光琳の風神雷神図 ー雨を呼ぶ男たちー
迫力のある神をご覧あれ。雷を鳴らし、風を吹かせ、雨を降らすその姿を。
300年以上前の絵とは思えない、ハッと目を引く鮮やかさに驚く。
背景の金地、風神の緑、雷神の白、すべて曇りのない美しさだ。「ここにいるぞ」「わしらを見ろ」と言わんばかりの力。グイと人を引き込む魅力にあふれている。
東京国立博物館、本館2階七室で7月21日から公開が始まった。8月10日まで展示されている。
風神雷神は中国伝来の仏教美術に由来する。絵の説明書きに「仏教での風神と雷神は、風雨を司り仏法を守る役割を担います」とある。
尾形光琳(1658~1716)の「風神雷神図屏風」は、俵屋宗達(生没年不詳、1600ごろから1630年代に活躍)の模写となる。のちに光琳を敬愛した酒井抱一(1761~1829)の模写へと続く。
今回は比較ではなく、光琳の「風神雷神図屏風」を愉しんだ。
勢いのある風神は、膨らんだ風袋を持って駆けてくる若者のようだ。生き生きとした表情で、緑色の体も明るくエネルギッシュだ。
太鼓をたたく雷神は、筋骨隆々の壮年の男性に思える。ボディービルをやっているかのようなたくましさだ。
まるで風神は雷神を慕い、追っているようにも見える。
妄想だが。
ただ風神・雷神とも足元の闇が深い。足を止めているようにも見えるし、闇から生まれてきたようにも、闇を踏み散らすようにも見える。
黒雲から生まれてきたか、黒雲とともに雨を降らすのか。
雨音が聞こえてくるようだ。
ここに雨を降らせたもう一人の人物がいる。
酒井抱一。
現在、東洋館のミュージアムシアターで上映している「風神雷神図のウラー夏秋草図に秘めた思いー」を見るとそのことがわかる。
酒井抱一の「夏秋草図屏風」は、本来はこの光琳の「風神雷神図屏風」のウラの絵として依頼されたものだった。光琳を敬愛していた抱一は考え抜いて、裏の絵を描いた。
その絵の重なりを想像すると驚き、嘆息する。
夏の草花と野分(台風)によってできた水の流れは、雨をもたらした雷神のウラに。
秋の草花と風は風神のウラに。
風神雷神図の金地に対して銀の地で。陰と陽。
抱一がいかに光琳を慕っていたかが、うかがわれる。今は裏に描かれた「夏秋草図屏風」は別の屏風に仕立てられている。
シアターの案内を見てから、屏風の裏を覗き込んだ青年たちが「何にも描かれていないじゃん」といったのは、残念。「このムーヴィーを見たらわかるから!」と言いたかったけれど、言えなかった…。
ミュージアムシアターは火曜日はやっていないのでお気を付けを。
10月4日まで。毎週 水・木・金・土・日・祝
11:00、12:00、13:30、15:00、16:00 高校生以上600円
時間があったら同時に見るとより深く楽しめる。
人気の作品だが、今はゆっくり見ることができる。(平常展示も予約制。)
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