言葉が出なかった。それでも書き始めたら、5千文字を超えた。~キンプトン新宿東京×ピエール・エルメ・パリ~
正直に言おう。
書きたい、書くべき言葉が見つからない。
そう、私はあまりにも毎日毎日、お腹が空くようなことばかり書き続けて、もう書くネタが無いのだ。
…なんていう言葉の喪失ではなくて。
それは奇跡というか人生の軌跡。
尊くて神で悪魔で、そして妖怪だったから。
平々凡々に会社員している私などには到底言語化できるものではないのだ。
そういう「特別」に出会った。
「語る価値もないものであった」なんて、いつかの私の記憶が歪んでしまっては困る。だから言葉が無くとも何か、何か表現しなくてはならない。
しかし人間を超越したような特技の特にない私に為せることと言ったら、やっぱり言葉を紡ぐことくらいしかないもので、ここに「美味しい」ということだけ沢山、盛大に叫び置いておく。
うーーーわーーーーー!!!!可愛い!!!
という話に辿り着く前に。
話には順序というものがあるのだ。
「アフタヌーンティーに行きたいね」という話は、以前から度々していた。色々と調べたのだけれど、どれも量が多過ぎたり、アレもコレも美味しそうだし…とか諦めて悩んで、ずっと行くには至らなかった。
「キンプトン新宿東京×ピエール・エルメ・パリ ハロウィーンアフタヌーンティー」は、その中でも特に注目していたアフタヌーンティーのひとつ。
だって、高級なホテルと大好きなピエール・エルメ・パリとのコラボ。
そして、とにかく可愛くてたまらない。
ハロウィンには、脳味噌や目玉などをリアルに表現したスイーツが登場するけれど、ああいうのは少し苦手。
可愛らしいお化けやカボチャ男爵的なのがいいいな、と思っていた。
それがまさかの、
妖・怪!!!
からかさ小僧に、河童に、ぬりかべに提灯お化け。
ゲゲゲの鬼太郎を思わせるユニークなチョイス。
好き!!!
しかし予約欄を見た時、行ける日は全て満席だった。
だというのに、未練がましくも後日再び確認すると、偶然休みを取得していた平日に予約が空いたのだ!!!
それはもう、「行け」という神の、「逝け」という悪魔の誘惑に違いない。
行く。
ウェルカムドリンクはスッキリ綺麗な苦味を楽しめる緑茶系。
ワイングラスに入っての提供、お洒落過ぎる。
その後のドリンクは、時間内なら自由に選べる。
自由に...とはいえ、一杯がなかなかの量で提供されるので、食前・食中・食後、くらいのものだろうか。
アフタヌーンティーだからまずは紅茶、とも思ったのだけれど、ブレンドコーヒーにした。コーヒーの方をより多く飲んできた私には、その方がお店の理解に繋がると思ったから。
うんうん、酸味が強めで苦みが控えめなサッパリ系。
ゴクゴクと飲めてしまう。
他にも優しい甘酸っぱさがハワ~ンと漂うアプリコットティー。
それに、シナモンが強くダイレクトに攻めてくる、香り良く独特な甘みのシナモンティー。
ポットでの提供だったため、もう1人と一杯ずつ交換した。
どちらも、それはそれは美味し過ぎて、「美味しい、美味しい」と言い合いながら飲んだ。
シーザーサラダ。
そうか、写真の妖怪スイーツにばかり気を取られていたけれど、サラダや選べるメインの後に提供されるスイーツだった。
確かにそう書いてあったのだけれど、お菓子たちが楽しみ過ぎて、完全に失念していた。
えっ。本気の本番に辿り着く前にお腹がいっぱいになってしまうのでは。
少し不安を抱きながら、最初の「美味しい」にフォークを進めた。
一瞬シラスにも見えた真っ白は、チーズ。
フワフワと削り振りかけられている。
見た目よりもずっとずっと強いチーズの味わい。
それはクセもまた強いのだけれど、なんというか、しっかりシーザーサラダをしていた。お洒落な感じに仕上げられた、でも知っているという安堵感もあるシーザーサラダ。
クルトンが美味しかった。
スーパーなどで購入するカリッカリのやつとは違う。
甘さ際立つホテルブレッドを独自に焼き上げた、というような少し柔らかさすら感じるサクサクが、凄く美味しかった。
