好き。
可愛いし、なんだか特別感がある。

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ドリンクには、チョコレートラテ、ヘーゼルナッツラテ…普通よりも色々なラテが揃っていて迷った。
今仕事で密に関わっている後輩がほうじ茶好き。確実に影響を受けている。ほうじ茶ラテにした。

うん、この落ち着いた甘さ、果実やナッツによってシンプルに甘くなったチーズと、よく合う。


「カフェ巡りって、飲みながら何をしているの?」と聞かれることは時々あるけれど。やることなんて沢山ある。

知らない誰かの物語を少しだけのぞき見して、自分の世界を見つめ直して、目の前のスイーツをしっかり味わって。

基準のよく分からない一番を取ることは、そんなに大切なのだろうか。
私は私の一番大事なことを大事にできる、そんな一番であれば良いかなと思う。

そんな自分の考え方に気が付けるのも、カフェ巡りで偶然近くの席に座っただけの知らない人が、私とは全く異なる考え方を持って違う人生を歩んできたからこそ。そういうことが、面白い。


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