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Lv.99の夏休み、江ノ島スポッチャ高尾山【リレーnote1日目】

 パリ五輪の盛大な開会式に続いて、本日から真夏のリレーnote企画がスタートします!
 私ずっきーからスタートし、8/11までの16日間、16名のnoterが「夏の思い出」をテーマに投稿を繋いでいきます!
 参加者以外の方も、ぜひスキやコメントで応援お願いいたします!

▼▼▼実施要項はコチラから!

 では、本日からスタートです!


むちゃくちゃやりたいこと、
無茶苦茶にやらない?

長崎出身の彼が言った。
もう、10年も前の話になる。

 大学2年生の前期試験が終わり、夏休みに突入した。大学生活にも慣れてきたし、就職活動が本格化するのも翌年。思い切り遊べるこの夏休み、我々に敵はいなかった。

 我々は6人のグループで仲が良かった。都内の大学だが、僕も含めてそのうち5人が地方出身だったため、東京での夏休みにとてつもない憧れを抱いていた。
 東京のキラキラに圧倒され、探り探りで終わってしまった1年目の夏休みの悔しさを晴らすべく、この年は張り切っていた。

 夏休みの1日をフル活用して、やりたいことを無茶苦茶にやる日をつくろうと言うのだ。そう、無茶苦茶に。

 海、山、プール、ナンパ、バーベキュー、24時間耐久カラオケ、ディズニー、ナンパ...etc

 やりたいことを挙げるとキリがなかった。出てきたアクティビティであみだくじをつくり、そのうち三つ当たるようにした。
 学食のテーブルに、フリーハンドで書いたガタガタのあみだくじを広げた。1、2、3と番号を振り、当たった順番でそれをやることにした。



1 江ノ島
2 スポッチャ
3 高尾山

なんか、いいバランスじゃん!

 地方組にとって、江ノ島とスポッチャは憧れだったし、高尾山はこんな機会じゃないと行かないと思った。

 海と山を1日で味わうなんて、なんて贅沢な。なんだか、最高な1日になりそうな気がする。だって、大学2年生は最強だから。

午前10時 新宿駅

 新宿駅に集合。それぞれの家の中間地点ということもあったが、とにかく「新宿集合で」と言いたい年頃でもあった。
 3人が免許を持っていたので、レンタカーを借りて、交代で運転することにした。

 新宿からであれば江ノ島は電車でも行けるが、どうせなら道中も楽しみたい!ということで車で行くことにした。
 なによりも、江ノ島からスポッチャと高尾山にも行かなくては行けなかったため、車の方が都合がよかった。

「ごめん、昨日飲みすぎていま起きた...。
 気持ち悪いからスポッチャで合流する」

 大学生にとってはあるあるなメッセージが、グループLINEに流れた。グループで遊ぶ時、だいたい一人か二人は欠けた状態でスタートする。
 いつのまにかこのLINEのグループ名は「Lv.99の夏休み」になっていた。Lv.99にしたのは、計画段階ではまだ伸び代があるという意味を込めたから。恐ろしくダサいこのネーミングも、当時の我々にとっては極めてイカしていた。

気持ち悪いのにスポッチャ合流で大丈夫?

とは、誰も聞かなかった。
だって、大学2年生は最強だから。

 新宿のドラッグストアで炭酸飲料とお菓子をこれでもかと買い込み、車に乗り込んだ。我々のLv.99の夏休みがスタートする。

夏休みは混むので電車の方がオススメです

午前11時半 江ノ島

 夏休みだから渋滞がすごかった。駐車場もほとんどが満車だったが、運良く停められたので、海岸へ向かう。飛び回るトンビに大興奮した。
 5人にとっては初の江ノ島だった。全国ネットの天気予報で背景としてよく使われているあの江ノ島に、我々は足を踏み入れたのだ!


人、おおいな...
あれ?海、結構汚い...?
どこにレジャーシート敷く?
やっぱり、海、汚い...?

 波音でかき消されそうな声で誰かが言って、呼応するかのように誰かも言った。そして、誰しもが聞こえないフリをしていた。

これが江ノ島だ。

もちろん写真など撮っていなかったので、
アクティビティジャパンより引用

 
 新宿駅で既に海パンだった我々はTシャツを脱ぎ捨てて、江ノ島の海に身を投げ続けた。
 お腹が空いたら海の家でラーメンを食べ、ただひたすらに波に飛び込み、カレーを食べては、波に飛び込む、という行為を繰り返していた。これが無性に楽しかった。

 車の中ではどうナンパするかという話題で盛り上がっていたが、いざ砂浜に立つと誰もナンパできる度胸がなかった。
 江ノ島の水着ギャルは、想定の何倍以上もキラキラしていて、到底声をかけられなかった。
 想いは全て、波へぶつけ、流されていった。


いま、何時?
3時だ。疲れたな。
すでに日焼けいてぇ。
そろそろ、スポッチャ行こか。

 気づいたら3時間以上、塩水に浸かっていた。ナンパはしていない。5人全員が既に日焼けし、文字通り完全燃焼していたが、我々はこの後スポッチャに向かわなくてはいけなかった。


