見出し画像

内藤正典・中田考『イスラムが効く!』

〈引用〉

 基本的には、日本人が感じるようにはストレスを感じない。まず、他人の評価はあまり気にしないというのがありますね。

 (中略)イスラームの教えの基本は、「人の言うことは気にしなくてもいい」ということなのですよね。神様が認めてくれればそれでいいわけですから、人がなんと言おうとかまわない。それが基本の基本の基本です。誰がなんと言おうと、「私は自分で神様に従っている」と思えばそれでいい。

 あと、イスラーム教には聖職者はいないので、ほかの人が何も言わないのです。(中田考 P98~99)

 ニ十世紀は、その神の意志を必要としない、と人間が錯覚した時代でした。科学や技術の発展で、もはや神にすがる余地はなくなったし、数式と論理で物事は解き明かすことができる。そう信じた時代でもありました。

 しかし、科学が発展すればするほど、ますます人間はわからなくなっていきます。おまけに、人間社会のつくりそのものが変わっていくので、新たに目の前に立ちはだかるあらゆる問題に、人間は、神の啓示なしで答えを出さなければいけない。これがしんどい。

 (中略)人為的なことで死ななければならない人などいないのです。一瞬にして、愛する人を奪うような理不尽なことをなすのは神をおいてほかにない。

 そう考えたほうが、どれだけ苦しい気持ちを和らげてくれるでしょう。(内藤正典 P101~102)

〈感想〉

 自分と全く違う思考のしかたに触れるのは、脳がリフレッシュする感覚だ。ここに挙げた、他人の評価を気にしない、原因と結果をつきつめ過ぎない、などは、全く自分とは異なる観点なのでハッとした。他にも、未来を心配し過ぎない(心配せずとも、なるようになる)、過去にとらわれない(答えの出ない「反省」にとらわれず、「悪いことをしてしまったから、今度はよいことをしよう!」と前向きにとらえる)など、折に触れ思い出したい考え方がたくさんあった。思考の回路が固まっている時は、他文化・他宗教の思考が効く!と思った。

ミシマ社 2019年3月 1600円+税

この記事が参加している募集

読書感想文