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朗読劇「ラヴ・レターズ~Spring Special~」3/14公演(茅原実里・小野大輔)に行ってきました!

今回は観劇レポート。タイトルは「ラヴ・レターズ」。2021年の3月14日、東京・渋谷のパルコ劇場にてとり行なわれました。

たまたまホワイトデーに公演が行われましたが、ストーリーはそんなに甘々なわけではございません。この物語は人生においてついに最後までちゃんと結ばれることのなかった男と女が思春期から生涯にわたって続けた手紙のやり取りの記録であり、それを手紙の文面そのまま観る者に伝えるというそれなりにヘビーな内容でありました。

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正直、見終わって数日経ったいまも記憶の中で演者の声がリフレインしています。その切なさ、やり切れなさ、人生の無情、運命に対する呪いみたいな何か、何故アンタそこでそれ言っちゃうのよ…といった感情が次から次へと湧き出てきて、とても冷静に感想など書けずにいる次第です。

こういうときライターは「見なきゃ分からないから劇場に足を運ぶべし!」とか言うんですが、茅原実里さん・小野大輔さんの両名による公演は2021年3月14日のみ。いまのところ配信という話も聞かないので、この記事を見て興味が沸いた方がいたとしても見ることができません(泣)。なのでここはひとつ、拙くとも文章に残しておくことにします。


「ラヴ・レターズ」について

いきなりウィキペディアって(笑)。まぁ私が拙い文章で書くよりは分かりやすいということでご勘弁を。もともと戯曲だったのですねこれ。

内容は本文冒頭にも書きましたように、運命とか立場の違いとかでなかなか結ばれない幼馴染の男女(男:アンディー/女:メリッサ)が生涯にわたって手紙を取り交わし続けるというもの。

物語について詳細はこちらを。

STORY(上記サイトより抜粋)

アンドリュー・メイクピース・ラッド三世と、メリッサ・ガードナーは裕福な家庭に生まれ育った典型的WASP (ホワイト アングロ サクソン プロテスタント‥‥‥‥アメリカのエリート人種)である。幼馴染みの二人は対照的な性格だ。 自由奔放で、束縛を嫌う芸術家肌のメリッサ。穏やかで、内省的、口よりも文章で自分を表現するのが得意なアンディー。 アンディーは自分の感じること、彼女についての自分の意見などを折にふれてメリッサに伝える。メリッサは手紙よりも電話の方が楽で好きだ。 しかし、電話で思ったようにコミュニケーションできないアンディーの手紙にはつきあわざるを得ない。

思春期を迎え、それぞれ別の寄宿学校に送られて過ごす二人。会えるのは休みで親元に戻った時だけである。 伝統的な暖かい家庭に守られているアンディー。一方、メリッサはアンディーより裕福だが、離婚と結婚を繰り返す母親のもとで孤独な思いを噛み締めている。 恋に目覚める季節、お互いを異性として充分意識する二人だが、どういう訳かぎごちなく気持ちは行き違い、しびれをきらしたメリッサは他の男の子とつきあってみたりする。そして、遂に決定的に結ばれるチャンスが巡ってきた夜、二人は友達以上にはなれない自分達を発見する。

大学を出た二人はいよいよ全く別の道を歩き始める…。

タイトルが「ラヴ・レターズ」なのに劇中は相手をののしる文面も多く、愛はどこ行ったのかと思うこともしばしば。そうかと思うと熱烈に相手を求めてみたり。

お互いが結婚しても手紙のやりとりは続いたわけですから、そこには昔から言われる「男女間の友情は成立するか?」以上のクエスチョンがあるように思います。ともあれ男女の関係って難しいですよね今更ながら。


朗読劇について

朗読劇が普通の劇と違うのは「演技によらずほぼ音読にて物語を伝える」という点です。スタイルとしては演者が台本を持って舞台のどこかに位置し、基本的に動き回ることなく声だけで役を演じるのが一般的です。

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(注:写真と今回の「ラヴ・レターズ」とは関係ありません)

舞台における立ち回りや衣装などビジュアルに訴える要素が少ない分、声による表現がすべてです。立場、年齢、感情、いまどんなことを考えているか、それらすべてを声のみで伝え切るスキルが演者には求められます。ゆえに「良い俳優=良い朗読者」とは限らず、ここに声優の活きる道のひとつがあると思っております。現に声優による朗読劇という形式は近年エンタメにおいて増加傾向にあることがその証左と言えるでしょう。