 それがこの日の使命だし、スポッチャでは彼が待っている。二日酔いの彼が。

 一つ目のやりたいことを終えた時点で、既に今後のスケジュールがもはや義務のように思えてきた。

 誰しもが帰りたいと思っていたが、この後スポッチャと高尾山に行かないと、この夏を終えることができないとも思っていた。

 行け、スポッチャへ。

神奈川のことは誰も知らないので、
なんとなく横浜のラウンドワンにしました

午後4時 スポッチャ

 海の家のシャワーって、砂があまり落ちない。ジャリジャリでベタベタで、日焼けがキシキシと痛む我々は、満身創痍で横浜のラウンドワンへ向かった。

 運転をしてくれた彼は、時おり眠りかけた。無理もない、海水浴後の運転は危険である。
 助手席に座っていた彼は、時おり運転席の彼を思い切りビンタした。車内に乾いた爆発音が響き、日焼けした彼の肌に、彼の手形が刻まれる。誰も、ツッコむ体力がなかった。

 ラウンドワンでは二日酔いで遅刻していた彼が待っていた。顔が真っ青だった。
 途中合流にして、一番の絶不調男。

いやいや、まだ酒抜けてないじゃん!

大丈夫、俺は最強だから。

 そうだ、我々は大学2年生。最強だ。我々は学割料金で、スポッチャのフリータイムという沼へ足を踏み入れた。

 スポッチャはボウリングやカラオケ、ダーツやビリヤードなどを楽しむことができ、なんとドリンクバーも付いている。学生にとっては天国のような空間だった。

 江ノ島でほとんどの体力を持っていかれたが、スポッチャは我々を見事に踊らせる。頭は働いていないが、体が勝手に動く。我々はスポッチャのマリオネットと化した。

 ボウリングやカラオケはいつ誰とやっても楽しい。ダーツやビリヤードってあんまりやったことないから、少しずつ上手くなるのが楽しい。
 ドリンクバーがあると、ついついコーラとメロンソーダを混ぜて、ソフトクリーム乗せちゃう。楽しい。
 男3、女3で遊んでいるグループを見た。楽しそう。羨ましい。


あれ、いま何時?
いや、もう11時じゃん。
高尾山、いく、よね...?
いく、でしょ...
日焼けと筋肉痛いたっ!
駐車場代、高っ!

 大学2年生は最強なので、スポッチャに入ると時間の感覚を失ってしまう。
 もう少しで、日付が変わってしまう。

 十分遊んだ。ここで帰っても何ひとつ後悔はない。むしろ帰った方がいいと分かっていた。みんな分かっていた。

 それでも、我々は高尾山へ向かう。
だって、大学2年生は最強だから。

 行け、高尾山へ。

途中で牛丼食べました

午前0時 高尾山 

 高尾山はナイトハイクができる山だったので、この際早朝に登頂を目指し、日の出を見ようということになった。
※いまは時期によっては熊が出るかもしれないので、昼間の登山がいいそうです!
※ナイトハイクは昼間に登山経験があった方がいいそうなので、まずは昼間の登山をオススメします!

 疲労と日焼けはピークに達し、眠気を紛らわせるために、我々はモンスターを飲むしかなかった。全員目がバキバキだった。モンスターを飲む、モンスターたち。
 近くのセブンイレブンで腹ごしらえをし、我々は高尾山を登り始めるのであった。

スマホのライトで照らせば意外と歩けます

 調べると日の出は午前4時半ごろ。歩きだけで登ると、所要時間は100分程度。全員が高尾山初挑戦だったが、時間的には余裕があった。

 意外にも他に登山客がいたので、恐怖感に襲われることはなかったが、喋る気力がない我々はただ黙々と暗闇の中を歩き続けた。

 二日酔い、この時点では三日酔いになった、
途中参加の彼が言う。

ごめん、腹いたいわ。

 君は二日酔いなのに、スポッチャでコーラフロートを5杯堪能し、道中で特盛牛丼を食べていたね。周りにトイレは見当たらなかった。

ごめん、ちょっとお花摘んでくるわ。

 彼は暗闇の茂みに消えていった。きっと豪華なお花を積んでくるに違いない。
 ちなみに「お花を摘みに行く」という表現は基本的に女性が使用する暗喩であり、男性が使う場合は「キジを撃ちに行く」と言うらしい。「キジを撃ちに行く」という男性には出会ったことがない。

ごめんごめん、何も摘めなかったわ!

 明らかにスッキリとした顔の彼は、聞いてもないのに言ってきた。何も摘めなかった!というのは、もはや意味が分からない。
 が、誰もツッコむ体力がない。

 後ろから犬の散歩をしている男性が登ってきた。賢そうなワンちゃんは、彼がお花を摘みにいった茂みに入っていくと「ワンワンワン!」と吠え始めた。

 闇夜にこだまするワンちゃんの鳴き声が、たまらなく可笑しかった。間違いない、彼はお花を摘んでいた。
 ここで、我々の夏休みはLv.100になった。

 そんなこんなで無事に登頂。
午前4時半、我々は高尾山から日の出を眺め、長い長い夏の1日の終わりを噛み締めるのであった。

下山した記憶は、何も残っていない。

午前7時頃 高尾山口駅

 下山すると、もう電車が動いていた。彼のレンタカーに乗るのは危険と判断した5人は、電車で帰ることとした。血も涙もない。

 それから、お花摘みの彼のあだ名は「高尾山」になった。秋も、冬も、春も、次の夏もみんなで高尾山に登った。

 彼の忘れ物を探しに。



 二日目の明日は神崎さやかさんが、走ります!noteコンテストでも受賞歴がある、実力派ゆるミニマリスト主婦さんです!
 神崎さんよろしくお願いいたします!


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