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【研究機関と政策(国際開発分野)】イギリスと日本の違い

ここのところ大学院についての話を書いてきた。
今回は質問されたわけではないのだが、前回の話とリンクして大学院とか研究機関と政策がリンクしているかという話。
開発や国際協力関係の話であるが、日本とイギリスではだいぶアプローチが違う。

日本だと地域研究とか、国に興味を持って研究を始める人が多かったりするが、イギリスだと理論構築から始める。開発援助にもこの傾向はあって、イギリスの開発援助機関は最初に理論構築を行い、その後そのモデルを使って開発支援を行っていく傾向にある。
例えば、イギリスでは途上国の貧困削減のために、Sustainable Livelihoods Approach(持続可能な生計のためのアプローチ)というものを理論構築し、このアプローチを使って貧困削減プログラムを作っていった。

日本の開発政策はこういうモデルを作ってプログラムを作っていくということが少ない。地域や国ごとに開発プロジェクトを作って成功したものをアプローチ化していく。

例えば東アフリカで行われているSHEP(市場志向型農業振興)アプローチという農業支援のプログラムがあるのだが、こちらはプロジェクトベースでうまくいったものをほかの国に拡大している。他にも「みんなの学校」など、成功例を拡大していくケースが多い。つまり現場の成功例を吸い上げ、一方で戦略ペーパーなどは割と薄いものが多く、理論構築が苦手なのが良くわかる。

イギリスの方が教育・研究機関などと開発機関が連携しており、政策を作るのが得意と言える。その点では日本の研究者が日本の開発政策や平和・人道政策へ貢献することは少ない。

そのためイギリスにはシンクタンクやリサーチ系のNGOがたくさん存在し、色んなデータを提供したり提言を出している。それだけ需要があるということだろう。
日本には安全保障系のシンクタンクはあるが、国際開発系のシンクタンクは少ない。あっても政府系のものが多い。最近はSDGsの影響で民間系のも増えているが、開発政策などの策定に役立っている印象はない。

これはイギリスには国際開発省という独立した省庁があり決定権があることも大きい。実はこの国際開発省、昨年いわゆる外務省と合併されてしまい、今年はがっつり予算を減らされているのでこれからは変わってくるのかもしれないが。

日本はそれに対して外務省の下にあるJICAが国際協力のメインアクターだ。当然外務省の許可がないといけないが、外務省にとっては国際協力は外交政策の一つという位置づけなので、政策面では弱くなってしまう。
ただ、その分日本の国際協力の現場の力というのはすごい。プロジェクトの立案計画からきちんと練られていて、案件そのものはしっかりしているものが多い。イギリスは基本的に被援助国の政府や国連機関、NGOなどに財政支援をして、自分たちの作った政策を実行させようとする。割と丸投げだったりもするので、中身も怪しいものも結構ある。

実は日本にも内発的発展論とか、人間の安全保障とか、政策として取り込めそうな理論モデルもないわけではない。こういった理論やアプローチをもっと政策の中心に持っていったら面白いのになと思う。


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