演者について

今回の演者はアンディー役が小野大輔さん(通称「小野D」)、メリッサ役が茅原実里さん(通称「みのりん」)。

このお二方はともに声優で、しかもいくつかのアニメ作品で共演されております。

・涼宮ハルヒの憂鬱(ならびに関連シリーズ)
(小野大輔:古泉一樹/茅原実里:長門有希)

・みなみけ(ならびに関連シリーズ)
(小野大輔:保坂/茅原実里:南千秋)

・Aチャンネル
(小野大輔:佐藤先生/茅原実里:鬼頭先生)

他にもあると思いますが…(自分で見てないのは同時期に出てたのかとかが分からないので記載してません。同じ作品に出演してたのはもっとあるみたいです)

昨年11月のニコ生放送「茅原実里のホントにっ!?」でも小野Dがゲストで招かれ、アニメ「みなみけ」のネタのひとつ「カレーのうた」を一緒に歌うといった出来事がありました(この時の小野Dのコスは保坂でした)。まぁ何が言いたいかっていうと、それくらい一緒に仕事をしていた歴が長くて、お互いに息も合い、信頼関係がある2人ってことですよ。

これは今回のように「男女2人だけ」で演ずる朗読劇において、良い方向に働いたと思います。


手紙について

ここで唐突におたずねするのですが、皆様はご自身の人生の中でどのくらい「手紙」を書いたことがありますか?

いいですか?「手紙」です。
メールではありませんし、ましてやLINEでもありません。

便せんに手書きで(まぁワープロでもいいですが)相手のことを思いながら何かしら書いて、封筒に住所書いて手紙を入れ、切手を貼って出す。

便せんの枚数がかさんだら普段の切手より高くなることもあるので、郵便局まで行って重量確認と追加の切手を購入したりして。

で、ポストに投函(郵便局の人に預けることもあり)。あとは相手の方からドキドキしながらお返事を待つ。

手紙ってのは相手のところに着くまでに日本国内だと翌日~4日くらいかかるので、それを考えると相手が返事を書いてくれたとして早くてもこっちに着くのは1週間~10日くらいかなとヤキモキしながら過ごすことに。

まだかなまだかな、郵便のおじちゃんまだかな~♪と毎日家のポストを開けたり閉めたりしながら待っていると、ある日そこに自分の名前が宛先として書かれた封筒が…。

いま風に言えば「キタ―――(゚∀゚)――――!!」ってヤツですよ。
(いやもうそれいま風じゃないから)

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なんでこういうことを長々と説明したかって言うと、こういう経験があるかないかで『ラヴ・レターズ』の見え方、感じられ方がまったく異なると思われるからです。

もうそれは世代的な話なのでしょうがないのですが、20~30年くらい前はこれが当たり前だったのですよ。いまみたいに「あいつ既読スルーしやがって💢」みたいな世界でしか育っていない方からは想像することもできないかもしれませんが、そこにかかる労力と金額と時間はコミュニケーションの質をまったく別物に変えてしまうのです。

長いこと返事がないと、出した側は考えます。この手紙は本当に届いているのかなと。実は引っ越しして届いてないのかもとか、届いたけど見られたらまずい者に見つかって破棄されちゃったりとか、相手が怒ってしまい返事を書いてくれないのかなとか。

で、また文面変えて手紙出すという…。

こういう煩悶について、劇中では「同じ人が立て続けに自分の書いた手紙を読む」というやり方で表現しています(ほとんど手紙を読むシーンしかない劇なので当たり前っちゃ当たり前ですが)。実際アンディーもメリッサもよくこれをやります。相手を挑発するために書いたとしか思えない手紙が多いので、そりゃそうだよなという気持ちになるのですが(笑)。


年月の経過について

あとこれはアメリカさんの事情なのかも知れませんが、向こうでは何はさておきクリスマスには手紙を出すみたいな習慣?があるみたいで。日本で言うところの年賀状みたいなものかな?このクリスマスレターにはヒートアップしていた感情を抑える効果があるのか、これの御礼状的な手紙からやりとりが再開することもあったりなかったりしたような。

