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塩野七生『絵で見る十字軍物語』(新潮社)

 塩野七生『十字軍物語』三部作の序章としての一冊。元々、十九世紀前半の歴史作家フランソワ・ミショーの文章にギュスターブ・ドレが挿絵を描いた『十字軍の歴史』という本があった。その挿絵の美しさに塩野が惚れ込み、十字軍の歴史を短文で綴り、ドレの絵に添えたのがこの一冊である。21世紀にも繋がるキリスト教対イスラム教の対立の原点が簡潔な文章でまとめられている。もちろん挿絵の美しさも大いに楽しめる、歴史好きには格好の一冊である。
 問題はこの本を読んだだけで、十字軍の歴史についてまあまあの知識が得られるので、これで満足しそうになることだ。この後に続く大部の三部作を読まなければ、塩野七生の『十字軍物語』を読んだことにならないので、また気合を入れ直して取り掛からなければならない。

新潮社 2010.7. 定価2200円(税別)

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