メインとして、私はグリルチキンを選んだ。
凄く凄くもどかしいのだけれど、このチキンの摩訶不思議で美味過ぎる感動はきっと私の住む世界とは別世界にある。私の中にある辞書のどこを探しても、これを正しく表現しうる言葉が見つからないのだ。
一言で告げるのなら「美味しい」。
二言目には「スパイシー」だろうか。
メニューの正式名称は「スパイシー大山鶏腿肉・サツマイモのグリル・スチーム野菜のグリル チリ&レモングラスレリッシュ」
とてもスラスラと読み上げられないけれど、でも凄いのは伝わる。
炭火っぽい旨みたっぷりが、濃い味付けに絡む。ピリリと痺れるようなスパイス感と、どこからやってくのか甘みも漂う。
食べやすい大きさに切るのに全然苦労をしない柔らかさ。しかし食べ応えもある存在感。
なんだこれは。
濃さのレベルとしては焼き鳥のタレに近いだろうか。それをもっとハイブリットに進化させた感じ。
添えられた野菜たちも、あまりに無我夢中で食べすぎて、どれがどの素材かとかまで考える余裕もなかったのだけれど、ひと口ごとに「なにこれ美味しいんだけど!!」と一言発しながら食べてた記憶がある。
また食べたい、そんな中毒性あるとんでもない魅惑の味わいから、通常時のメニューも見せてもらった。マジか…4,000円近い。
今回のアフタっヌーンティー、5,500円+サービス料なのだけれど、実はもの凄くお得なのでは。
もう一人は偏食家で、5種類の選択肢の中でも食べられるものはパンケーキくらい。
目的のスイーツの前にパンケーキ。
ううん、さすがに私でも躊躇う。
……ガバッ!!
なにそれ可愛い!!!!
モンブラン風に仕上げている、とのことだけれど。
その上のクリームちゃん、お化けではないか。
そしてオレンジ色の耀くソースもまた、ハロウィンっぽい仕上がりになっている。
可愛すぎる。
食べて♡
「と…とても残酷で非道なお願いなことは承知なのですが…どうか、どうかその、紫色の帽子を頂けないでしょうか」と頼んだ。くれた。そういう特別に光り輝く1点が好きなのだ。
もちろん相手にとっても価値あるものであるならば、そんな図々しお願いはしない。けれどそれが、どうでもいいものであるのなら――。
生地も栗が染みている?中に詰まったアイスも、上に乗るマロンクリームも、コロコロと散らばった栗も。栗づくし過ぎではないか?
このお化け、栗に対する何かとんでもない執着があるよ絶対。地縛霊になる前に食べてあげなくちゃ。
少し…というかわりと分けてもらったのだけれど、これも美味しい。もう分かったよ!全部美味しいんだろ!!!
さて。
神々しい。
これまでの提供で、写真を撮るのは私だとバレてしまったのか。
総勢私の方を向いた状態で提供された。
どうやら妖怪4つがキンプトン新宿東京によるもので、その間がピエール・エルメ・パリの提供らしい。
そんな説明を聞きつつ、自分の心の声の方がうるさくて、きっと色々聞き漏らした。申し訳ない。
いつまでも眺めていたい。
しかし味わいたい。食べなければ。
10回以上「可愛いね、もったいないね」と「わぁ!!あああぁ...」と声にならない何かを繰り返した後に、ようやく端から食べ始めた。
栗のタルト
そうか、傘はコーンで表現しているのか。
甘いサクサクパリッ。
傘を、食べている!!
中にはたっぷりのチョコ?マロン?な滑らかクリームが詰まっている。
傘の心か、はたまた脳か、奥の方に栗がゴロリと入っていた。
タルトにギュギュっと詰まったのは、栗の生地。
そこにマロンクリームみたいなのが絞られて。
成程、見た目には分かりにくい、というか可愛さしか溢れ出ていないわけだが、存分に栗の世界を楽しませてくれる傘である。
可愛い。
目や口、それに頭のてっぺんにチョコを塗ってるあたりが本当に細部まで手が込んでいる。
今日の天気は晴れのち栗でしょう!
マカロン アンフィニマン キャラメル
これは!!
そう、よ~~~く知っていますとも!!!