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2人は一応ほぼクリスマスにはだいたいどっちかが手紙を出すようなので、これが物語における年月のカウンターとして機能しています。

そのように着目して観ると「あぁもうあれからそんなに経ったんだ、そりゃ2人も変わるよなぁ」という見方ができるようになります。もっと話の前半で気付いていれば良かったよ。もう1回見たいけど(略)。


演技について

いままでいろいろな役を演じたりとかしてきたけど、こう、ほぼほぼ幼少期から人生を…メリッサという役なのですが、メリッサの人生を自分が、うーん…何て言ったらいいんだろ。まだ自分の中で全然はじまったばっかりで、背負い切れてないというか…。
(中略)
大切に、メリッサを演じる。…というか、演じるって言うのとはちょっと違うんだよね。「お芝居をするのと朗読はまた別物だ」っていうようなお話も聞いたから。私が携わっている朗読劇って割とこう、芝居をしっかりしていくって言うものが多かったような気がするので、これはまたちょっと違うのかなっていう。んー、まだどんな朗読劇になるのか分からないよ…。
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(M-Smile会員向け放送 2021.3/6「茅原実里の10munites」#39より抜粋)
※ 話中の間とか「んー」とかは省いて記載しています

これは茅原実里オフィシャルファンクラブ「M-Smile」会員向け放送にて茅原さん(みのりん)自身の言葉で語られたお話しです。この放送は3月6日に公開されたものですが、この時点ではまだ読み合わせしてないとか、稽古は1回のみとかいう恐ろしい話もいろいろと飛び出しました(笑)。

あれほどキャリアのある声優さんですら、役であるメリッサの人生を背負うということに対して大きなプレッシャーと戸惑いを感じられていたのが分かります。また「お芝居をするのと朗読はまた別物だ」という言葉も本公演のキーワードであったのではないかと感じます。「それってどう違うのよ」と問うたところで、万人に当てはまる正解はたぶんないのでしょう。

実際にみのりんの演技を観た感想としては(すみません、私がみのりん寄りの人間なので、どうしてもそっち視点になってしまうのです)、朗読よりは芝居に寄っていると感じました。ほぼ椅子に座って自身の書いた手紙を読むだけの朗読劇なのですが、そこに鬼気迫る激情を感じたのは演者がまさしくその役に背負わされた人生を我がものとして演じたからなのでしょう。いやそんな生易しいものではないな…。むしろ「憑依している」に近いくらいの勢いをそこに感じました。

役柄としてはアンディー(小野D)がおおむね理性的である反面、メリッサ(みのりん)は感情的なキャラクターとして設定されています。メリッサは自身の想いをおもむろに相手にぶつけるところがあって、怒ると手が付けられない文面で相手をののしり、愛を囁けばこれでもかというくらいグイグイ来るような感じ。いやー相手の男は大変だよこれ。小野D…(笑)。

うーん、何だかうまく伝え切れてない気がするけど、まぁでも、これが声優の力なんだなって感じました。


カーテンコールについて

物語のネタバレはしませんが、私的に物語のラストは切なくてやり切れない余韻を残すものでした。

時代的な状況とか、お互いの境遇とかがそうさせてしまったのだとしても、もっとこう何か、2人が幸せになれる選択肢はどこかになかったものなのかと思わずにはいられないような。

ともあれ物語が終わり、あらためて舞台に登場したお二方のカーテンコールは衝撃的なものでした。ひとことの言葉を発することもなく、見つめ合い、手を取り、クルリと舞い、抱き付くというそれはそれはラブラブな見せ物でありました。

(おいおいこれお互いの声優のファンは大丈夫かなー汗)

とかちょっと思ったりもしたけれど。

でもそれは、本当は2人ともこんな風に愛し合いたかったんだよなーという叶うことのなかった願いの表出である気がして。そう考えると最後の最後でようやくメリッサとアンディーの素直な気持ちを見れたように感じ、何だかとても救われた気持ちになりました。

気持ちが落ち着いたところで、本文も締めさせていただきたいと思います。

みのりん、小野D。「ラヴ・レターズ」本当にお疲れ様でした!
素晴らしい演技を、物語を見せていただき、ありがとうございました!

(了)


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以前におこなわれたみのりんの朗読劇レポート。よろしければこちらも。



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