フォローしませんか?
シェア
あきら
2021年8月19日 20:29
おまえはどうして、そんなに透明なんだろうなあ肌が透き通るようだとか透明感があるだとか、そんな褒め言葉なんかじゃないとすぐに分かった。至極真面目にそう呟いた男の顔は、別段興味もないくせに可笑しいものでも見るみたいな、なんだか、無性に苛立たしくて腹が立って悔しくて涙が出てしまいそうになるような、そんな顔だった。なんの返事もせずに、なるだけ緩慢な動きで顔を逸らした。迫るほどに重たい鉛色の雲が空
2021年8月12日 12:36
蝉が、遠くで止むことなく鳴いている。生成色の壁に反響しながら、何処か責める様な静けさで部屋の中に沈殿していく。心なしか足下は、ひやりとした予感に満たされているような気がした。その予感は日々、緩慢なスピードで密度を増していく。僕は気づかないふりが上手くなった。都合の良いことだけ、苦しくないものだけを見る様にすることにも慣れた。こうして立ち尽くして壁に向かいながら、今だって悲しみの気配に気づかな
2021年8月2日 12:18
震える指で星の間を縫ったステッチは、見えないオリオン座を結んだ。その指と吐き出される息は白い。蓄光したみたいにぼんやり光りながら、夜に存在していた。君も私も見えない。まるで始めから居なかったみたいに。辛うじて形を持つのは、何かを探ろうと躍起になる、君の震える指だけだ。「このまま夏の星座まで辿るよ。だから」少年は怯えているようだった。かちかちと歯が鳴る音が、耳鳴りと一緒に風に乗る。寒さか