美味しいんだよ本当に。
表面の軽やかなサックサクと、ふんわりしっとり、甘さの染み込んだ生地。
ねっちりギュギュっと全体に固めマカロンなどもひとつの王道として確立しているけれど、私はこのピエールエルメ的なのが一番好きだ。
完璧過ぎる。
甘さをいっぱいに広げて余韻を残し、フワリと消えゆくクリーム。
混ざり合う生地のサクサクが、クリームのもっちりフワフワな舌触りをより強調する。
なんて罪深く最高なんだ。
ピスタチオのタルト
河童よ…そうか、君は抹茶でなくピスタチオなのか。
時代の流れに乗ってるな。
めちゃくちゃ謝りながら、その頭の皿を取り、一口でパクリと食べ、ツルリとした頭にナイフを入れた。ごめん。
可愛いスイーツは本当に、この瞬間の背徳感が辛い。
でも君を食べちゃいたいの、許して。
ピスタチオのムースはもっちり弾力がありつつも滑らかで、あの黄緑色の甘くてコク深いピスタチオの味わいがやんわりと膨らむ。
タルトの中はホロホロしっとりなピスタチオ生地。
それに甘酸っぱいグリオットという、王道最強コンボ。
この真っ赤なグリオットは…河童くんの...血……いや、きっと生命力的な何かとか、そういうアレだ、うん。
美味しい。
プレジールシュクレ
あの気品と愛らしさを一杯に含んだ美味し過ぎるミルクチョコレートやプラリネの味わいがあまりにも尊過ぎる。
フワリとしたムースやガナッシュの中で、繊細にシャクシャクカリカリと音を奏でるダコワーズ。
その甘さも、舌触りや音を、身体が覚えている。
エルメだと、知っている。
私の大好きなエルメの味がする。
最高と、言わざるを得ない。
ニューヨークチーズケーキ
エルメのチーズケーキはお初。
これ似た感じのお店にあったかな?
今度、ぜひぜひ再開を果たしたい。
たっぷり溢れるクリームチーズが、その大きさに凝縮されている。
その滑らかで清らかできめ細やかな舌触り、口どけと、チーズの濃さ。
濃い。濃厚なんてものでは語れない煌きがその小さなキューブに詰まっている。甘い果汁の飛び出す瑞々しい葡萄も、塩気のよく効いたホロホロのクランブルも、全てはそのチーズを引き立てる為に。
ナッティキャラメルシュークリーム
ぬりかべ。
この子が出てくるスイーツなんて、着眼点が天才過ぎる。
可愛い。
甘い胡麻たっぷりの、手で持てる程に弾力あるムース。
優しくて強くて純粋な、子どもの頃に大好きだったお寿司屋さんの胡麻ソフト。あれを思い出す胡麻のお菓子はとても大好き。
シューにはたっぷりのクリームが詰まっていて、クリーム色の中に揺蕩う茶色は、ナッティでキャラメルな美味しさ爆弾。
ラズベリービーツケーキ
ほほ~う、この流れで普通にクリーム系かと思いきや、食べてビックリ、フィナンシェみたいな甘くて甘酸っぱいフンワリ生地をギュギュギュッと絞った感じ。ラズベリーだけでなくビーツまで持ってくるとは......お洒落センスが高すぎる。
チョコの上のグルグル模様、可愛いなあ、素敵なボンボンショコラがくっついてるんだな?とつまんでみると、なんとなんと、チョコ自体は薄く、被せているだけ!!って書くと悪口みたいだけど。「だけ」ではない。なんと薄いチョコの中には、うっすらラズベリー?なピンクを滲ませた、このアフタヌーンティー史上随一のふんわりサラサラ、シルクのようなクリームが潜んでいる。
真っ赤なイケイケ提灯お化けは、見えないところまでお洒落ちゃんだ。
キャレマン ショコラ
私は好きで好きで一番最も最高に大好きでたまらないものを最後に食べる習性がある。だから、最後はこの子なのだ。
それはもう、とんでもなく好き。
好きが、もっともっと大好きになった。
見た通りなのだけれど、チョコが、スーパー濃い。
テリーヌやブラウニーみたいな、一種で攻めてくる濃厚なチョコとはまた違い、いくつかの濃さ、口当たりの層に分かれている。それらが一丸となって、襲い来る。
ブワッと広がる。サラリと流れる。ホワンと留まり、香る、薫る。
たった二言、「チョコ!美味しい!!」しか言っていない気もするけれど、それが全ての真実なんだ。
尊いよ。
間には...
お化けたちが......
潜んでいる!!
隠れ切れていないね。可愛いね。
そして。
こんなに素晴らしい美味しい妖怪に次から次へとコンニチハをしてサヨウナラして。上がらないテンションなど無い。落ち着け。
最後に、カプチーノを。
あ...ああぁ。シンプルだけど、それが可愛い。
あぁ、「書くことが無い」とか書き始めておいて、5000字を超えてしまった。成程、朝5時から書き始めたのに仕事が始まるまでに書き終わらなかったのはそういうわけか。
好きなことはあるだろうか。
それならきっと、「好き」の2文字を語るだけでいくらだって語り倒せるのだ。たいした専門知識を持っていなくたって。
あっという間に過ぎゆく人生の「あ」に、沢山の「好き」を詰め込みたい。
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