見出し画像

高級レストランで毎週末ピアノを弾いてみて

2012年9月、53 By The Seaというファンシーな海辺のレストランがホノルルにオープンし、たまたまオープニング・レセプションでピアノを弾いたことから、毎週末2時間、トータルにして1年半ほどの間、演奏することになりました。

これまでもディナーやパーティーのBGMとして、2時間ピアノを演奏したことは何度かあったものの、2時間ってゲストとしてごはんを食べている時はすぐなのですが、ピアノを弾くとなるとなかなか長いんですよ~💦 

クラシック、ポップス、ブロードウェイ、映画の曲、ハワイアン、ジャズっぽい曲、さりげなくオリジナルも入れたりして、できるだけ偏らないレパートリーを準備しましたが、そんな高級なレストランですし、最初の頃は本当に緊張しました。 

そして始めてみると、当たり前といえば当たり前ですが、お客さんによって反応がまったく違うんですよね。 

ピアノのすぐ前のテーブルに座り、静かに耳を傾けている年配のご夫婦には、「もっと本格的なジャズを聴きたいのではないかしら」と心配になったり、逆に大人数で盛り上がっているグループだと「なんか、せっかく弾いてるのに全然聴いてなくない?」とちょっとやさぐれたり(笑)

でも、ある日ライフコーチをしているLA在住の友人に、ちょっと愚痴っぽいメールを送ったところ、「どうでもいいことにこだわってないで、君を雇ってくれたレストランに感謝して、どうやってご恩返しをするか考えるべきでしょ」というお返事をいただき・・ 「そうだった!!」と目が覚めました。

それからは、お客様が少しでもいい気分になってくださるように、衣装もきらびやかなものにし、私の枠の中でゲスト・ミュージシャンを招待して、ギャラの中から支払って演奏してもらうようにしました。

そんな素敵なレストランで演奏し、”まかない”として美味なパスタも食べられて(笑)ミュージシャンたちも喜んでくれたし、ウクレレ、バイオリン、シンガー、そして私とは違うジャンルの曲を弾くピアニストなどが入ることで、お客様もより楽しんでくださったと思います。

あと「ちょっと敷居が高い感じのレストランだけど、CHIYOさんが演奏してるなら、この機会に行ってみたいわ」という友人知人が、本当に毎週毎週来てくれて、Facebookのアルバムには、53で撮ったゲストたちとの記念写真がたくさん残されています。

そんなすばらしい経験をさせていただいたレストランでの演奏ですが、1年ほどして、若年性白内障の手術のために一度辞め、お店からまたお誘いいただいて復帰した後、4枚目のアルバム制作に集中したいということで、またストップさせていただきました。

当時、日曜日のレッスンが夕方に終わり、急いで着替えて、2時間演奏して、来てくれた友人たちと食べて飲んで11時頃帰宅して、また次の日が仕事・・というなかなかハードなスケジュールだったのと、あとお客様のリクエストに応えられないことが時々あったのも、けっこうつらいことでした。

ああいう場所のピアニストは、アメリカのスタンダードな曲は、どんな曲でも弾けて当たり前とお客様は思っているはず。 なので、弾ける弾けない以前にまったく知らない曲を言われてとまどっている私は、やっぱりちょっと違うのかなと思って。

だったら、もっともっと練習してレパートリーを増やせば、と思われるかもしれませんが、その道で生きていくと決意したならもちろんそうするべきなのですが、その時私は自分のアルバムを創ることに、より集中したかったんでしょうね。

でも、正直な話、時々53にごはんを食べに行くのですが、やっぱり素敵な海の景色を眺めながら美味しいものを食べて、ゆったりとおしゃべりを楽しんでいると、ピアノを弾く側よりこっち側の方がいいわ~と思ってしまうのも事実です(笑) 

もちろん、またいつかそのお店に置かれている、FAZIOLIというすばらしい音色のピアノを、時間も気にせず、知らない曲をリクエストされたらどうしようという心配もなく、自由に弾きたいという気持ちはいつでも持っているのですが。

✨今日の英会話✨

今でもとても心に残っているお客様の言葉の中に「Thank you so much for your beautiful piano! It made me cry.」(美しいピアノをありがとう! 泣けたわ。)というのがあります。 お食事にいらしてピアノで泣いてくださったというのは、やっぱりピアニストとしてとても嬉しかったです♡



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?